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35・逆襲

 何だかとってもきな臭い…そう感じる。そしてそれは、新たな皇族が誕生したこととも関係があるかも知れない。きっとスティーブ殿下は、自分の行動が廃嫡と隣り合わせなことまでは気付いていないだろう。自分の撒いた種とはいえ、皇帝陛下がそこまでの考えでいるとは…そしてルーシー。


 私がゲームの中で見ていたルーシーはテンプレのヒロインらしく、とびっきり可愛くて…ちょっぴりお馬鹿。だけど憎めないタイプで誰からも好かれる。そして自ら騒動に首を突っ込んで、持ち前の心根の良さとチャレンジ精神で、あっという間にそれを解決!だけど本当は、誰にも言えない悲しみを抱えていて…だからこそ相手に庇護欲を抱かせる。そんな人だったわよ?


 だけどこの世界のルーシーはどう?何かが違うような気がする。

 可愛いくてお馬鹿…は合ってるわね!もう少し頑張ってBクラスくらいにはいて欲しいけど?

 庇護欲を抱かせる…は、まあそうだと思う。だからこそ皆んながルーシーを守ろうと行動していたんだし。

 そして騒動に首を突っ込む?それはどうかな…それは少し意味合いが違うように感じる。騒動自体を引き起こしているのがルーシーでしょ!この違いは重要なのかも。そして…


 私がそんなゲームのヒロイン像とかけ離れていると感じるのは、()()()()好かれるってことだ。だってそうかしら?確かにその可愛さで、攻略対象以外にも好かれているかも知れない。だけどそれは男性限定で…だ。同性の令嬢達にも好かれてる?それはないように思う。私達のように明らかに嫌ってはいないだろうが、かと言って好きではないんだと感じるけど…。それを証拠に、同性の友達っているの?って思うけど…どう見てもいないわよね?


 ということは、必ずしも乙女ゲームと同じ展開になるとは限らないってこと。皆んなのアイドル的存在だった筈のルーシーは、一部の人達にモテていたってだけだ。それですらも今となっては怪しい…となると、反撃の余地があるかも知れないと考える。その僅かな希望を胸に、何とかキャロラインの断罪だけは阻止しなくては…


 

 +++++



 「ところでさ、例のパーティーの件だけどパートナーってどうするの?皆んなは誰を誘うのか決まってるの?」


 今はランチタイム!今日は珍しくアンドリューはおらず、女子会みたいになっている。お昼を食べ終えた私はここぞとばかりに、ずっと気になっていたことを聞いてみる。ダンスを踊ることを目的としたパーティーだ。それはあくまで学園内で開かれるパーティーで、皇居とかどこかの貴族の邸宅で開かれる本式なものとは違うだろう。だけど…必要になるのはパートナーでしょう?皆んなどうやって選んでるのかしら…


 「そうね…婚約してる人がいたら、もちろんその人がお相手だろうけど。私の場合は居ないから…誘ってくれた人?」


 クリスティーヌはそう言って普段通りにしてるけど…どうにも誘われる自信がありそうだ!そうよね…何てったってクールビューティーだから。クリスティーヌに憧れている令息達はいるわよね~ちょっと羨ましい。


 「パートナーは身内でもいいのよ?中等部の時はもちろん、アンドリューとだったけど…今回こそは違う人を狙うわ!」


 おっ!ブリジットの狩人宣言出ました!もう誰かに狙いを定めてる?どうぞ思い切って狩っちゃって~。でも一体、誰だろう?そして身内か…それだったらお兄様に頼む?だけど待って…あの完璧なお兄様に、パートナーが居ないと思う?そんな筈ない!容姿はもちろん、頭脳だってピカイチなのよ…いるでしょう?


 ぐああぁーっ、そうなるとどうすればいいんだろう?そしていくら何でもあり得ないと思うけど、フィリップから誘われたりしないよね?そんな都合の良いことを考えてしまう…


 「まあ、まだいいじゃない!そのうち誰かに誘われるかも知れないわよ?」


 そんなことある?とは思うが、そんなことを悩むのは確かにまだ早い。まず初級ダンスをマスターしてからだけどね!そりゃそうかーと気持ちを切り替えようとしていると、キャロラインの様子がどうもおかしい。それで心配して顔を覗き込むと…


 「私こそ、誰と踊ればいいのかしらね。殿下はもちろんルーシーとパートナーになるだろうし、妃に内定している身では、誰からも誘われないだろうし…」


 そうだ…キャロライン!私なんかよりよっぽど困った状況なんだわ。スティーブ殿下の婚約者という肩書がある以上、もしも誘いたいと思ってる人がいたとしても躊躇していまうだろう。おまけに学園に通う身内がいる訳でもないし…ああ、こんなことを言い出して失敗した~!


 「最終手段で私達、パートナーになりましょう!同性同士でパートナーになっちゃダメだって規則…ないわよね?それがいい!」


 そう言って拳を握る私に、唖然として見つめる皆が。それから…


 「ワハハッ!それはいいわね?最高だわ!私もそうしようかしら」


 「それいい!規則にはないもんね。それならアリシアが男性パートで決まりでしょ!早速アンドリューに習ったらいいわ~」


 クリスティーヌとブリジットはそう笑って、何とか重苦しい雰囲気を解消しようとする。それにキャロラインは…


 「うん!そうしましょう。私もアリシアと踊った方が、何倍…いいえ、数百倍楽しいわ!」


 そう言って明るい笑顔を見せる。それに私達はホッとする。もちろん全員がそれを冗談だと分かっているが、少しでも楽しく過ごしたくて…そして私は決めた。こんな状況をそのままにしておいて良い筈はない。近々皇帝陛下にお目にかかり、それを相談するべきだと。


 「さあさ、もう教室に戻らないと!午後からは化学か…面倒よね?そういえばアリシア、お手伝いしなきゃならないんじゃない?」


 「そうだった!忘れてたわ」


 それで慌ててカフェテリアを後にする。それにしてもランバート先生…いつまで私を、こき使うつもりかしら?

 そうブツブツ言いながら教室に向かうと、嫌な場面を見てしまうことになった。


 「あっ!早く自分の教室に戻ったらいいのに…」


 思わずクリスティーヌがそう呟いて前を見ると、廊下に例の二人が立っている。昼休みが終わっても離れ難いようだ。「次は合同の授業だからまた会えるでしょうに!」と、何だかとってもムカつく!そして私達は、それを極力見ないようにして、横を通り過ぎ教室へ入ろうとした。そこに…


 バタバタと足音を立てて、駆け足で教室に戻ろうとする令息達の一団が!次は移動教室なので急いでいるようだ。全く…危ないわね?と思いながら避けようとすると、その中の一人の令息がいきなり蹌踉(よろ)めく。


 「な、何?」


 そう驚く私は次の瞬間、隣にいた筈のキャロラインが突き飛ばされるのを見た…はあっ?

 そしてあろうことか、そこに居たルーシーとポンとぶつかる。キャロラインは何とかぶつかるまいとしたのだろう、ほんの少しルーシーに当たっただけで、その代わりに自身はバランスを崩して倒れてしまう…


 「だ、大丈夫?」


 私はサッと近付きキャロラインに声を掛ける…その時ふいに閃いた。あれ…この状況はいつものじゃない?逆パターンだけど。これもしかしてチャンスなんじゃないかしら…利用出来るわよね?


 そして私は、すうーっと勢いよく胸に空気を吸い込んだ!


 「きゃああーっ!キャロライン、大丈夫?」


 突然の私の大声にその場に居る人達は凍り付く。おまけに教室の中にいたクラスメイト達も、何事かと出て来て私達を見ている。しめしめ…

 そして私はキャロラインの身体を守るように抱えたまま、バッと顔を上げルーシーだけを見つめる。


 「ルーシー嬢、あなた…キャロラインに何てことをするのよ?」


 それにルーシーは、目を見開いて驚愕の表情をした…


 

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