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48・アリシア、呆気取られる

 ──あ、あなたは…ニクソン!?


 この頭一つ分くらい飛び出ている感じ…おまけに表情は乏しく、一体何を考えているのかも分からない。今はもう解散したようなものだが、かつてのスティーブ殿下のグループに居たのは分かっている。そしてヒロインであるルーシーに恋していることも…。だけど私とは一切口をきいたこともないし、そもそもクラスが違うからどういう人なのかも知らない…唯一聞いた声が、あの暴言騒動の時の…


 『二階の教室には誰もいないようです!それこそ一人も…』それだけ!なのに?と困惑する…


 ──そんな薄っすーい印象のニクソンが、実は私と遠い親戚だと…?


 ニクソンを見つめたまま言葉もなく、愕然としている私に気付いたサイモンは訝しげに弟を見る。ニクソンは普段通り無表情で、口を閉じている。だけど兄であるサイモンは、その表情の中に何かを感じ取ったようで…

 突然サイモンがその場で跳び上がる…物凄い高さだ!今度はサイモンをポカンと見上げることになる。へっ…?


 ──ガツン!!


 跳び上がったサイモンは、そのままニクソンの頭目がけて拳を思いっ切り振り下ろした!私はその初めて見るジャンピング拳骨(ゲンコツ)に唖然として…


 「うわ!な、何を?」


 「い、痛てぇー!」


 同時にそう叫ぶ私とニクソン。そしてニクソンは蹲まって唸り、頭を抱えている。それを見ながら声もない私に対してサイモンは、膝に顔を打ち付けるんじゃ…と思うほどにバッと頭を下げた。そして…


 「申し訳ございません!お嬢様…弟が大変失礼をしたようで!お嬢様に対して挨拶が無かったのですよね…。こいつ、悪い奴じゃないんです!ただ、少しだけ愛想もへったくれもないってだけで…」


 少しどころではないんじゃなくて?私はそれに苦笑いする。サイモンが言うように私も悪い人だとは思っていない。だけどこれは余りにも…礼儀に欠く行いだ。


 「だけどそれ、致命的じゃない?」


 思わずそう呟いてしまった…私だって別に、領主のお嬢様風を吹かせたい訳ではない。だけどそれは…一言あって然るべきだと思う。それに…私はあの時のことを思い出していた。今となっては遠い過去のようになってしまったが、帝都学園の正門で私達が最初に出会った時を…


 スティーブ殿下の、お前は誰だ?発言の時、それにいち早く答えたのはロブだ。今考えると初対面だったあの時、身体的特徴から瞬時に私だと見破ったロブ。そして殿下に向けて私の名前を告げた。あれ…本当なら、ニクソンがやるべきだよね?


 「こちらは我が領主のご令嬢である…」ってやらなきゃダメでしょ!何やってんのよ?

 そしてその時、本当なら私も気付いた筈だった…ニクソンがルブランに住む自分の傍系であると…馬鹿か!こいつぅ~


 怒りの余りいつになく毒づく私だが、怒ってても埒が明かないと、ニクソンに自ら声を掛けることにした。 


 「ニクソン…あなた、ニクソン・ブラウンって名前だったのね?知らなかったわ!どうして言わなかったのかは今更だから聞かないけど、今後無視するのだけは辞めてちょうだい!」


 「も、もちろんです!」


 それに答えたのは何故かサイモンで。おまけにもう一つガツンと拳骨をお見舞いしている。だけど凄い跳躍~!


 「別に黙っているつもりは無かった。機会が無かっただけで…」


 そう言いながら頭を擦っているニクソンは、それでも表情は薄く何を考えているのか分からない。これは将来、領地を管理させる役目なんて無理じゃない?おまけにCクラスだし…そう思っていると、それを察したサイモンが焦りながら口を開く。


 「だ、大丈夫です。ニクソンは体力だけは自信があるので、将来は騎士団に入ることを希望しています。なので…一切経営には携わりません!」


 そんなサイモンを疑いの(まなこ)で横目で見たけど、確かにニクソンは体格がいい!そして恐らく、騎士を目指して剣術の授業にも出ているんだと思う。他人事ながらそれが一番いいのかもね?と見つめる。


 「だけど…アリシア様だって、無視したじゃないですか?」


 いきなりニクソンにそう言われ、うん?って戸惑う。

 私達あの学園で初めて会ったと思うけど?そして私は長年病に苦しんでいて、ニクソンを見掛けることも無かったし…おまけにあなた、中等部から通ってるわよね?それじゃあ、分かれっていうのが無理だと思うけど。おまけに無視…とは、私の場合は違うと思うなぁ。

 だから同じ条件なんだから、自分だけとやかく言うな!ってコト?なかなかハッキリ言う人なのね。


 そう思いながらニクソンの顔をマジマジと見つめる。兄のサイモンと同じで、黒っぽい灰色の髪に燻んだ緑の瞳。そして骨格は全体的にガッチリしていて、男らしいイメージだ。結局この人しか残らなかったんだよね?ルーシーに未だ残された攻略対象者はこの人だけ…。そう考えながらぼうっとしていると…


 「だからルーシーを無視したでしょう?それは何故ですか!」


 そうニクソンに言われてハッとする…確かニクソンは、ルーシーの幼馴染みだと言われていたわね?

 ま、また?そう嫌な予感がする。ニクソンの幼馴染みってことは、私とは…


 

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