序章 第0話 20XZ 3月30日 エピローグ&プロローグ
注意事項に関しては、同時に掲載される話を参照してください。
――ズブリ――
「ああああーーーーーーー!!!!!!!!」
それは、誰の声だったのだろうか。
絶望的な音が、その場に響き渡った。
それは……めあの機体に、敵である『ヤマタノオロチ』の剣が突き刺さるものであった。
音の鳴った場所から推測するまでもなく、それが「致命傷」であることは容易に理解できる、それほど深くて重い音であった。
「臨界点突破――『ファルファラ』の孵化は、避けられないな」
俺のコックピットの一部に表示されていた、ゲージが限界値を超えているのが目に入る。
これでもう、目の前の『ヤマタノオロチ』との戦いの勝敗のいかんにかかわらず、こちら側の「敗北」、そして即ち「世界の終わり」が確定したということだ。
「久郎、やっぱり駄目だよ……もう、どうにもならないよ……」
相棒の結希の通信が、こちらに届く。
機体自体もボロボロであるが、何よりも彼の機体の象徴である「剣」が明らかに折れており、そのことが「彼の戦う意志」もまた折れてしまったということを明らかにしていた。
他の仲間たちもまた、悲惨な状態であった。
明の機体はブースターが二本とも壊れており、漣の機体も両腕を喪失、みかんの機体は両足を失っており、浮遊することもなく大地に横たわっている。
誰がどう見ても、全滅しているのは明らかな状態だ。
「まだ、おわりではないの……」
めあの声が、聞こえてきた。
息遣いは荒く、辛うじて命を保っているという状態のようである。
「さいごのちから、なの……『ウツシヨ』、せかいをこえて!」
めあの力が発動し、俺たちの機体が青い光に包まれる。
そのまま、目の前が青く染まっていき……そこで、俺の意識は途絶えた。
――――――
「けっ。なんだよ。まだ諦めていないのか?」
『ヤマタノオロチ』が、めあの機体に声をかける。
「もう、運命の輪は閉じつつあるぞ。次の周で完結し、確定するのは目に見えている。それでもなお、続けるというのか?」
相手の問いかけに、最期の意志を振り絞ってめあが応える。
「うんめいに、あらがいつづけるの……それが、アリスとしてのしめいで、ぜんぶなの」
呆れたように、『ヤマタノオロチ』が言葉を返す。
「胸糞悪い話だ……A計画。そのためにもう一度、彼女を殺さなければならないとはな」
その言葉に、既に返事は帰ってこなかった。
「さて、世界が終わる前に、一杯だけ飲むことにするか。とっておきをな」
『ヤマタノオロチ』のパイロットが、コックピットに持ち込んでいた酒を口にする。
その背後では「世界の終わり」が徐々に広がりつつあった。
「次で最後か……その時は、もっとも高い日本酒を持ち込むことにするか。もっとも、飲まないで済むに越したことはないのだが、な」
広がりつつある「世界の終わり」が、『ヤマタノオロチ』を包み込む。
そのまま「終わり」は広がり続け……世界そのものを、飲み込んで消滅させた。
これは、神に見捨てられた世界で戦い続ける、「ヒーロー」たちの物語のプロローグであり、かつ、一つ前の世界のエピローグでもある。
彼ら、彼女らの運命について、これから語ることにしよう。
本日中に、序章はすべて掲載する予定です。