表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/96

31・盛り沢山のお茶会

 目の前には親友達の気遣いのおかげで、それこそ食べ切れないくらいの大量のお茶菓子が!ケーキにクッキー、そしてマドレーヌにおまけにマシュマロ?なんだか食べ放題みたいね?


 「それでね、アリシア…聞いてる?私達ビックリしちゃって。だってあなたが皇居で倒れたって聞いて…学園でも大騒ぎだったのよ?おまけに皇太子殿下もそれ以降学園には来ないし…。それで凄い憶測が飛び交ったのよ!」


 ブリジットが目を丸くしながらそう言うが、凄い憶測?それを聞くのも恐ろしい!それに真実を話して良いものか…と迷う。

 お父様が言うには、皇帝陛下は箝口令(かんこうれい)を敷くことは無かったそうだ。息子であるスティーブ殿下の責任である今回のこと、一方的に言わないように命令するには、事が大きくなり過ぎたと思われたようだ。そしてそれを私にまで強制するのは、言語道断だと思われたらしい。だからその経緯を話したとしても悪い訳ではない…かと言って、それを広めようとも思わないけど…。だけど気の置けない親友達プラス1(ロブ)のこと…正直に言って大丈夫だよね?と判断する。


 「あのね、私ある事で皇帝陛下から呼び出されたのよ。それをね殿下は、陛下に告げ口しに来たのだと誤解したの。もちろん私は事実しかお話ししてないわよ?そしてその後薔薇園を見せていただいて、そこでスティーブ殿下とばったり会ったんだけど…」


 皇帝陛下から依頼された内容までは話せない!そこのところは濁しておいて、殿下とどうして会うことになったかを説明した。今となっては偶然に会ったとは思えないけど…きっと私が帰るタイミングを見計らって、現れたのだと思う。


 「そうね、アリシアは皇帝陛下に命を救っていただいたのだものね。それで呼び出されたとしても不思議はないわ。それをスティーブ殿下が誤解を…それで?」


 これもまた定かではないけれど、皇帝陛下からの依頼を知っているのかも知れないキャロライン。皇居に行くことになった経緯を上手く誤魔化してくれた。ナイスアシストよ~!

 それから私は、この事件の肝心の部分を話し出す。


 「それでカーテシーでご挨拶したの。だって学園内じゃなくて皇居でしょ?正式にと思って。そしたら…何時まで待ってもお声を掛けられ無かったってわけ。そうね…15分くらい経った後は、もう覚えてないわ!20分近かったのかしら?そのくらいの時間、そのままの姿勢で立たされたままだったの…」


 ──ガタリッ!


 それには思わず皆んなは、ショックで立ち上がろうとする。信じられない!と愕然としながら…


 「嘘でしょう?こんな暑い時期なのよ…屋外で、この炎天下の中で20分近くですってー!」


「正気か!あいつ…アリシアがそんな酷い目に!?」


 キャロラインとアンドリューがそう叫んで憤る。その他の面々は驚き過ぎて言葉にならないようだった。そして、この人も…


 「それは酷過ぎませんか?皇太子殿下がそんな方だったとは!そういえばあの時もそうでしたよね?アリシア様に対して、決めつけるような発言を…」


 フィリップ~!それは言っちゃいけないのよ…ここでその事を知っているのは、あなたとロブだけなのに。おまけにロメオも、それは何だ?と身を乗り出している。そう言えはロメオ…何故ここにいるの?男女二人だけじゃないのに…


 「それは聞き捨てならない!」✕4プラスロメオ!


 そこで仕方なく例の私の暴言事件を告白することになった。あれなかなかに恥ずかしいことだし、黙っておこうと思ってたんだけど…そしてその時、フィリップとロブに助けられたことも説明する。


 「ちょっとお嬢様!気持ちは分かりますけど、それはちょっと~」


 誰よりも早くそう反応したのはロメオ。だから何で居るんだって!?


 「そうそう!あなた一歩間違えれば退学よ?ホント向こう見ずなんだから~」


 「すげぇな!お前~怖い物なしにも程があるな?」


 クリスティーヌやアンドリューもそう言って心配し、皆はそれに驚きウンウン頷いている。だけどこの中で反応の違う人が一人…えぇっ!


 「グスッ…アリシア、わ、私の為なんだったら、止めてちょうだい!あなたが…いなくなったら私…うわぁーん!」


 そう言ってキャロラインは大粒の涙を溢す…

 びっくりした!スティーブ殿下やルーシーから、今までどんな嫌味を言われようとも、これ程に泣くことなんか無かったキャロライン。これには私も流石に反省する。こうやって悲しませてしまうところだったんだなぁ…と。私は席を立ち、そっと近付いた…そして涙が止まらないキャロラインを抱き締める。


 「ゴメンね…キャロライン。だって私、本当に腹が立ったの。あの人達あなたが優しいことをいいことに、お構い無しで…」


 そう言って背中をヨシヨシしながら、それからヒョイと手を出す。そこにロメオがシュタッと近付き、手の上にハンカチを置く。それで親友の頬を濡らす涙をふき取った…もしかしてこの為にいたの!ロメオ?


 「ちょっと!泣かせるじゃないのよ。でもその場面、私も見たかったわ~。そして、どうりで殿下とルーシーが堂々としていたのか分かったわ…そういうことだったんだ」


 ブリジットは苦い顔をして、そう納得している。あの一件を知らないカフェテリアにいた人達は、急に二人が仲を隠さなくなって戸惑ったに違いない。実は私のしたことで、二人の仲がより深まったとは思わないものね…反省!


 「さあさ、皆んなお茶でも飲みましょう?お菓子もこんなに沢山あるんだから。フィリップも遠慮なくね!」


 それから私達は、私がいない間の学園のことを話したりして、お茶会を始める。気の置けない者同士、細かな作法は完全無視して、思い思いに食べたり飲んだりした。それからカーテシーチャレンジ!なるものが始まり、誰がそのままで長く居られるかの謎の我慢比べをやり出した。あんた達…人の不幸をそんなネタのように~!そうは思うが、楽しそうなのでまあ、いいか!そして優勝は何と…アンドリュー!やっぱり女子力高いわね~


 ホントはフィリップと二人だけの甘~いお茶会だった筈が、こんなに賑やかな会になってしまったが、これはこれで良いとしましょう!

 そう思ってふと見ると、ロブだけが一人真顔でソファに座っている。皆んなカーテシーチャレンジ!第二戦を楽しんでいるけど?…ノリについていけないのかしら?そう心配して近付くと…


 「アリシア、今日は俺まで来てゴメンな。俺もあれから色々と考えさせられて…落ち込んでた。それで皆んなで過ごしたいって思って…」


 そう言ってちょっと悲しそうな顔をするロブ。これはもしかして何かあった?と感じて、思い切って聞いてみることにした。


 「もしかして今日来たのは、私に何か話したいことがあったんじゃない。違う?」


 それに動揺したように、口元を震わせるロブ。私はやっぱりそうだったんだ…と思った。だけど無理に言わなくてもいいのよ?と言おうとした時、いきなりロブが堰を切ったように口を開く。


 「流石アリシアだね…誤魔化せないよ。君と婚約を解消して直ぐ、俺はルーシーに好きだと告白したんだ!もちろん断られるのは分かってた。それでも君にまで迷惑を掛けたんだ…だから言うだけ言ってみようって。そしたら笑い飛ばされたよ…あなたが私に?とか言われて。それから直ぐにあの二人は付き合い始めた。おまけにこれからは近付かないように言われたんだ…ルーシーに」


 はああっ?殿下とルーシーが付き合い始めたから、ロブには近付くなって?そしてあの中庭の様子から、それはニクソンにも適用されているんだろう。だけどそれって、何だか違くない?いくら何でも失礼だと思うんだけど…元は仲の良い友達だったのよ?おまけに何度となく助けられているくせに…


 そして私は、なんだか空恐ろしさを感じた。ルーシーは、自分を守りたい程に好きだと言ってくれる人を笑い飛ばし、そんなに容易く切り捨てられる人間なんだと。おまけに確か、ニクソンはお馴染みだったはずよね…それなのにそこまで非情になれるもの?

 


気に入っていただけたらブックマーク、下の評価をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ