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60・パーティーの終わりに

 ──まさかね…そんなことだったとは!

 

 ルーシーの攻略対象は、まずスティーブ殿下が消え、そしてアンドリューは自ら消えた。そしてロブはそもそも対象者ではなく、ランバート先生は売約済!(これは狙っても許さないわよ?)そうなると残るのは…ニクソンとフィリップだけということになる。     

 

 そしてニクソンが言っていたのは、ルーシーの義父のバーモント子爵はより高い身分の令息と縁づくことを命じているという…となると、必然的に次に対象になるのはフィリップだわ。子爵家の令息のニクソンでは、役不足だということになるから…


 そして目の前のルーシーとフィリップを見る。これはルーシーの義父である、バーモント子爵の企みによるものなの?それとも…ルーシー、あなたの意思でフィリップをパートナーにと誘ったのかしら?


 「どう?このドレス…綺麗でしょう。フィリップ様の髪と同じ真っ赤なの!似合うと思いませんか?ランドン令嬢」


 ルーシーは私に対してそう言うと、その場でクルリと回って見せた。ピンクの髪がフワッとなびいて、光沢のある赤い生地に重ねた同色のチュールレースもフワリと揺れる。きっとダンスを踊る度にこうやって揺れるんでしょうね?悔しいけど、それはルーシーに凄く似合っている。フィリップの髪色は、ほんの少し朱色が混じった明るい赤…まるで太陽のよう。だけど…この色は元々、あなたの色だったのではないの?赤髪でソバカス…皆んなからベリーと呼ばれて、それを自慢にして笑っていた。そんな昔のあなたと同じなのよ!気付いてる?ベリー…


 「そうね…赤がとっても似合ってるわ!まるであなたの為だけにあるドレスみたいね…ベリー」


 思わずそう言うと、ルーシーの顔は途端に強張る。私から、ベリー…そう呼ばれるとは思っていなかったのだろう。顔を真っ赤にして、口元はワナワナと震えている。ニクソンから、今のルーシーはそう呼ばれることを嫌い、誰にもそう呼ばれることを許さないと聞いていた。だから…怒ったのかしら?本当に怒らせるつもりはなかったの。ただ、そう口をついて出てしまっただけで…

 

 「もう…いいわ!」


 そう言い残すとルーシーは、クルリと向きを変えて去って行ってしまう。その時の表情は、見ることは出来なかったけど…


 「やはり…不味かったですよね。皆さんが言っていた人って、あのルーシー嬢のことなんですよね?キャロライン様に嫌がらせをして、ロブからの告白を冷たくあしらったという…」


 ここに残されたのは、私だけでなくフィリップも。ルーシーを追わなくていいの?と思うが、何故かこの場を動く様子もない。そしてある程度はルーシーのことを分かっていたのだと判明する。


 「そうなの…私とは何かと縁のある人なんだけどね。だけど聞いていい?どうしてパートナーとして、ここに来ることになったのかしら」


 もうこうなりゃ疑問に思ったことは聞いてみる!そんな気持ちで尋ねた。後で悩むくらいなら…と。すると…


 「冬季休暇中は辺境の領地へ戻っていたんだ。それで…ある時父から呼ばれて行ってみると、バーモント子爵様を紹介されて。その時一緒に来ていたのがルーシーだった。顔を合わせた後、娘のパートナーが決まってないから、なってやってくれないか?と言われて…そして父もそれに同調してしまって。ルーシー?って名を聞いた時、何だか嫌な予感はしたけど…まさかと思って。だから同一人物だとは知らなかったんだ!それがさっきアリシアに声を掛けた時の反応で…俺、やってしまったんだと気付いて…」


 なるほど…やはり裏で糸を引いているのはバーモント子爵のよう。バーモント子爵は義理の娘が乙女ゲームの主人公だなんてもちろん知らない。だけど…もしかしてその行動は、知らず知らずのうちにインプットされてしまっているのかも。きっと今まではスティーブ殿下を狙うように仕掛けて、そのルートが消えた今は、次に身分の高いフィリップへと。だけど思うのは、ルーシーは何故そこまで言いなりになっているんだろう?ってこと。自分の意思で行動はしないのだろうか。誰かの策略ではなく、偶然知り合ってそして友人になり、いつの間にかその人を好きになっていく…それが恋なんじゃないの?なのに…私はあなたのことが分からないわ!ベリー。


 するとその時、あと一曲でパーティーの終了を告げられる。そしてまたホールへと人が集まり始めて…


 「アリシア、一曲踊ってくれませんか?」


 フィリップがそう言って私に手を差し出す。「あっ…」とその手を取ろうとした時、ホールに集まる人達の中にアンドリューを見つける。アンドリューはこっちを見ていて、私がフィリップに誘われているのを気付いたようだった。そして悲しそうな顔をして顔を伏せる。シュン…と捨てられた仔犬のようになっているアンドリュー。その顔を見ていたら、ブハッ!と思わず吹き出してしまう。そんな私にフィリップは不思議そうな顔をして見ているけど…


 「ごめんなさい!フィリップ。今日は私、アンドリューとパートナーなの。だから…行くわね?待ってるから!」


 そう言って私は、アンドリューの元へと急いで駆けて行く。自分に向かってどんどん近くなる私にアンドリューは、鳩が豆鉄砲を食らったような顔して驚きまくっている。だけど次の瞬間…笑顔で私に手の平を差し出す。ハァハァと息を整えてから、その手にチョンと自分の手をのせると…


 そして二人は踊る!もう既に脚は限界で、おまけに爪先も痛い。血が出てるかも?なんて思うが、構わずに精一杯踊った…この瞬間は今しかない!色々と気になることはあるが、今日はパーティーを楽しまなきゃ。そしてその輪の中に大好きな親友達を見つけて、笑顔でウィンクを飛ばしながら踊った…二人で!

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