56・続々と集まる親友達
パーティーの会場に一歩足を踏み入れると、あまりの眩しさに目が眩む。元々こういった場の利用にも対応出来るように造られているのだろうが、普段とはかけ離れ過ぎて…
無機質な白い壁には重厚な幕が掛けられ、控えめだった筈の照明は煌めくシャンデリアに変えられている。一体いつの間に?と驚いてキョロキョロしてしまう。それと同時に不安になるのは、こういうのは全部生徒会の仕事?ってことだ。これって…詰んだ!
こういう手配までこれからは、私もやらなきゃなんないんだわぁ~
っつたく、面倒なことに…とブチブチ文句を言いながら会場の中程まで入って行くと、そこには見知らぬ令息といるクリスティーヌが。探す手間が省けた~とばかりに近付くと、パートナーの二年生の公爵家の令息、なんとかンさん?ほにゃらイさんだったかしら?知らない人なので定かではないが、私達を見つけると笑顔で駆け寄って来る。
「アリシア~、それにアンドリュー!二人とも、変わり過ぎじゃない!もはや原型を留めていないわよ?」
そんな失礼なことを言ってくるクリスティーヌだが、自覚はあるので「そうなの!」と胸張って言っておく。アンドリューも「惚れ直しただろ?」と気にする様子もなく、まさに似たものカップルになっている。そしてクリスティーヌのパートナーだが、結局自分では決められずに「ジャンケンで!」となったらしい…言ってみたいわね?そのセリフ!そして勝ったのがこの方のようだ。
「やあ、初めまして。二年のロベルタ公爵家のジョーイだ。二人共、よろしくな!気軽にジョーイと呼んでくれ」
クリスティーヌのパートナーは、公爵家の令息としては素朴で明るそうな人だった。そして、ほにゃらイさんの方だったと理解して、私達も先輩にと礼と取ってご挨拶した。
「ジョーイ様、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。私達は今回が初めの参加なのですが、こんなに豪華だとは…ホントに驚きました!」
「アハハ、そうだろ?生徒会がなかなかにお金を掛けて、準備をするから。あっちの方には飲み物や軽食。そして踊り疲れた時に座る椅子も用意されているから利用するといいよ!」
そう教えられて見渡すと、確かにサンドイッチや一口大のケーキ、そして気軽に摘めるピンチョスなどが用意されている。そしてアルコールは抜きだが各種飲み物もあるよう…これは有り難いわ。そして疲れたら座ろうと椅子のある位置を確認しておく。もう既に履き慣れないヒールのせいで違和感が!頑張れ私の足…
「ねえ、ブリジットは見掛けた?探してるんだけど…」
クリスティーヌがそう尋ねてきて、私は首を横に振る。まだきていないようね?
それから続々生徒達は集まって、思った以上に人でひしめき合うことに。すると…
わあっ!という大きな歓声が沸き起こる。うん?誰だ…と入り口付近を見ると、まるで妖精のように美しい人が目に入る!キ、キャロライン~
一際大きな歓声で迎えられたのは、もう完璧な『美』!
パッと目を引く鮮やかなコバルトブルーのドレスを揺らして、豊かな銀髪は緩やかにアップにしている。そして首元のネックレスは、何重もの細い金のチェーンに煌めくブラウンダイヤが数多く留められている豪華なもので…それはまるで光の渦のよう!そして薔薇色の頬を染めて見つめる先は…当然というかお兄様!
銀糸を織り込んだ白の上衣に、それは一体何なの?と聞きたくなるような最高級のエメラルドを散りばめてある。そしてキャロラインのドレスと同じコバルトブルーのマントをサッと翻しながら歩いていて…。ここで何故かロッテの言葉を思いだす。『たかが卒業パーティー…されど卒業パーティー!』他の参加者達とは一線を画しているその装い。ありゃ、伝説になるわね?
──だけどさ、いくら主役の卒業生だと言ってもやり過ぎでしょうよ!
あのドレスやアクセサリー、あれは全てお兄様がキャロラインにと贈ったものだと聞いている。もう一切の文句をアロワ公爵家から言わせないようにしたんだと思う。お兄様は卒業後、宰相補佐として鳴り物入りで皇居で働くことが決まっている。お祖父様はずっと皇帝陛下の相談役を務めているし…エグいわぁ~ルーベルト侯爵家の帝国中枢への入り込み!お兄様の代で公爵へと陞爵されることもあるかも知れないわね?あれが全て、キャロラインの為なんだから…
おぉ~怖っわー!と呟いていると、そんな二人が私達に気付いて、笑顔でこちらへと近付いて来る。
「わああ!何?アリシア、そんなに綺麗になっちゃってー!」
「なんて可愛いんだ!驚いたなぁ…」
うん…この二人にそう言われると、ちょっと複雑…だけどその言葉は有り難く受け取っておくわ!それから皆んなでお互いの健闘を讃え合って、そろそろ参加者は勢揃いしてダンスが始まる?と見渡す。するとその時、先程のお兄様達とは控え目だが、それでもワッ!と驚くような人達の声が聞こえる。お次は誰よ?その声の方へ目を向けると…
「ええっ…あれ、ブリジットじゃない?それに隣は…えっ?」
そう言ったまま言葉が続かないクリスティーヌ。そして私も目の前のことが信じられない!ブリジットのパートナーって、あの人だったの!?
ブリジットがそう騒がれている中、背筋を伸ばして堂々と歩いている。キャロラインのものとはまた違った明るいブルーのドレスを着て。そしてそのブリジットがにこやかに隣を見つめて、嬉しそうにその人の腕に自分の腕を絡めている。その人の艶のある青い長髪が揺れていて、そしてブリジットの髪色に合わせたのか、濃紺の丈の長い上衣に首元にはトレードマークといえるフリフリの黒いブラウスが覗く。そんなアンニュイな格好が似合う人といえば、唯一人…化学教師ジョセフ・ランバートだ!
「ええっ、何で?どうしてあの二人が!」
私達は突然の衝撃の事実に、ポカンとして見つめる。ランバート先生…あの人は、ヒロインの攻略対象者だった筈。それが何がどうなってブリジットと!?嘘でしょう…
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