12.一家離散かわらしべ長者か。二転三転ホテル探しの旅(後編)
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[3打席目 セーフティバントで滑り込みセーフ]
あまりの残念な結果に一瞬で心が折れて、ノーパソをパタンと閉じてしまった夜の、次の朝。
夢の中でとある天啓を受けた俺は、目覚めと同時にベッドから飛び起き、ノーパソをガバと開いた。
もしやこれなら……。
と、入力したのは『千歳市 ホテル』の文字。
夢の中に現れたのは、かの麗しきマリー・アントワネット王妃。御妃様はおっしゃいました。「札幌がなければ千歳を探せばいいじゃなーい」と。
そう、何も札幌にこだわる必要はない。定山渓温泉が札幌から西へ20kmなら、千歳は南東へ30kmじゃないか。札幌市街地から遠くても、空港に近いならむしろ好都合。
さあどうだ! ポチッ。
出ました出ました! ズラズラと数え切れないほど!
これだけあればよりどりみどり風見鶏、かえって選ぶのに苦労しそうです。
贅沢なんか言いません。ベッドとお風呂があって家族一緒に泊まれれば充分。あ、ちなみに娘の紗胡はいちおうお年頃なので、お父さんは別室です。つまり、ツインとシングルの2部屋。
でもって、駅から近くてお安い所をっと。
よしこれ! ツインとシングル二部屋! 駅から5分でお値段はえーと、7万8千円!
うーむ、素泊まりでこのお値段。まあいい……のか? もはや相場が分からなくなってきた。
とりあえずこれで、泊まる所は確保できたっと。
あそうそう、コスモさんに連絡しなきゃ。
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[4打席目 コスモさん連続ヒット]
どうにかこうにか二日分の宿が確保できたとはいうものの、これで満足したわけではありません。観光することを考えれば、やはり札幌2泊がいい。
というわけで、コスモさんには引き続きお願いしておきました。
そして電話が掛かってきたのが、7月の初めのことでした。
「もしもし、コスモトラベルです。たかもり部長様でしょうか」
「はいはい、たかもりです。どうもお世話になります」
「2日目のホテルが見つかりました。駅から10分くらいで、1日目のホテルからもそれほど離れてません。どうします?」
どうもこうもない。
「お願いします」
と、即答しました。
更に、9月。
「コスモです」
「はいはい」
「同じホテルで2泊出ました」
「お願いします」
やはり社長が言っていた通り、日が経つにつれてキャンセルが出ている様です。
だったら最初から慌てることなかったじゃん、なんて言ってはいけません。早々にキャンセル待ちを手配して網を張っていたからこその、この成果です。
そしてついに……。
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[5打席目 これぞプロの実力。大ホームラン]
10月の末のことでした。
「もしもし、コスモトラベルでございます」
「はいはいたかもりです」
「部長、また別のホテルが出たのですが」
「ほうほう」
「駅から6分」
「ふむふむ」
「今のホテルより設備が良くて、朝食付き」
「なるほど」
「お値段が、3名様二泊19万8千円だったのが、10万4千円になります。どうしま」「お願いしますっ!!」
皆まで聞かずに即答。当然です。
いやー、さすがです。プロです。コスモトラベル様様です。
こんなの、自分でやっていたらとても辿り着けるものではありません。
大手の代理店でもここまで手厚く面倒を見てくれたりはしない。中小なればこそのきめ細やかな仕事ぶりと言えるでしょう。
皆様もご旅行の際はぜひ、コスモトラベルに御用命を!
といっても、コスモトラベル(仮名)なので探しても見つかりませんが。
とにかく、めでたしめでたしと。
※まさか無いよな、と思って検索したら『コスモストラベル』さんというのがありました。
本作の『コスモトラベル』さんとは無関係であることを申し添えておきます。