6・そしてプロローグへと
「それにしてもお嬢様、ルーベルト令息様は麗しいお方でしたよね?この世のお方だとは思えません!」
ロッテは、すっかりとディラン様の虜になった。確かにその気持ちは分かる!男性なのにあれほど美しいなんて、反則ではないかしら?
それに三年生ともなると、体格も大人と変わらないのだと感心する。もしかして、ディラン様だけがそうなの?子供っぽい三年生もいるのかもね…
そしていよいよ明日から学園生活が始まる。入学式というものは一応あるが、保護者を呼ぶほどの大々的なものではないらしい。そこに通う生徒達だけが集まり、入学を祝ってくれるのだと聞いた。お父様は相変わらず忙しいし、それに時間を取られなくて良かったのかも。だけど私だけで行くのも、それはそれで心配だけど…
だけど私には生徒会長という強い味方がいる!そう思うだけで安心できるわ。実際お世話になることは無いと思うけど、そんな安心感があるだけで格段の違いがあるわよね。余裕…っていうのかしらね?
「はいはい、分かりました。ロッテのディラン様贔屓は。確かに私もビックリしちゃったけど~」
「ですよね~」
ロッテが夢見るようにそう言って、ホント大丈夫?って心配する。まあ、憧れの人を持つのは悪いことではないわ。憧れの人といえば…明日ロブ様には会えるのかしら?
そう考えてしまって、苦い思いになる。この帝都に来て一ヶ月弱、まだロブ様とは会えていない。私がここに来ていることを知らない?同じ歳だし、知らないとは思えないけど…
取り敢えず明日それがハッキリするわ!一緒に入学するんだから。
ロブ様のガーイン伯爵家は、武門を尊ぶ家系。御父上であるガーイン伯爵様は近衛騎士団の団長で、お兄様も近衛騎士になっていると聞いている。だからきっと自分も!って、剣の鍛錬に励んでいることと思う。私のことなど考えられないほどに…
少し不安だけど、悪い方に考えずに明るく考えようと決める。領地では子爵令嬢の友人が一人だけいたけど、自分より上の身分の友人はいたことがない。きっとみんな仲良くしてくれるわよね?そして学園では、誰もが平等という精神の元に学ぶ。私だって一応伯爵令嬢だし、無難に学園生活を送れるだろうと期待してるけど。取り敢えずは明日、乗り切ることを考えましょう!
──そして翌日。
朝から晴天で、私の門出を祝ってくれている。絶対そうだと自分で思い込もうとしてるのが本音だけど。
「お嬢様!初日を制する者がその後も制するんです」
ロッテがそう理由の分からない格言を言い出したけど、激励のつもりかしら?
そしてメイド達が朝早くから、ああでもない…こうでもないと、頑張って用意してくれる。そのおかけなのか、可愛さ三割増の私が出来上がりっ!
「アリシア、気を付けて行ってこい!あまり無理するんじゃないぞ?」
珍しくお父様は家にいて、今日だけは私を送り出したいと、時間を調整してくれたよう。それに明るく「はい!」と返事して、馬車へ乗り込んだ。ロッテをはじめとするメイド達は心配そうに見つめているが、これより先は私一人…気を引き締めて行こう!
「では、行ってまいります!」
ちょっとだけ行儀が悪いけど馬車の窓を開けてそう叫んだ。今日は初日だし、きっと許される!それから馬車は静かに走り出し、帝都の外れにある学園の方へと向かっていく。ここからは半刻ほどで着くだろうと、これから毎日見るだろう景色を眺めていた。そしてドキドキしながら進むと、学園だと思われる大きな建物が見えてくる。そして敷地自体が相当広く、皇居と同じくらいあるのかも?と。そしてもっと近付くと、学園の全容が見えてくる。大きな建物が二つ向き合うように建てられていて…
──二つ?もしかして、科によって校舎が分かれているのかしら?
学園では、一般教養とマナーやダンスなど貴族としては必須の教科も学べる。それとは別に希望制で騎士教科もあると聞いている。もちろん剣術を学ぶことになるので、体力がない私は希望しなかった。だけどロブ様は学ぶのよね?そしてあの立派な体格のディラン様もきっと騎士科ね。
そんなことを考えているうちに学園の門をくぐり抜け、玄関前で降りる為に順番を待つ。これは身分の差というよりも、早い者順になるみたい。そして物凄く時間がかかるかも?と警戒していたけど、それほどの混雑は感じない。うちを含めて数台ほどがもたついたくらいで…
「お嬢様、行ってらっしゃいませ!」
そう元気いっぱい声を掛けてくれる御者。それを見送りながらも、よし!と気合いを入れる。そして見上げると…
この帝都学園の圧倒的な大きさに驚く。ここには、この帝都の貴族はもちろん、友好国の人達も留学していると聞いている。私は家から通うから必要ないけど、寮も完備しているそう。だからこんなに建物が大きいんだわ。
そして気を取り直して、一歩足を踏み入れてみる。これより先は自分だけの力でやらなきゃ!この学園では誰もが平等で、学ぶ権利があるから。そう決意も新たに足を踏み出した瞬間…
──ドサッ!
何故か転んでしまう…
~そして、プロローグへ~
+++++
私は今、皇太子殿下を前にして一歩も引かぬ思いでいた。だってこんな理不尽なこと…見逃せる訳はない!私の隣で堅い表情をしているこの人を助けなければと。
──見て見ぬふりは絶対に出来ない。それに逃げたくないわ…
そして私は意を決して言い放つ!
「恐れながら申し上げます。何故…そう思われるのです?」
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