46・あの時の秘密
あれから…何と!お兄様とキャロラインは婚約した。キャロラインが帝都学園を卒業してから…そう言っていたくせに、そんなに早く婚約するだと!?そうお兄様を問いただすと…
「何が悪い?キャロラインはあんなに美しいんだ…心配になるだろう?おまけに私が婚約者ならば、何人たりともキャロラインを傷付けることなど出来ない…そう思わないか?」
──思います!!うっかりそう言っちゃったわよ…
そりゃそうだけどぉ~せめて在学中だけ自由にさせてあげてよ!やっとあのスティーブ殿下から解放されたんだし。おまけにお兄様ってば、キャロラインのお父様であるアロワ公爵様に、無茶苦茶文句言ったらしいのよ?
「娘に対して無関心過ぎることが、今までのキャロラインの辛い状況を生み出していることをご存知か!」なんて言っちゃったらしいの…おまけにそれ、婚約のお許しを頂きに行った時なのよ?チャレンジャー!
それに最初は「この若造が!」って憤慨された公爵様も、お兄様の隣で嬉しそうにしているキャロラインを見ちゃったら、もう何も言えなかったらしいわ。それにお兄様の言っていることは本当だもの。普通はああいう目に娘が遭っていとしたら、親として抗議しないと!知らなかった…では済まされないわよね?だから反省した公爵様は、すんなりと婚約をお許しになったよう。おまけに「娘を頼みます」と頭まで下げられたそうよ。だから…もうキャロラインは大丈夫!
あの執着系美男子のお兄様が付いていたら、もう断罪されることは絶対にないだろう。執着系…が気にならないこともないが、キャロラインは元々あれ程の孤独感に苛まれていた人だもの…あれくらいの大きな愛で、包まれるくらいが丁度いいのかも。そもそもお兄様は、攻略対象者ではない…この先何があったとしても、死ぬ気でキャロラインを守り抜くと思うわ!そしてそれが可能なのがお兄様という人だから…
「お嬢様、腰が痛くありませんか?もう馬車に乗り続けて二日です…明日はいくらなんでもルブランに着きますよね?」
ロッテがそう言いながら腰をさすさすしている。私達は今、ランドン伯爵家の領地ルブランに向けて馬車で進んでいる。あっという間に年末になり、学園は冬季休暇に入った。そしてこの冬季休暇…物凄く長い!何とその期間二ヶ月…だから私は親友達に暫しの別れを告げて、一度ルブランに帰ることにした。この機会を逃したら、遠くてなかなか帰れないからね…
そしてこの休暇が明けたら、例の卒業パーティーがあり、それから直ぐにお兄様達三年生は卒業になる。ということは…私達は二年生に!早い…早すぎるっ。こうやってあっという間に卒業になってしまうのかも?なんて思っちゃう。
だから親友達とのかけがえのない学園生活を、大事に送っていけたら…と改めて思っている。うわ!もう皆んなに会えない寂しさで、柄にもないことを考えちゃったわ!
「だけどね、ホントに皆に会えないのは寂しいわよね…それも二ヶ月も!」
車窓から移りゆく風景を眺めながら、思わずそう呟いてしまう。それにロッテは…
「お嬢様、私を是非ご友人達だと思って話し掛けて下さい。何役でもこなしますので!」
それはそれで怖いよね?ロッテが、キャロラインやアンドリューの口真似をするの?シュール!だけど一番怖いのは、何だかホントに出来そう…
「お嬢様、クッションをもう一つお使いになりますか?欲しいものがあれば何でもおっしゃって下さい」
そう言うロメオに「大丈夫よ、ありがとう」と伝える。今回の道行きは、執事のロメオも一緒だ。お父様に居ないと困るのでは?って聞いたんだけど、道中の安全には変えられないと、連れて行くようにと譲らなかったお父様。なにしろ移動に日数がかかるから…だけど明日にはルブランに着きそう。もう少しの辛抱だわ!
「だけどロメオさん。帝都に居なくて大丈夫なんですか?おまけに元騎士だといっても、この前の皇居の時だってお嬢様の近くにも行けなかったんですよね?だから今回は私だけでも大丈夫だと…」
ロメオに対して何故か、そんな嫌味を言うロッテ。恐らくロッテが言っているのは、スティーブ殿下と最後に温室で会った時のことだと思う。だけど皇居内を伯爵家の執事がウロウロする訳にもいかないって!確実に捕まるわ。だけどそれを聞いたロメオはキョトンとした顔をして…
「あれ…もしかしてお嬢様、私に気付いていませんでした?私も温室内で待機していたんですよ?」
「えーっ、うっそ~」
ロメオがあの温室に?と不思議に思う。私と殿下とお祖父様、そして給仕の従者しかいなかったと思うわよ?だけど私も不思議には思っていた。確か皇帝陛下は、私に護衛の者を付けるから安心して欲しいっておっしゃった。だけどいざ行ってみたら騎士など居なくて…お祖父様が一緒だからいいと思われたのかしら?って思ってたんだけど。それなのに違った…だったら何処に?
「聞いてらっしゃらなかったですか?そうなのか…温室内に植物が絡まった壁がありましたよね?あの壁実は二重になってるんです。その中に私と護衛の騎士が三人、控えておりました。そして薄っすらとお嬢様の姿も確認出来てて…おまけにその植物…蔦ですかね?あれを斬るとバタンと壁が倒れて、お嬢様達の目の前に出るそうですよ?」
──ヒッ!それは…皇居の重大な秘密なんじゃないの?それ聞いちゃったら消されちゃうんじゃ…命の危機なんだけど!
「そんなの知ってるわけないわよ!だけど私以外は知ってたのかも?」
ビビりまくる私にロメオは、ウンウン頷いている。そして…
「もちろん知ってらっしゃいますよ?知らなかったのはお嬢様だけですね。だから私…壁の中で殿下のお話に笑いを堪えるのが辛くて!護衛の人に睨まれちゃいましたよ~」
あれは大変だったかも知れない…私はビックリし過ぎて呆気に取られたけど、普通は笑っちゃうと思う。何だ~ならあの場所は物凄く安全だったんだ!と今更ながら納得する。刺客に狙われないのかしら?って思っちゃってたわ…
「だけどお祖父様も知ってたのなら、言ってくれれば良かったのに。やっぱり…知ったら命が危険?」
それにはロメオもロッテも、ウハハッと大笑いする。そんなに笑う?くそぅ…ロロコンビめぇ!
「アハハッ、お嬢様…それはちょっと~!おまけにそれを温室内に設計したのは、お嬢様のお従兄のディラン様ですよ?それも子供の頃だと聞いてます」
それには目が点に…そして想像してしまってワナワナ震える。
──だから、お兄様~怖いんだってー!もしかしてそこから、殿下とキャロラインを見張ってなかった!?
そんなふうにワイワイしながらもルブランへと近付く。そこであっと驚く出会いがあるなんて思わずに…
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