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【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに恋も叶えちゃいます!  作者: MEIKO
第11章・アリシア危機一髪

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84・ほんの出来心

 思いがけないハリーによるクリスティーヌへの愛の告白。それに私はドキドキとして…


 「ハ、ハリーが私を…嘘でしょう?だってそんな素振りなんて一度も…」


 クリスティーヌが驚きの眼でハリーを見つめている。そりゃそうよね?私だって一度も、クリスティーヌの口からハリーのことなど聞いたことがない。学年が違うし…ってことはあるだろうが、どこかワザと視界に入れない感じだったと思う。それなのにクリスティーヌのことが好きだったなんて可哀想に…フラれちゃうのね。そう思って成り行きを見守っていると…


 「そうじゃない!言えなかったんだ…クリスを守れる男になったら、言うつもりでいたんだ」


 ハリーはそう言って、クリスティーヌの方へと向き直し、そして片膝をつく。こ、これは…いつか見たシーン!おいおい、ここは皇居内ですけど?


 皆があんぐりと口を開けてガン見している中、キャロラインだけは自分がプロポーズされたあの日を思い出すのか、口元に両手を当てて瞳をウルウルさせている。もしもし、それはいくら何でもないでしょう?これから私達、会長を慰めることになると思うけど!


 「クリス…いいや、クリスティーヌ。俺の真心を捧げる!どうか俺と結婚してくれ。君を世界中で一番愛しているのは俺だ!どうかこの手を取って欲しい」


 ハリーは真剣にそう言い、クリスティーヌの前にと手を差し出した。そしてシンとした空気が流れて、身動き一つ出来ない私達が。だけど…うん?なんだぁ。


 クリスティーヌは、さっと手を前へと出す。だけどハリーの手を取る訳でもない…何だろう?と困惑して見つめていると…


 ──バシッ!


 「な、何やってんの?クリスティーヌ!」


 思わず素っ頓狂な声を出してしまった…だって、クリスティーヌがハリーの頭を叩くんだもの。生徒会室で目撃した以来、二回目なんだけど…それほど嫌いなの?ハリーもいきなりのその行動に呆けて固まっている。


 「バカっ!どうして早くそう言わないのよ?こんなに待たせて、どういうつもりよ!」


 ──はいっ?クリスティーヌさん…ど、どゆこと?クリスティーヌもハリーを想っていたってこと…やだぁ~また私だけ蚊帳の外?


 クリスティーヌは目に涙を溜めながら、膨れっ面でそう言っている。いつものクールなクリスティーヌはそこにはおらず、何だかとっても可愛い!それに私達の頭にはハテナマークが浮かんで…


 クリスティーヌは次の瞬間、バッとハリーの手を取り、ぎゅっと抱き着いている。そんな姿を初めて見た私は驚いて…だけどキャロラインは、それに涙を流しながら大きな拍手を送っている。そしてブリジットとアンドリューも、感動した様子でキャロラインに続く。な、なんだってぇ~


 ダメだ…私だけ恋というものが、分からな過ぎるっ。キャロラインの時はちょっぴり分かったけど、ブリジットとクリスティーヌは難易度高過ぎるわよ!全く顔に出ないんだもの、分かる訳ないつーの!


 それにルシードは拍手をしながら、ウィリアム殿下に向かって「残念だったね~」とか言っている。もしかしてだけど、知ってた?それをハッキリさせようと、ワザと一席設けたような。一方、ダメだった方の幼馴染みジョーイは、泣きべそをかきながらも「クリスティーヌが幸せならいい!」と敗北宣言している。副会長、とっても潔くていいと思います!この人もお兄様のお墨付きだからね。


 そしてハッと気付いた…親友達の中で、私だけじゃない?愛だ恋だが一切ないのは私だけ…なんだわ!こりゃ結婚出来る気がしないわ…どうしよう?まあ、親友達が幸せだからいいか!そう思ってクルッと横を見る。


 「ルシード、あなた知ってたわね?」


 それにルシードは、どこか不敵にフフンと笑う。そして…


 「アリシアは気付かなかったかい?私は生徒会の初めての顔合わせの時に分かった。二人共、お互いしか見てなかったじゃないか?だからさっ。それにこのまま婚約の話が進んだら、どんどん断りにくくなるだろ?早い方がいいと思って」


 わっ、やっぱりルシードって、凄く他人の感情に敏感なんだ!いつも飄々として分かりにくいけど、案外いい人だよね…クリスティーヌのことを思ってこうやってくれたんだもの。でも…気掛かりといえばウィリアム殿下だけど。それから今度はウィリアム殿下の方へと向き直す。すると殿下はバツの悪い顔をして…


 「私なりに本気だったんだけどね。無理矢理妃にしようと思ってないから、安心して!まあ次は、ゆっくりと探すとしよう」


 そう言って微笑まれる殿下。おまけにクリスティーヌに向かって「母上には私から言っておくから大丈夫!」と伝えている。めっちゃいい人!これ程のお方なら、直ぐに良い人が見つかると思うわ。クリスティーヌとは縁がなかったと諦めて貰って…


 「だけど、ハリー。ロウブルグ侯爵夫妻の説得はお任せできるのよね?それが出来て初めて、クリスティーヌを幸せにする権利が与えられるのよ?それを肝に銘じてちょうだい!」


 そう言う私に、ハリーは大きく頷く。そして「それは勿論、任せてくれ!」と力強く言い切った。ちょっとキツい言い方をしちゃったけど、クリスティーヌの幸せの為だもの…そのくらいの気合いを見せてくれなきゃね!


 そしてクリスティーヌとハリーの嬉しそうな顔を見たところで、今日のお茶会はお開きになった。そして帰ろうかと玄関ホールに戻ると…ロッテ達と他家の使用人達が和気あいあいとしている。何でも、私達を待っている間に『ロッテと行く!皇居内ツアー』なるものが開催され、皆で色々見て周ってすっかりと仲良くなったよう。だけどそれ、皇帝陛下や皇居内の方々が大目に見てくれただけだからね~


 それからジャックマンと少し話している間に、帰るのは私達が最後になった。そしてランドン伯爵家の馬車に乗り込むと…


 「お嬢様、今日は楽しかったですか?」


 そう聞くロッテに、ウンウン頷く。確かに身のある時間だった…こうやって私の大好きな人達が、幸せになっていくのを見るのも悪くないわね!こうなったら、皆んなのウエディングドレス姿を楽しみにするしかない!と、まるで親戚のオバさんみたいなことを考えて笑ってしまう。


 なのに…どうしてこうなってしまったのだろう?エルバリンの王妃のスパイであるロラン卿を見掛けて、ほんの少し出来心を抱いてしまったからだろうか?もうそれは分からない!おまけに自分が、どうなってしまうのかも…

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