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【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに恋も叶えちゃいます!  作者: MEIKO
第11章・アリシア危機一髪

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87/96

87・緊迫の時

 「陛下、大変です!アリシアお嬢様が…」


 侍従長のオリバー・ジャックマンがそう血相を変えて、皇帝陛下の執務室に飛び込んでくる。それには何事かとジャックマンを見つめる皇帝陛下が。


 「確か…アリシアは、ルシードのお茶会に出席していたのではないのか?ウィリアムも一緒だと聞いていたが…そこで何かがあったということか?」


 それにジャックマンは焦った顔をしながら、勢いよく首を横に振る。そして…


 「アリシア様が、何者かに攫われました!ランドン伯爵家の使用人達が、怪我をした状態で助けを求めて来たのです」


 「何だと!アリシアが…攫われたと?どうしてそのようなことに…」


 お茶会が終了し、一度は皇居から出た筈のランドン伯爵家の馬車が戻って来る。それも襲われたのが一目で分かる馬車の状態で…あちこちに刃物で出来たような傷が!それらが戦闘の激しさを物語っている。おまけに頬を大きく腫らしたメイドが泣きじゃくり、ランドン家の執事の男は腕から血を流している。


 そしてこの男…ただの執事ではなく元騎士で、相当反撃したようで何人かのならず者達を捕らえて来ている。おまけにエルバリンの王子ルシードの護衛騎士ロランが、同僚である筈のマクスウェルを切って捨てたと言っている。何故そのようなことになっているのかと騒然として…これはただ事ではないと判断した皇帝の下知が飛ぶ!


 それに応じて現れたのは、巨大な馬車で皇居に乗り付けて来たルーベルト侯爵家の三人。長年皇帝陛下の相談役を務めている前侯爵カスバル・ルーベルト、騎士団に入団していないにも関わらずこの帝国一といわれる剣豪、現侯爵のラウル・ルーベルト。そしてその後継者として名高いディラン・ルーベルトだ。この三人の迫力に、皇居の使用人や警備の騎士達はなすずべもなく見つめるだけ。それほどの緊張が走る中、ハンカチを手に現れたのは…ランドン伯爵?

 

 前の三人とは明らかに違い、目をパンパンに腫らして項垂れている。皇居の財務部に在籍し、帝国の金庫番として有名なギルバート・ランドン。だけど今は見る影もなく消沈していて…そんな余りの変わりように何事があったのだろうと皆は構えて…


 「皆様、どうぞこちらに。皇帝陛下がお待ちでございます!」


 そこに図ったように侍従長が現れ、難しい顔をした面々を案内して行く。そして皇帝の執務室に入ると、そこには帝国の大きな地図が広げられていて…


 「陛下、アリシアの行方はまだ分からないのですか?」


 開口一番、そう尋ねるのはカスバル・ルーベルト。孫娘の行方が分からず、相当に気を揉んでいる様子だ。


 「ランドン家の執事によりますと、ノーベルハム伯爵領に入ったところで襲われたそうです。犯人の仲間であるマクスウェルという騎士から騙され、ロラン卿は指示された大木の下で待機していたそうです。そこに現れたのがランドン令嬢だったようで…」


 事情を聞いた近衛の者がそう報告している。それに居ても立っても居られない様子の人物が…


 「一緒にいたメイドも、怪我をして戻って来ました…アリシアを助けようとしたようです。どうかお願いです!娘を…娘を救ってやってはいただけませんでしょうか?犯人から何の連絡もない今、陛下にお縋りするより他はなく…」


 そう言ってランドン伯爵は、泣き崩れる。それをルシード侯爵は背を叩き慰めて…


 「うむ…今全力で捜索にあたっているのだが、まだ見つかってはいない。おい!ところで犯人の最有力バーモント子爵はどうなっている?」


 皇帝が捜索の指揮を執っている近衛の騎士団長に向かって声を上げる。それには…


 「団員を向かわせましたが、バーモント子爵家はもぬけの殻です。ただ、使用人達は残されており、一様に何も知らないと言っておりました。それによりますと子爵は、嫌がる娘と息子、それに夫人を伴って馬車に乗り込んだと。それからの行方は、まだ分かっていません!」


 その騎士団長の報告に皆は押し黙る。そしてこれは計画的なことだったのだと知った。


 「家族全員を連れて…か。このままでは、国外に逃亡するやも知れぬ。そしてその逃亡にアリシアを利用するつもりなのか?」


 ディランがそう憤ったが、それに答えたのは意外な人物で…


 「子爵家の娘であるルーシーですが、蔑まれて育ったせいか少し独特な娘です。そのルーシーが唯一信用しているのがアリシアです。恐らく人質としてが大きいでしょうが、もしかしてそのルーシーに言う事を聞かせる為に誘拐した可能性も否定出来ません!」


 そうまくし立てるのは、エルバリンの王子であるルシード。最近ずっと意識して、子爵の娘であるルーシーに近付いていたようで…そう仮説を立てている。それに面々は、それは確かに…と納得して。


 「とにかく、アリシアは我が皇家にとって恩人ともいえる人だ。だから今回の誘拐にエルバリン国の者が関わっているのだとしたら、帝国への宣戦布告と見做す!ということは、いざとなれば後継についても介入するということ。だからルシード王子、責任はこの帝国の皇帝である私が負う!だから好きにやってくれて良い」


 その皇帝の言葉に、ルシード王子は大きく頷く。そして…


 「時が来たようです…エルバリン国第一王子ルシード・グリヌート、全力でアリシア令嬢の救出と一連の事件の解決に向かいます!」


 それにここに居る全ての者達が力強く頷いている。そして地図を使ってこれからの作戦を練っていると、そこに一人の人物が…


 「私もお連れいただけませんでしょうか?我が娘…ルーシーを、救ってやりたいのです」


 それに()()()()()()の者達はハッとして振り向く。そこに神妙な表情で佇むのは、この皇居の侍従長であるジャックマンであった…

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