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75・新たな決意

 「はい!お鼻ブーね?せぇのっ、ぶ~っ!」


 ルーシーの鼻にティッシュを当てて、そう掛け声をかける。それに意外に素直に従って鼻をかむルーシー。


 「ア、シァが、か…って、ぐ、れる…ん、て、おも…な、もの!」


 ルーシーが絶賛泣きじゃくりながらそう言うけど、何を言ってるのか分からない。最後の、もの!…しか分からないんだけど?

 だけど恐らく、私が庇ってくれるとは思わなかったんだと思う。


 「ルーシー、そろそろ泣き止もうか?」


 そう言って戸惑っているルシードに、「部外者は黙っててよ!」と返すルーシー。部外者…王族なんだけどね。おまけにあなたを庇うのにも参加してましたけど?


 「はいもう一回、ち~んね?」


 もはや、ちーんでもブーでもどっちでもいいが、いつまでもこんな目立つところにいる訳にもいかない。それでルーシーが落ち着くまて、この噴水広場の真ん前にあるカフェに入って休むことにした。そして歩き出した時ルシードは、護衛の()()()とマーティンに向かって、カフェに入るから交代でお昼を取るように言っている。そして残った騎士は、スパイではない方で…ワザとね?


 それから店内に入ると、フィリップがカフェの店員さんに何やらゴニョゴニョ言って、店の奥のブース席にと通される。フィリップ…上出来よ!ここだったらプライバシーがある程度は守れそう。そして私達は、その席に腰を下ろして一息ついた。


 「それでルーシー、何故あのようなことになったんだ?なぜバーモント子爵様はあれ程激昂されたのだろう?」


 そう切り出したのはフィリップだ。最近は付き合いは全く無かったようだけど、卒業パーティーでパートナーになったくらいだもの。多少は気安い間柄ということもあって、聞きにくいことを率先して聞いてくれる。それにルーシーは…


 「何だかよく分からないの…何故かお義父様から、ロブと仲良くしろだなんて言われて。だけど私は…ロブからの告白をけんもほろろに断っているのよ?今更仲良くなんて出来ると思う?そんなのロブだって迷惑だろうし…それで断ったら、あんなことに」


 そんな意外な人の名前が出てくることに驚く。ロブと仲良くしろ…ですって?それは一体、何故なのかしら…


 「それって…もしかして、次の取り引き先の相手候補が、ガーイン家ってことじゃないかな?」


 そうフィリップが言って考え込んでいる。それは…あり得るわね?帝国の貴族としては、ロード辺境伯家に次ぐ剣の名門が、ロブのところのガーイン家だもの。ガーイン伯爵様を始めとして、お兄様達も全て騎士団に入られている。フィリップの辺境伯家との取り引きが失敗に終わり、その次のターゲットがロブのところなんだろうな。これは早急に知らせる必要があるかも知れない…


 ガーイン伯爵様とはお会いしたことはないが、うちのお父様からのたってのお願いで、息子を婚約者にと差し出すくらいの人だもの…きっとお人好しなんだろうと思う。だから何か情に絆されることを言われたとしたら、契約を結んでしまうかも知れない…


 「えっ…取り引き?それって何だか分からないけど、お義父様のお仕事のこと?」


 そう不思議そうに見つめるルーシー…やはり義父のしていることは、全く気付いていないようだ。そのことにホッとして…


 だけどさっきのことは、本当に衝撃的だった…それでゲーム内ではどうだったのか思い出してみたけど、ほんの少し言及されていただけ。

 ルーシーはバーモント子爵から、冷遇されている。そして実の母親は、弟だけを可愛がっている…それだけの情報しかない。そしてあの蛇のような男は、今相当に焦っているよう…ルーシーに暴力を振るうくらいだもの。


 「だけどルーシー、あなた本当に大丈夫なの?家でまた暴力なんてことに…」


 それにルーシーは、フルフルと頭を振る。そして…


 「あれでもお義父様は、暴力は殆どないの。さっきは私が反抗的だったから、カッとなったみたい。いつもは口撃というのか…私はずっと(けな)されてきたから。最初会った時なんて、不細工だと言われたのよ。子供にそんなこと…信じられる?」


 それには居た堪れない気持ちになる…ベリーと呼ばれたあの可愛い子を、不細工ですって?

 想像よりとずっと酷い扱いに胸を痛めて…


 「だけど今日…アリシアが庇ってくれて、とっても嬉しかったの!」


 そう言って朗らかに笑うルーシー…もうさっきまでの泣き顔は引っ込んだようだ。これまでのわざとらしい態度や、媚びるような言動も一切ない、そんな『素』のルーシー。それを見ていたら、一つの確信めいたことを思った…ルーシーは、あの乙女ゲームのヒロインとは違うのだと。ヒロインにしては不器用過ぎるし、もはや男性に媚びようとすらしていない。さっきのルシードへの態度を見ていたら、それがよく分かった。私が一番危惧していたキャロラインの断罪も既にそんな危険はなく、ゲームのイベントなど皆無で…もう、完全に頭から無くしていいのだと!


 そして私達はこの世界に確かに生きている…それは間違いないんだ。これからはもう完全に引き離して考えるべきところまで来ているんだわ。ということは…私が望む、真のハッピーエンド。それに向かって進むのみ!

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