表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/18

6.急転直下。これがフラゲというものか(後編)


 電話を切った俺は、席に戻りながら、今回のオペレーションの困難さを改めて噛みしめていた。

 半年以上も先の航空券が、取れないだと? そしてやっと見つけた席が仙台発、しかもその一本だけ。他はどの空港もどの便も空いてない。

 マジかよ。


 その後の俺はろくに仕事に手がつかず、そのことばかり考えていた。そして、気が付けば時計は夜の9時、部下はいつの間にか全員帰っていた。


「いったい国内の航空事情って、どうなっているんだろう。ちょっとネットで見てみるか」


 今まで自分で飛行機のチケットなんか取ったことがない俺は、はなからコスモさんに丸投げしか考えていなかった。でもこうなってくると、そんな呑気なことではいけないような気がしてきたのだ。


「どれどれ」


 とりあえず、『羽田→千歳』と入力して。ポチッとな。

 そして最初に目に飛び込んできたのは、『7,360円』の文字。

 はいいっ?!


 えっ、えっ、どゆこと?

 確かこないだは、4万とか言ってなかったっけ? 言ってましたよね。ええ、覚えていますとも。

 あっ、でも、LCCなら半額以下って言ってたっけ。そうか、そういうことか。

 なら、もう一度ちゃんと見てみるか。


 えーと、日付をちゃんと入力して。11月14日、っと。ポチッとな。

 うむ、44,600円也か。しかも全席SOLDOUT。やっぱねー。

 次にAMA以外のスイカマークとビーチで検索してみると、どちらも『現在お取り扱いしておりません』。やっぱねー。

 あーあ、と思いつつ、もう一度AMAを覗いてみる。

 何度見ても満席。そして44,600円也。と思ったら。

 あれ? なんだろう、3万2千円とか2万4千円とか、1万8千円なんて席もあるぞ。ひょっとして、時間によって値段が違うの?

 おいおいおい、まさかまさかまさか、と、もう一度じっくり見てみる。

 2時発3時着が4万円。それ以前はほぼ変わらず、むしろもっと高いのもある。まあ、さすがに早朝便は安いが。そして5時台発以降は半額、か。

 なるほどね、5時発では開演に間に合わないもんね。

 て、マジかAMAよ。あからさますぎだろ。

 試しに他の日を見てみると……。うわ、1万8千円とかあるよ。


 えーっ。航空会社って、こういうことすんのー?

 まあねえ、あっちも商売だから仕方ないよねー。

 どっちにしろ満席では、俺には関係ないもんねー。まいっか。


 次に茨城空港を覗いてみると、『現在お取り扱いしておりません』。やっぱねー。

 ついでに福島空港。『2万4千円。残り僅か』だってさ。

 ……。

 え? 残り僅かって……。僅かだけど、あるの?

 もう一度、茨城空港を。『現在お取り扱いしておりません』

 再び福島空港。『残り僅か』

 試しに仙台空港『残り僅か』。ただしこっちはAMA便だ。

 うーむ、いったいこれは、どういうことだ。


 と、暫し腕を組んで考えていると、ポケットの中のスマホが鳴り出した。

 見れば、コスモさんからだ。なんというグッドタイミング。


「もしもし」

「あっ部長、夜分に申し訳ありません」

「いえいえ、どうしました?」

「実はですね、1日目が、同じホテルで2部屋取れそうなんですよ」

「お願いします」

「はい、了解です」


 即断即決。

 それにしても社長ったら、こんな時間まで仕事をしてるのか。俺も人のことは言えないけど、みんな大変なんだよなあ。

 それはともかく、だ。


「社長、ちょうど良かったです。実はですね、今、ネットで飛行機の状況を見ていたんですけど。なんか福島空港で空きがあるみたいなんですよ」

「えっ? うそっ」


 社長が驚いている。


「そんなはずは。ちょっと待って下さい……。ホントだ、売ってる……」


 やっば、社長も知らなかったんだな。


「受け付けは来月からのはずなんだけど……。あ、買えちゃいました」


 ましたって、あんたね。俺はまだ何も言ってないんだけど。


「どうします? 行きが9時30分。帰りは4時30分ですけど。地方空港ですから一日一便しか出ていないので、これしかありませんが」


 一日一便? なら考えるまでもない。


「お願いします」

「はい、了解です」


 なにこれ、簡単すぎる。今までの大騒ぎは何だったんだ。


「本当に買えたんですか?」

「はい、それは間違いありません」

「でも、確かまだ受付は始まってないって」

「ねー、私もびっくりしました。今、正規の代理店ルートで確認したんですけど、やっぱりまだ受付はしていないんですよ」

「ということは?」

「何なんでしょうね、これ」

「運が良かったということですかね」

「そうとしか言いようがありませんね。航空会社のやることはよくわかりません」


 プロにわからないことが、素人の俺にわかるわけがない。

 つまりこれがかの有名な、ふらいんぐげえっと~♪ というものなのだろうか。

 兎にも角にも、これで今回最大の難関はクリアできたということなのだろう。いまいち腑に落ちない気がするけど、とりあえず良かった良かった。



 ちなみに、元AKBの大島優子ちゃんは、栃木の出身です。

 初めてそれを知った時に、嫁と娘にドヤ顔で教えてあげたら「はあ? 今頃なに言ってんの? まさか、知らなかったの?」 と白い目で見られたのも、今となっては良い思い出。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ