52・テスト終了!
「グハッ…もう無理だって~」
そう弱音を吐く私が…。卒業パーティーに先立って、学年末テストが行われた。今までほどんどテスト勉強なんてやって来なかった私も今回は…頑張りました!だからもうこれ以上は無理で…教科書なんて、暫く見たくない~
そして全教科やり終えた今は、あとは結果を待つだけ…
「今日の激推し!パスタランチ、売り切れだった~」
「えっ、ホント?黄色い誘惑♡オムライスもだったわよ!?」
やっと午前中で全てのテストを終えて、今はお待ちかねのランチタイム!だけどカフェテリアは、屍の山と化している…テストを何とかやり切った面々が、テーブルにバタリと突っ伏しているのだ。
そんな中、我関せずで呑気なことを言っている私達は、もう終わったテストのことは忘れてしまってて…悩んでも結果は変わらないからね~
「あら、アンドリューがいないわね?お昼、食べないのかしら?」
いつもなら一番に来て、場所取りをしてくれているアンドリューが居ないことを不思議に思う。
「あの子さ、昨日は徹夜で勉強してたのよ…どうにかAクラスになりたいって。だからぼうっとしちゃってるんじゃない?そのうち来るでしょ!」
ブリジットはそう言って気にしている様子もない。だけど徹夜って…大丈夫なの?フラフラになってそうだし、カフェテリアまで辿り着けるのかしら…
そう心配して見渡すとその瞬間…ある人が目に入る。ベリーこと、ルーシーだ。
スティーブ殿下が学園から去って、昼食時に専用サロンを使用出来なくなったルーシー。それでこの学期から、カフェテリアを利用しているようで…だからここで時々、顔を見るようになった。それもニクソンと一緒ではなく、同じクラスらしい数人と同席しているみたいだが、決まった人という訳でもないようで。ルーシーがベリーだと知ってから、気にならないといったら嘘になる。だけど…あの子がキャロラインにしたことを考えると、私から声を掛けに行くことはまだ出来そうもないわね…
そして肝心のルーシーの身に起こったこと…あの時もうニクソンからは聞く気が起こらず、こっちに帰って来てからロブとアンドリューに聞いてみた。私との意外な縁には驚いた様子だったけど、知っていることを全て話してくれた。
ルーシーのお母様は離婚後、二人で実家へと帰ったそうだ。だけど当然というか、実家の家族からは良い顔をされず…すぐに再婚することを命ぜられたと。それが…バーモント子爵で…
そのバーモント子爵は、ルーシーのことも子供として迎え入れてくれ、翌年は弟が出来たそうだ。だけどそのバーモント子爵は、凄く厳しい性格の人だったらしい。それでルーシーに対して、見た目を磨いて少しでも身分の上の人との結婚を実現するようにと命じたらしい…そしてお母様は再度離婚されるのを恐れて、バーモント子爵のいいなり。そして夫の実子の弟だけを可愛がるようになったようで。だから同情すべきところはある…
でも私が思うのは、気持ちを無視して高い身分だけの人との結婚を望むのではなく、友人として殿下に助けを求めることを望んで欲しかった…ってことだ。そしてそれが可能な立場だった筈よね?おまけに殿下の過失が元で怪我までしたのだから…それなら尚更、助けてくれたんじゃないかと思う。だから…そうして欲しかったな。そうだったとしたら、私とベリーとしての再会もあったんじゃない?今更そう思っても遅いけど…
「ねぇアリシア…大丈夫?疲れちゃったのかしら。さあ、これでも食べて元気出して!」
そう言って、自分のメニューに付いていたプリンを私に差し出して微笑むキャロラインがいる。それに微笑み返して「大丈夫よ!ありがとう」と応える。そしてキャロラインとも友達になるルートもあったんじゃ…と物悲しくなる。この何処までも優しく美しい人を、親友と呼べる人生も。そう感傷に浸っていると…
「それでアリシア、ドレスはどうしたの?パートナーも決まっていないのに注文しちゃったの?」
そう尋ねるクリスティーヌに、苦笑いで答える。だって注文しなきゃ、間に合わないじゃない?
「ダメかしら?だから私だって考えて、クリームイエローのドレスにしたわよ?それだったら、誰がパートナーになっても最悪誤魔化せる!ベビーピンクとか、セルリアンブルーとか、色の前に◯◯が付く色なら曖昧なのよ…ようは色んな色が混じってるってことよ。だから相手がどんな色の瞳や髪色でも、こじつけることが可能!」
そう言ってウィンクしながら親指を立てる私に、目が点になる親友達。それから…
「アハハッ、凄いわね?そんなの初めて聞いたけど、ホントだわ!」
「アリシアって天才ね?パーティーへの意気込みをより感じるわ」
「もう何色でもいいじゃない?アリシアが楽しければ…」
そんなことを口々に言われて、笑われる私。そんなに可笑しかったかしら?そうブーブー言っていると、何故かこの場が騒がしくなり…そして突然クリスティーヌが驚きの声を上げる。な、なんだぁ?
「ねぇ…あれ見て!!」
その途端、このカフェテリアが騒然とする。すこし前まで、屍だった筈の生徒達がまるで生き返ったように、ある一点を見つめて離さない!
私の座っているところからはちょうど柱の陰になり、よく見ることが出来ない…それでキョロキョロしながら「どうした?」「何が?」と聞くが、皆んなも同じように呆然と見つめて動かなくて…だけどそのうち私の目にもその全容が映ってくる。
まるで非現実的なファンタジーの世界から抜け出て来たような、美麗な人物がこちらへと歩いて来ている。周りの生徒達はもうその人に釘付けで、微動だにしていない。騒がしい筈のカフェテリアがシンと静まり返って、その人の歩く足音がカツカツと響くだけ…
──あ、あの人は誰?見たことないけど…おまけにこっちを見ているように感じる。そして何故か、私の方へと歩いて来ているように感じるんだけど…気のせい?
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