表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/38

二話 目前のメリーさん

 メリーさん(仮称)から電話があった翌日、俺は馬鹿らしいと思いながらも、それでも一応犯人を見つけるために友人に話をしてみる事にした。


「なんだそれ、オメーも変なのに絡まれたな」


 一通りの話を聞き終えた友人が、なんとも言えない表情でそう言った。

 内容が内容だけに、ちょっと恥ずかしいぞこんにゃろう!


「本当だよ。それで、心当たりとかない?俺の番号を勝手に教えたヤツは」


「ねぇよ。探してみるけど期待すんな」


 こちらから言わずとも探してみると言ってくれる彼は、俺の友人である北島(きたじま) 彩斗(さいと)だ。

 しかし心当たりはないときたか、当然だが困ったもんだ。


「メリーさんねぇ……あんなしょうもない都市伝説、マネしたって信じてくれねぇだろうに」


「だな。そもそもどうやって家に来るんだって話だ」


 俺だってまさか家に来るだなんて信じちゃいない。こんな子供だましの悪戯なんて、二度として欲しくないもんだね。



 結局、学校にて彩斗以外の友人たちに昨日の話をしてみたところ、おかしいねーくらいにしかならなかった。

 その反応も当然だ。傍から見れば俺は頭がおかしい奴だろう。


 俺の携帯の履歴を見れば、確かにあの時刻に非通知の不在着信が三回と、着信の履歴が一つだけあった。

 とはいえこれだけでは証拠にならないので、今度は録音をすることにした。向こうから名乗ってくれれば十分証拠になるしな。


 俺が受けた電話を周りにきちんと知ってもらい、ついでにあの声を知っている人を見つけよう。

 そうすればもしかしたら犯人を見つけられるかもしれない。そしたら親にはきちんと叱ってもらおう。


 もし大人になってからもこんな事していれば、迷惑極まりないからな!それまでには更正して欲しいものだ、不良娘め。




 そんなことを考えたその晩、昨日と同じ時間にまたも非通知で電話がかかってきた。マジかよ。

 勘弁してくれと思わず呟いてしまうが、また何度も電話がかかってきても迷惑だと思い、スマホをスワイプして着信に出る。


「はい、もしもし」


『もしもし、わたしメリーさん。今隣の県にいるの』


 ため息が出た。

 昨日聞いた細く儚い女の子の声が、酷く曖昧な自己申告をしてきた。隣の県って東西南北のどれだというのか。だが、その真偽はどうでもいい。


「なんでもいいからこんなこともう辞めろ」


『えー、やだよぉ。だって更斗(さらと)くんに会いたいもん』


「あぁ?なんで俺の名前知ってんだよ」


『えへへ、内緒♪』


「うっざ」


 なぜか妙に感情豊富なメリーさんにイラッとしてしまう。しかし、余裕ぶっこいていた彼女だ、俺の言葉を聞き流すに違いない。


『ごっごめんなしゃい……』


「なんでしゅんとしてんだよ」


 聞き流すどころか受け止めてしまった。少し涙声になっているせいで、肩透かしを食らってしまう。煽るなら落ち込むなよ。


『グスッ……えっえっとね、来週くらいにはそっちにいくからね、バイバイ』


「えっおいちょ──」


 ──待て、と言う前にがチャリと切られてしまった。どこまでも自己中な奴だ、親の顔が見てみたいね。

 しかし、隣県にいる知り合いなどいただろうか?少なくとも思い当たる節はない。


 明日か明後日には移動を始めるということだろうが、勘弁してくれ。



 そんな電話のあった翌日、彩斗に昨日の録音を聞かせてみた。神妙な表情で聞き終えた彼は、顎に手を当てながら口を開く。


「知らねぇ声だな。随分カワイイ感じの声だけど、マジで心当たりねぇの?」


「あったら聞いてねぇよ、なんのために聞かせにゃいかんのだ」


「いや、自慢とか?」


「なんの自慢だ」


 確かに可愛げのある声だけど、それを自慢するとかあれか?俺には可愛い知り合いがいるんだぜって話でもすんの?

 もちろんんなわきゃーない。俺は隠すタイプだね。



 あれから数日が経過し、夜に必ず一回電話がかかってきた。こ存じの通りメリーさんですねウザッてぇ、良く分からん奴からかかってくる電話だが、遂に隣町まで来てしまった。

 電車で来るにはゆっくりなので、まさかとは思うが歩きで来ているのだろうか?


「んで、今日か明日にはメリーさんが来ると」


「多分な」


 一学期最後のHRを終えて、彩斗に話をする。もはやどこか楽しそうにしている彼であるが、こちらとしてはたまったものではない。


「しかし、更斗のとこに来てどうするんだろな?お前まさか、人形とか捨ててねぇだろうな」


「そもそも人形自体ずっと持ってねーよ」


 強いて言えば、大分昔に持っていたくらいだ。物心付いたときには手放したが、それだって捨てた訳じゃなく、幼馴染の女の子に譲ったのだ。

 そのことをふと思い出し、あの子は元気にしているだろうかと思ったが、きっと元気にしているだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ