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12.一家離散かわらしべ長者か。二転三転ホテル探しの旅(後編)


―*―*―*―


[3打席目 セーフティバントで滑り込みセーフ]


 あまりの残念な結果に一瞬で心が折れて、ノーパソをパタンと閉じてしまった夜の、次の朝。

 夢の中でとある天啓を受けた俺は、目覚めと同時にベッドから飛び起き、ノーパソをガバと開いた。

 もしやこれなら……。

 と、入力したのは『千歳市 ホテル』の文字。


 夢の中に現れたのは、かの麗しきマリー・アントワネット王妃。御妃様はおっしゃいました。「札幌がなければ千歳を探せばいいじゃなーい」と。

 そう、何も札幌にこだわる必要はない。定山渓温泉が札幌から西へ20kmなら、千歳は南東へ30kmじゃないか。札幌市街地から遠くても、空港に近いならむしろ好都合。

 さあどうだ! ポチッ。


 出ました出ました! ズラズラと数え切れないほど!

 これだけあればよりどりみどり風見鶏、かえって選ぶのに苦労しそうです。

 贅沢なんか言いません。ベッドとお風呂があって家族一緒に泊まれれば充分。あ、ちなみに娘の紗胡はいちおうお年頃なので、お父さんは別室です。つまり、ツインとシングルの2部屋。

 でもって、駅から近くてお安い所をっと。

 よしこれ! ツインとシングル二部屋! 駅から5分でお値段はえーと、7万8千円!

 うーむ、素泊まりでこのお値段。まあいい……のか? もはや相場が分からなくなってきた。


 とりあえずこれで、泊まる所は確保できたっと。

 あそうそう、コスモさんに連絡しなきゃ。


―*―*―*―


[4打席目 コスモさん連続ヒット]

 どうにかこうにか二日分の宿が確保できたとはいうものの、これで満足したわけではありません。観光することを考えれば、やはり札幌2泊がいい。

 というわけで、コスモさんには引き続きお願いしておきました。


 そして電話が掛かってきたのが、7月の初めのことでした。


「もしもし、コスモトラベルです。たかもり部長様でしょうか」

「はいはい、たかもりです。どうもお世話になります」

「2日目のホテルが見つかりました。駅から10分くらいで、1日目のホテルからもそれほど離れてません。どうします?」


 どうもこうもない。


「お願いします」


 と、即答しました。

 更に、9月。


「コスモです」

「はいはい」

「同じホテルで2泊出ました」

「お願いします」


 やはり社長が言っていた通り、日が経つにつれてキャンセルが出ている様です。

 だったら最初から慌てることなかったじゃん、なんて言ってはいけません。早々にキャンセル待ちを手配して網を張っていたからこその、この成果です。

 そしてついに……。


―*―*―*―


[5打席目 これぞプロの実力。大ホームラン]


 10月の末のことでした。


「もしもし、コスモトラベルでございます」

「はいはいたかもりです」

「部長、また別のホテルが出たのですが」

「ほうほう」

「駅から6分」

「ふむふむ」

「今のホテルより設備が良くて、朝食付き」

「なるほど」

「お値段が、3名様二泊19万8千円だったのが、10万4千円になります。どうしま」「お願いしますっ!!」


 皆まで聞かずに即答。当然です。

 いやー、さすがです。プロです。コスモトラベル様様です。

 こんなの、自分でやっていたらとても辿り着けるものではありません。

 大手の代理店でもここまで手厚く面倒を見てくれたりはしない。中小なればこそのきめ細やかな仕事ぶりと言えるでしょう。

 皆様もご旅行の際はぜひ、コスモトラベルに御用命を!

 といっても、コスモトラベル(仮名)なので探しても見つかりませんが。


 とにかく、めでたしめでたしと。



※まさか無いよな、と思って検索したら『コスモストラベル』さんというのがありました。

 本作の『コスモトラベル』さんとは無関係であることを申し添えておきます。




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