72・あり得ないメンバー
ああ、忙しーい!やることいっぱいなんだけど?お兄様に嵌められた…
『生徒会なんて大したことないよ』そう言ってた筈よね?どこがよ~忙しくて目が回りそう!
元々生徒会なんてのは、やることは雑用なんだよね。イベントの計画に、その実現に向けた手回し。おまけに備品の買い出しに、先生方への御用聞き…生徒達の代表という名の雑用係なんだと初めて知った…
お兄様ってば、三年間もやってて疑問に思わなかったのかしら?そして絶対中等部の時もやってたわよね?なんて物好きなのかしら…
きっとその目的は、自分の思い通りにことを動かす為の人脈作りね?そんなことを考えていると、副会長であるジョーイの声が響く。おっと!生徒会役員会第二回中だったわ~
「実は騎士課程の教師であるエドモンド先生と、ダンス教師のブルックス先生がご結婚されることになった。だから…何か贈り物をと思うんだが。生徒一同としてお祝いの品を、誰か買いに行ってくれないか?今週末にでも…」
そう言って副会長はキョロキョロと役員達を見回す。だけど…ここにいる殆どの役員は、目を合わせることもしない。それはそうでしょ?結婚のお祝いって何を贈ったらいいのか分からないし。そもそもこの年齢の生徒達にそれを求めても無理だわよね?
だけどダンスのソフィア先生には、確かにお世話になったし…だから結婚を祝いたい気持ちはあるし、記念になるものを贈りたい心も。でも…休みの日に買いにいかなきゃならないなんて面倒だなぁ。
そんな誰もが立候補もせず、しんと静まり返る中、一人がスッと手を挙げる…ルシードだ!
「はい!私が買ってこよう。それと…アリシア、そしてルーシーにフィリップ。この四人で買ってくることにしようと思うが?」
それには面食らった!何を勝手に?と。そして私と同じで、名を呼ばれたルーシーとフィリップも唖然として固まってしまって…
「そ、それはいきなりですね?まあ…俺はいいですけど。ご一緒させていただきます」
フィリップも驚いてはいたが、この中では一番年下ということもありそれを快諾した。そして私は…ホント面倒だけど、仕方がないと思う。
フィリップにルーシー…それは偶然だろうか?あの密輸事件に関わっているとされている家門が揃っている。
フィリップのところは関わっているというか、巻き込まれようとしているんだけどね。
なんだかこのメンバーを選んだルシードは、ワザとそうしたような気がするけど…
そして三人だけだと不自然だから、私もなんじゃないかな?そう理解して仕方なく了承することにする。
「分かりました。私はブルックス先生にはお世話になっていますし」
そして三人決まったところであとの一人は?と、皆はルーシーを見つめる。すると…
「何故私なんですか!他の人でも良いはずですよね?」
最近めっきり良い子ちゃんフィルターを外したルーシーが、そう言って断ろうとしている。それには…あなたがメインなんですけど?と密かに思って苦笑いする。そしてどうする?と、今度はルシードを見ると…
「男二人では好みが偏ってしまうだろ?だから女性二人だったら良い意見がでるかと…絶対にダメかい?ルーシー」
隣国の王族からの名指しのお願いに、ルーシーは言い淀んで…
「では、クリスティーヌは?アリシアとも友達なんだから、丁度いいじゃない?」
「私は今週末はダメなの。皇后様にお茶会にお誘いいただいているから…」
そう提案するルーシーに、間髪入れず断るクリスティーヌ。だけどそれ本当?皇后様とのお茶会とは…そんな大それた嘘をつくとも思えないし。クリスティーヌは宰相家の令嬢だもの…私はやっと最近お会い出来たけと、キャロラインのように前からそういう機会があったのかも知れないわね。おまけにクリスティーヌもルシードの意図をきっと分かっている。だからワザと断ったのかも…
「それなら分かりました…私も一緒に行けばいいんでしょう?」
嫌々といった様子のルーシーは、ちょっとだけ頬を膨らませながら了承した。それに全く気にする様子もないルシードは笑顔になって、たまには皆んなと出掛けたら楽しいだろ?と声を掛けている。そりゃ仲が良い人とだったらね?今回は微妙な空気になりそうで怖い…ルーシーと出掛けるなんて、子供の時以来だから。週末が楽しみなような、楽しみでないような…複雑な感情になるけどぉ。
──そして当日。
ルシードが迎えに来てくれるというので、用意して待っていると…皇族専用のデッカイ馬車が現れて、ランドン家の使用人達は何事が!?と驚いている。前はアロワ公爵家の馬車でも相当驚いたけど…これは桁違い!御者のハリスなんて、白目を剥いている。だ、誰か医者を~
そんな騒然とする中、馬車から現れたのはファンタジー張りの美麗な人物で…ロッテは「現実のお方ですか?」と激しく目を擦っている。紛う事なく現実です!
おまけに白いアマリリスの花束なんて持って来るもんだから、ロメオが誤解して「あの…プロポーズですか?」なんて聞いている。買い物に行く前にプロポーズなんてしないでしょう?
──ヤメて~ランドン家のボロが出まくってるわよ!
そんな、アリシアと愉快な仲間達…みたいな我が家を、大変お気に召した様子のルシードは「今度ゆっくり遊びに来るね!」と御満悦で…
それでとっとと出掛けましょう!と、その大きな馬車に乗り込んだ。そしてやっと一息つくと…
「キャロラインから聞いていたけど、アリシアの家は楽しいね!羨ましいくらいだよ。今度是非招待して欲しい…絶対に行くから!」
そう微笑むルシードに、ウンウン頷く。あんな騒がしい家で良かったら、どうぞ!という気持ちで。ルシードは恐らく、ずっと王宮では一人で過ごしていたのだろう。だから騒がしい家体験ならいくらでも!と思っていると、いきなりルシードが近付いて来る。それに何?と驚いていると…人差し指を口に当て静かにするようにというジェスチャーをしてくるルシード。う、うん?
「今日は国から連れて来た三人が一緒に来ている。だから…分かるね?」
そう耳元で囁くルシード。それにすっかりと困惑して…分かるね?って…
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