第二十二話:復讐の道具、孤独な末路
1. 究極の非効率、協定の破棄
アヤによる『きらきら☆乙女連盟』への指導は、集団の戦闘力を異常な速度で向上させていた。少女たちは、アヤの技術と、屈辱を燃料とする精神力によって、レイジの新しい「感情収集ルート」に対抗できるレベルに達しつつあった。
しかし、その日の指導の終わり、ユノがアヤに冷徹な通告を行った。
「指導者。今日の指導をもって、私たちの復讐契約は一時的に完了します」
アヤは、眉をひそめた。「何を言っている。貴様らの戦闘力は、まだレイジの計算を完全に破るレベルには達していない」
アリスが、冷静に、感情を排した声で続けた。
「私たちは、あなたが持つ技術的なノウハウを全て吸収しました。これ以上の指導は、あなたの初期装備の無力さと、他プレイヤーからの嘲笑によって、私たち全体の効率を低下させます」
リサが、アヤの目を真っ直ぐに見つめた。
「あなたは、私たちの復讐のための道具でした。そして、道具の役目は、今、一時停止です。次のフェーズは、私たちがあなたの教えを実践する段階です」
アヤは、自分自身が少女たちに教えた「効率」と「戦略」という名の刃によって、切り捨てられようとしていることを理解した。彼女たちの行動は、レイジと同じ冷酷な合理性に基づいていた。
「貴様ら……私を、利用するだけ利用して、切り捨てるつもりか!」アヤは怒りに震えた。
「違います」ユノが言った。「これは、復讐のための戦略です。あなたは、私たちの孤独な最強の象徴でいなければならない。今、あなたと行動を共にすることは、私たちにとって非効率です」
アヤは、孤立した。隷属契約で利用され、復讐契約で切り捨てられた。彼女の精神は、極限の孤独に放り込まれた。
2. 堕ちた女王への集中攻撃
ユノたちが静かに立ち去った直後、アヤがいた訓練エリアは、突如としてPvP可能エリアに切り替わった。
そして、彼女を嘲笑していた一般プレイヤーの集団、およそ十数名が、アヤを包囲した。彼らは、アヤが『きらきら☆乙女連盟』から切り離され、完全に孤立した瞬間を狙っていたのだ。
「待ってたぜ、アヤ!」リーダー格のプレイヤーが嘲笑した。「最強の女王様が、初期装備で、守る者もいないなんてな。これで、お前のプライドを完全に叩き潰してやる!」
彼らは、アヤに一斉にスキルを放った。アヤは、初期装備にも関わらず、かつての技術と反射神経を駆使し、驚異的な回避を見せた。
「くそっ……! この程度で、私の技術が崩せると思うな!」
アヤは、一人で十数名を相手取り、絶望的な戦いを始めた。しかし、彼女の初期装備では防御力がなく、一度攻撃を受ければ致命傷となる。そして、彼女の攻撃力では、相手の防御を破ることも困難だった。
これは、技術だけでは覆せない、システム上の絶望的な力の差だった。
3. 孤独な敗北と虚無
集中攻撃は数分で決着した。アヤは、回避しきれない一撃を受け、よろめいた。
「これで、お前はただの敗者だ! 最強のソロプレイヤーなんてもう誰も信じねえ!」
最後の、屈辱的な一撃がアヤに叩き込まれた。
DEFEATED:アヤ
アヤは、再び戦闘不能となり、リスポーン地点へと転送された。
彼女が再び目を覚ました時、彼女の心に残ったのは、虚無だった。レイジに裏切られ、少女たちに利用され、一般プレイヤーに叩きのめされた。彼女は、最強の存在であった時代から、最も屈辱的な最弱の存在へと転落した。
リスポーン地点で、彼女は初期装備のまま、静かに座り込んだ。もう、憎悪も、怒りも、復讐心さえも湧き上がらなかった。
彼女の孤独な復讐の旅は、最も非情な形で幕を閉じたのだった。
ユノ(きらきら☆乙女連盟、タンク)の視点
私たちは、アヤ指導者を見捨てた。指導者が、他のプレイヤーたちに集中攻撃を受け、戦闘不能になるのを、システムログで確認した。
私たちの行動は、冷酷で非情でした。私たちを鍛え、レイジさんへの復讐の道筋を示してくれた人を、私たちは最も無力な瞬間に切り捨てた。
でも、これは復讐のための、最も必要な戦略だったんです。
指導者の初期装備のままでは、私たちの効率を下げ続ける。そして、指導者が完全に孤立し、最も深い絶望に落ちたとき、私たちの新しい力が、どれほどレイジさんの計算を破れるかを、彼女に見せつける。それが、指導者への最大の報酬であり、最大の復讐だと、私たちは信じています。
私たちは、指導者から受けた屈辱と、指導者に与えた屈辱、全てを力に変えて、レイジさんの前に立つ。
指導者、どうか私たちを憎んでください。そして、見ていてください。あなたが教えた効率と、私たちが守った絆が、レイジさんの新しい効率計算を、どう打ち破るのかを。




