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34・嵐の前の静けさ

 あれは一体、何だったんだろうと考える。虫の居所が悪かった?それともあれがルーシーの本性だったりして?結局は分からない。何故ああ言ったのかさえも…

 それからは何故か隣同士で授業を受けることもなく、避けている訳でもないのに関わることもなくレッスンは進んで…


 「それでどうなの?少しはダンス、上達した?」


 キャロラインが心配そうに私の顔を覗き込んでいる。それにブンブン頷いてチラッとアンドリューを見る。


 「まあ、そこそこね。でもアンドリューのおかげで、少しは見れるようになったと思う。あともう少し…って感じかな?」


 それにキャロラインはホッとしたような顔になった。だって今のところそのパーティーに、参加出来るかどうかの瀬戸際なのは私だけ。ある程度までのレベルに達していないと、参加出来なくなるのだ。正確には()()()()()()は可能だけど、壁の花決定なんだよね…それは令嬢として恥ずべきことよね?だから初級クラスの生徒達は必死の形相で頑張ってます!


 「まあ、ある程度見れるようにはなったよな?最初は下手過ぎて笑っちゃったけどよ~」


 アンドリューがいつもの憎まれ口を言ったところで、ブリジットからキッと睨まれる。私はあれからずっと、毎週末にスコット邸に通いダンスの特訓を受けている。それはアンドリューだけじゃなく、二人のお兄様であるロベルト様にもお手伝いいただいているんだけど…これが実は、揉める元だったの…

 

 だって実践が大事じゃない?アンドリューは私と余り背が変わらない。だからパートナーとの体型の違いっていうのかしら?動きのタイミングを掴む為に、背の高い人と踊ってみたいと思ってロベルト様に頼んでみたんだけど…それにはアンドリューを、大いに傷付けてしまったようで…暫く口きいて貰えなかったよね~


 何だろう?友達を取られるような感覚なのかしら。だけどロベルト様とは年も違い過ぎるし、仲良くなれても友達というには難しいと思うけど?ただの焼きもち?まさかね…


 そして余談なんだけど、この兄弟は本当にそっくり!だけど大人のロベルト様には少女っぽさは皆無で…これはもしかするとアンドリューもいずれこうなる?ずっと可愛いままでいて欲しい気もするけど…ふっくらとした頬がいつの間にかキリッとした輪郭に変化して、愛らしい眼差しは色気のある切れ長に…これは見たい!そしてその変化はもう遠くはないのだろう。来年の今頃には、そう近付いているのだろうな?

 

 そんなことを思っていたら、気付かないうちに声に出していた私…わっ!恥ずかしい~ってその時は思ったけど、何故かそれを聞いたアンドリューは機嫌を直して。男心はホント難しいわね?

 そして何とか壁の花回避に向けて、もっと練習しなきゃ!



 +++++



 それから一ヶ月後…


 ついにアイツがこの学園に戻ってくる…もちろんアイツとは皇太子殿下のことだけど、少しは反省してるのかしら?なんだか怪しい…

 それにしても相当謹慎が長引いたわね?私としては休暇明けて暫くで、登校すると予想していた。皇后陛下が皇女様をお産みになったことと、関係があるのかしら?初めての女のお子様の御誕生で、国をあげての慶事となった。皇帝陛下はさぞかしお喜びだろう!あれ以来お会いしていないけど(報告することがないので)、御祝いを申し上げたいし近々お伺い出来たら…と思っている。

 そう思いながら学園に登校して来た私は、早速その影響を目の当たりにすることになる…


 私が階段を昇って教室に近付くと、何やらとっても騒がしい。一体何が?と訝しげに教室の中へと入ると…ルーシーが床に倒れて泣きじゃくっている。


 ──えっ…久しぶり!この光景…


 こんな場面を見るのは最近なかった私は、まずそう思ってしまった。そしてその先を見ると、呆然としてルーシーを見つめるキャロラインが!そしてその傍らには…私の天敵の皇太子殿下がいる。

 そんな入学した頃にタイムスリップしたような状況に、クラスメイト達もざわざわとして…そこに突然、甲高い声が響く。


 「今のは違うんじゃないのかな?キャロラインがルーシーに当たったんじゃなくて、逆に見えたけど。違う?」


 ──ア、アンドリュー…あなた!


 まるで私のお株を奪うようなその発言には非常に驚いた。それにかつて恋焦がれていたルーシーに対して、そう毅然として立ち向かうアンドリュー。すると…


 「何だ、アンドリュー。お前には関係ないだろう?早くBクラスに戻るがいい」


 戻って来たスティーブ殿下は、いっそ清々しいくらいに変わってはいなかった。反省しているどころか、意見をしたアンドリューにそんなことを言う始末だ。そこに…


 「それは聞き捨てなりませんね?私も見ました!当たったのはルーシー嬢の方です。弟の言っていることは間違ってませんわ!」


 「そうですわ!私達が楽しく話をしていたところに、バーモント令嬢が近付いて来たんじゃありませんか!それなのにどうしてキャロラインのせいだと?」


 ──ブリジットに、クリスティーヌも!

 

 こんな時だが、私は感動していた。今までは私がキャロラインを庇うというのがお決まりだった。それなのに…あなたたち~大好き!


 その三人の剣幕と変化に、殿下とルーシーはたじろいでいる。それから三人はキャロラインに声を掛け、守るように自分達の後ろへと移動させる。そして臆することなく二人と目を合わせて対峙する。するとルーシーは悔し紛れに「もういいわ!」と捨て台詞を残しAクラスを出て行った。それを追いかけて行くスティーブ殿下。

 あの子…何しに来たの?そんな空気がクラスメイト達にも漂う。


 仲間の勇気と友情…それに胸アツな私は思う、いつまでも同じやり方が通用すると思ったら、大間違いなのよ?と。

 だけど今回のことで一つ疑問が湧く。スティーブ殿下とルーシー、二人は気持ちを固めた筈…もしも正式に付き合いたいのなら、皇帝陛下やキャロラインに頭を下げて婚約解消をお願いするべきよ!それを何故しないの?


 確かにそれは簡単なことではないだろう…キャロラインの時間を無駄に奪った補償もあるべきだと思うし…それは陛下だってお考えになっていると思う。


 それから考えてしまったのは、悪い方…キャロラインのせいにして婚約破棄することだ。それを実行しようとして、画策したのがさっきの出来事だったとしたら…


 『断罪』その言葉が、頭に浮かんでは消える。今までのキャロラインへの嫌がらせは、ルーシーの考えだけでやっていたように思う。殿下をキャロラインから奪いたかったから…それがこれからは違うのね?


 そう思って私は、少し離れたところから笑っている親友達を見つめる。あの笑顔を守ろう!そしてあの二人に打ち勝つには、私も本気にならなくてはならないと…

 

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