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59・私はベリー(ルーシーSide)

 私は『親愛なるベリー』そう父から呼ばれた。真っ赤な髪に、白い肌にはソバカスがいっぱい!そんな見た目から、父が笑いながらベリーと愛称を付けてくれたの。父の仕事の都合で、ルブランという街に生まれ育った私は、毎日元気一杯で野山を駆け巡っていたわ!そんな私がある日、出会った可愛い子…アリシア!猫の目のような素敵な瞳を持っているのよ。そして伯爵家の令嬢なんだけど、高位貴族なことを全く鼻にもかけない、とっても良い子なの!だから仲良くしているわ。


 今日も私とアリシアは、山へと遊びに行く。その山を三十分ほど登ると、街が一望できるところに出る。私達はそこから、街の人達を眺めるのが好きだった。あれはパン屋さん、あの人はお隣さんよ?と見える人をアリシアに教えてあげていると、遠くにお父様が見える。凄く遠いけど…あれは絶対間違いない!だけど…知らない女の人といる?誰だろうと不思議に思った。そして家に帰ってから、それをお母様に話したわ!それが私達家族の地獄の入り口になるとは思わずに…


 それからは毎晩、両親が言い争う声が聞こえる。私はベッドの中で、耳を塞いで我慢した。どうしたの?何があったのかしら…あれ程仲が良かったお父様とお母様が!

 「誤解なんだ!」とお父様が叫び、「そんなの嘘!」とお母様は叫ぶ。どうしてしまったの?そんなことが暫く続いて、お父様は突然「疲れた…」と言い残し、一人この家を出て行ってしまう。


 私は自分を責めた!何故あの時、お父様を見てしまったの?どうしてそれをお母様に話してしまったのだろう…と。そしてお母様の実家に行くことになり、お別れにアリシアの家まで行った。すると…アリシアは突然の病で、伏せっているという。なんてことなの…


 ──私は罰を受けているのね?


 幸せな家族を壊してしまい、また唯一の友達とももう会えない!そしてアリシア…もう会えないけど、あなたの病気が治るように毎晩祈るわ!それしかあなたの為にしてあげられないから…


 そして私とお母様を待ち受けていたのは、冷酷なお母様の家族達。そして直ぐに命令され、お母様は再婚することになった。ここに居るよりはきっといい!そう思った私は、また直ぐに奈落に落ちることになる…


 新しいお義父様、バーモント子爵。初めての対面で私に…


 「なんと不細工なんだ!こんな子が私の娘に?お前は自分を磨く努力をしろ。でなければ追い出してしまうぞ!」


 そんなことを幼い子供に言い放つ人だったの。私は絶望する…だけどそれが、私を生かす一つの希望なのかも?と思い直した。それから暫くして、私の赤毛に変化が現れる。昔お父様が言ってた…私のお祖父様にあたる人が、赤毛から金髪になったって!じゃあ、私もそうなるのね?そう期待した。だけど何故かピンク色に変化する。「こんな髪じゃ愛されないじゃない!追い出される?」そう絶望した私だけど、それは意外な反応で…


 「これはいい!美しい髪色になったな?ルーシー。その褒美に帝都学園に行かせてやろう!そして…自分よりも身分の上の令息を捕まえるんだ!分かったな?」


 相変わらずの嫌な顔でそう義父から命令される。だけどそれは、私も願ったりのことだった。お母様はこの嫌な男の子を身籠り、生まれたのは嫡男となる弟。その瞬間から盲目的に弟を溺愛しだした。もう夫から捨てられるのは耐えられないのだろう…そんな感情が関係しているように思えた。そしてそれを見なくてすむのなら、学園に行った方がマシだと思えたの…


 そして私を待っていたのは…思ってもみない世界だった!私は意外にも、美人だったらしい…義父からはずっと不細工だと言われ続けてきたから分からなかったわ!だから令息達にチヤホヤされて…そんなことは初めてだったから、私を認められたような気がして嬉しい!だけど…あの美しい人は誰なの?

私はまるで教会の女神像のように美しい人に、目が釘付けになって…


 その人は公爵家の令嬢で、おまけに皇太子妃に内定しているという、雲の上の存在だったの。どうして?私と何が違うんだろうか…あの人は全てを持っていて、私は何も持っていないのに。そんなふうに感じて、初めてのドス黒い感情が芽生える。それには私自身も驚いて…助けてアリシア!私はどうなってしまったのだろう?そう震える。


 それから暫くして、皇太子殿下の過失で私が怪我を負い、療養を余儀なくされた。そんな時でさえ、あの男は…


 「ルーシーでかした!これで皇太子殿下に近付けるな?学園に復学したらまず、殿下の元へ行け!そして公爵家の令嬢から、その立場を奪えばいいんだ!」


 ──そ、そんなことが可能なの?馬鹿な…


 そんな恐れ多いことが可能な訳ない!そう思って半信半疑だった私。三ヶ月ほどで完治していたが、義父の指示で一年も復学することが叶わなかった…どうやら、殿下の心により罪の意識を植え付ける為だったらしい…。そのせいなのか復学してからは殿下や、同じ班だった令息達がとても優しく接してくれて…。まるで私自身が高位貴族にでもなったかのような気分にさせられる。それから私は、殿下の婚約の相手であるキャロラインを貶める行動を取っていく。当たってないのに当たったとべそをかけば、全部それを信じてくれる。そんなことが続くと、それまでのキャロラインの立場を私が奪うかのように、自分よりも身分が高い同級生達から、よりもてはやされて…

 だけど私は、別に殿下を好きではなかった。それはきっと殿下も同じ。きっと私達、目的が同じだっただけなのね?そう分かっていた…


 だけど同時に、それと相反する気持ちが湧いてくる。人を傷付ける嫌らしい自分…これは自分ではない!本当は違うんだと、心の中で警鐘が鳴る。このままでは、大切な何かを失ってしまいそうで…


 そんな中、幼馴染みのニクソンから朗報が届く。アリシアの病気が治り、高等部からこの学園に通うと…

 私は歓喜した!もう一人きりではないのだと。こんな過分な待遇を受けておいて、だけど心は全然満たされない…取り返しがつかないことをしているのでは?という後悔と不安。それがあなたといることで解消出来るのね?もう無理しなくてもいいんだわ!…と。


 待ちに待った高等部の入学の日、あなたを見て一目でアリシアだと分かった!今すぐ駆け寄りたかったけど、そこには何故かキャロラインがいる。あの人が行ってしまったら…そうしたら話し掛けよう!そしてまた友達に…と胸が踊る。そしてその瞬間を今か今かと待っていた…だけどアリシア、あなたは私に軽蔑の目を向けた。何故?何故そんな何もかも持っているキャロラインの味方をするの?そしてそんな眩しい笑顔をその人に向けるの…?


 絶望した…また私は、罰を受けるのね?何の罪もない人を陥れた罰を。


 そして私は、愛し方が分からない…私を躊躇せず捨てて行ったお父様。そして弟だけを愛するお母様。そして私を利用したいだけの義父…

 そんな家族しか知らないのに、どうして人を愛せるの?教えてよアリシア…

 

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