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【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに恋も叶えちゃいます!  作者: MEIKO
第10章・危険な香り

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71・クリスティーヌの事情

 「まさかね…こんな一大事に関わることになるとは」


 思わずそう呟くと、キャロラインは申し訳なさそうに俯く。それから私をチラッと見上げて…

 

 「そうなのよね、私も最初聞いた時ビックリしたの。それにディラン様はルシード殿下を、何とかお助けしたいと。それはもちろん分かるけど、心配しちゃって。おまけにまだ誰にも言っちゃいけないと言われていたから、心苦しくって…」


 グハッ…その困り顔もとっても可愛い~その可愛さで赦してしまいそうになる。っていうか、怒ってないけどね。あれ程のことだもの…言うな!って言われたら、私だって言わないと思うわ。


 「大丈夫よ。それは誰でも言えないと思うもの。気にしないで!」


 そう言って私は、紅茶を一口飲んだ。今日は久しぶりに我が家で女子会を催している。アンドリューが僕は!?ってちょっと怒っていたが、悔しかったら男子会開けば?と言っておいた。ホントにアンドリューならやりそうだけどね?

 だけど何故そうしたかと言えば…クリスティーヌに聞いてみたいことがあったからだ。あの役員会の後、びっくり仰天なことを聞き過ぎて、あの反応のことは放ったらかしになってしまった。そう!生徒会長のことをまだ聞けていない。あのクリスティーヌのいつもとは違う行動の理由を…聞かなきゃ!

 その件をブリジットにも話したら、今日の女子会を提案してきて。それからブリジットを見て一度頷き合ってから、クッキーを一枚摘みクリスティーヌの方を見る。そして…


 「ところでクリスティーヌ。あなた…生徒会長とは、どういう関係なの?何やら曰く有り気だったけど」


 それにクリスティーヌは、まさか自分にお鉢が回ってくるとは思っていなかったようで、何やらゴボゴボとやっている。それをジト目で見ている私とブリジット。そしてキャロラインはそんな三人を心配そうに見ている。


 「私のこと?何よ急に。だからジョーイが言っていたみたいに、ハリーと私は幼馴染みなのよ。そして卒業パーティーの時に、あと一人とその二人に同時にパートナーにと誘われたの。それが最終的にジョーイになったって訳よ。それだけだわよ?」


 そうか…クリスティーヌをパートナーにと誘った人の一人が生徒会長だったんた!じゃあさ、幼馴染み二人から誘われたって訳ね?あとの一人は誰だか知らないけど。明らかに副会長のジョーイは、クリスティーヌのことを好きだと思う。だけど生徒会長は…っていうと、よく分からないわ!とても掴めない人だもの。


 「だけどアリシアから聞いたけど、あなた凄く怒ってたんですって?そんなの今まで見たことないくらいよ。なのにそれだけ…なんてこと信じられない!」


 ブリジットがそう言って、あり得ないという反応を見せている。私も全く同意見だ!あのいつも落ち着いているクリスティーヌが、あれ程に自分の感情を爆発させることなんて滅多にないもの…


 そんな私とブリジット二人を交互に見るクリスティーヌは、それから諦めたように大きな溜め息を一つ吐く。そして…


 「私ね、兄が一人いたのよ…一つ違いの兄が。そしてその兄を含めて四人で幼馴染みだったの。だけど…忘れもしないわ!あれは私が十歳の時…遊んでいたら、暴漢に襲われてね。それで兄は帰らぬ人になってしまった。その暴漢は悪いことをして、父に断罪された人だったんだけど…逆恨みしてね」


 そう悲しそうに言うクリスティーヌは、一筋の涙を溢す。三人は、そんな思ってもみない事実に息が止まりそうになる!そして聞いてはいけなかったのだ…と後悔して。そんな私達をクリスティーヌはチラッと見て、気を遣わせたくないのか、無理やりという感じで少し微笑む。その哀しい微笑みに胸が痛んで…


 「もうかなり前のことだから!今でも時々、兄が生きていてくれたらと思うけどね。だけど…ハリーは、その責任をまだ強く感じているの。自分が助けられなかったことを責めて…。だからね、ディラン様をまるで神のように崇めているわけ。あれだけ強くて頭脳明晰な人など、他にいないでしょう?もしも自分がああだったら、兄を守ることが出来たと思っているのよ。だけど私はもう責任を感じて欲しくない!ハリーのせいじゃないもの。だからあの時何だか腹が立って…」


 そのことに愕然とする。ただの変わり者のような生徒会長が、そういう強い想いを抱えている人だったのだと!そのクリスティーヌのお兄様が亡くなられてからずっと、苦しんできたのだろう。自分が強くて犯人を撃退できたなら…と思って。そう後悔の念を抱きながら…


 「ゴメンね、クリスティーヌ。そんなに辛いことを思い出させてしまって…本当にごめんない!」


 私は泣きながらそう謝った…それにクリスティーヌはまた、笑顔を作ろうとしている。それには居た堪れなくて…


 「知らなくて…ごめん!まさかそんなことだったなんて。それを無理やり聞き出そうとなんて」


 ブリジットも泣いている。結局私達二人はクリスティーヌを心配しながら、さらに辛い思いをさせてしまったことになる。

 それから無理して泣き笑いしているクリスティーヌの身体をぎゅっと抱き締める。その上からはブリジットも、そしてキャロラインはそんな私達を女神のような慈しみ深い表情で包みこんだ。そして四人で、ひとしきり泣いて…


 「ありがとう。三人はやっぱり親友ね!あなた達がいるから、今は淋しくなんてないわ!本当よ?」


 そうクリスティーヌは心からの笑顔を見せる。それから円陣を組むように肩を組んで、頭をコツンと合わせて「私達は最強で最高なんだから!」と微笑んだ。

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