30・フィリップとのお茶会?
私は朝から落ち着かなかった…だってフィリップが来るから!きっと皇居でのことを聞いて、心配しているに違いない。そして私の口からは詳しくは言えないけど、言える範囲でなら…と思っていた。そしてメイド達が屋敷中をピカピカにしてくれて、コック長は美味しそうなチーズケーキを焼いてくれて…準備は万全よ~!そしてフィリップの到着を、今か今かと待っている。
すると…物凄く大きな馬車がこちらへ向かって来る。それには辺境伯家の馬車って、あんなに大きいの?と驚いた!仰々しいくらいの四頭引きの馬車に、あれに一人で乗っているんだとしたら、皇帝陛下も真っ青じゃなくて?
不謹慎にもそう思ってしまったが、ロード辺境伯家はなかなかに資産家のようだ。その巨大な馬車がランドン邸の真ん前にスッと止まり、そして御者が颯爽と降りステップ台を用意している。それから扉を開けようとして…その時、ちょっと違和感が。
──扉に付いている家紋だけど…ロード家って大鹿だったっけ?
見ると、立派な角を持つ鹿が彫り込まている。うーん…二頭の鷲とかじゃなかったかなぁ?そんなふうに不思議に思っていると…
「アリシア!来たわよ~」
「ここアリシアん家?初めて見るけど立派だな~」
あれ…?あの可愛い双子は!
「人の家の前で騒いじゃダメよ。ああ…これ重い~」
何だか大っきな箱を持ったクリスティーヌ!
「しーっ!内緒で来たんだから、静かにしてよ~」
キャロラインまで!全然サプライズになってませんけど?
「ハハッ…ハハ…」
フィリップ様!だけど…何だかとっても疲れているようね?苦笑いしてるわ…今回誘ったのは、あなただけだったのに。だけどそれで終わらなかった…その後馬車から降りて来た人には、目が点になる…
「俺はこちらは二回目だ。前の時は迷惑を掛けてしまったけど…」
ロ、ロブ?どうしてあなたが!?何だか今日、盛り沢山ね?
そしてこれで違和感の正体が分かった!この巨大な馬車は、アロワ公爵家のものなんだと。それにしてもデッカイわね?大の大人が六人も乗ってる~。維持費大変そう…
「何よ~皆んな!連絡なしに来ちゃってさぁ」
行儀が悪いが、玄関の窓から覗いていた私。そして親友達の登場に我慢出来なくて、家から出て来てしまった。それに「わぁーアリシア!」「大丈夫?痩せたわね」とか言いながら一斉に抱き着いてくる。さ、騒しい…
「さあ、こんなことろで何だから入って、入って!」
そう促すとぞろぞろと皆は入って行く…そこに残った、今回の真の主役!
「すみません…迷惑じゃなかったですか?フィリップ様」
私達のテンションに、大分戸惑った様子だったフィリップ様。だけど優しい笑みを浮かべて…
「大丈夫ですよ!賑やかで楽しいです。それに…元々私が、アリシア様の体調を知りたくて、お声をかけさせていただいたんです。予定通り行っていいものかと迷って…そしたら皆さん、一緒に行きたいと!」
なるほど…それは申し訳ない!予定通りで大丈夫だと、手紙を送るべきだったなぁと反省する。
「それは本当にごめんなさい!心配をかけてしまいましたね。さあ、フィリップ様もこちらにどうぞ!」
「大丈夫ですよ。はい!お邪魔致します」
そう声を掛けて二人でランドン邸に入ると、もう既に入っていた親友達のおかげで、使用人達はてんやわんやになっていた!そりゃそうよね?今日はフィリップ様一人だけが来るんだと聞かされていたから…それがこんなに大所帯!落ち着けっていうのが無理だわ…そこに執事のロメオが、一瞬だけロブを睨んでから(おいおい!)焦った顔をしながら近付いて来る。
「お嬢様、どうしましょう?お、お茶菓子が…足りないかと」
そうだ!たった一人のお客様だと聞いていたコック長。少し多めに用意はしてあっただろうが、これ程の人数分とは考えてもいなかっただろう。それには困った…買って来て貰おうか?そう思っていると…
「大丈夫よアリシア。これ見て!昨日キャロラインと一緒に買って来たの。お茶菓子持参して来たから~」
そう言うクリスティーヌを見ると、さっき重いと言ってた大きな箱が!二人で買って持参してきたの?
「そうそう!僕だって趣味で焼いたキャロットケーキ持って来たけど?」
「そうなの!アンドリューってなかなか上手なのよ?」
えっ…アンドリューって、可愛いだけじゃなく料理系男子でもある訳?やだぁ〜最強じゃないの!だけどブリジットはやらないのね…
だけどそれで安心した!これなら無事にお茶の用意が出来そうだ。ロメオやメイド達がお礼を言いながらそれを受け取って「用意して参りますので客間の方に」と案内している。私もそれに続こうと歩き出すと…バサリと目の前には大きな花束が!それにビックリして振り返ると…フ、フィリップ様?
毎度お馴染みのはにかんだ笑顔のフィリップが…。向日葵や薔薇、そして前も貰ったカサブランカを色とりどりの花束にして持って来てくれたようだ。
「こちらをどうぞ!アリシア様。毎回花束なんて芸がないかと迷ったのですが…喜んでくれますか?」
──ド、ドッキューン!駄目だわ…胸がドキドキよ?おまけにこの笑顔の破壊力はヤバい!
そう内心バックバク!だったが、それを何とか隠して花束を受け取る。そして「とっても嬉しいです!」と笑顔も返して…
「んん、お取り込み中だけど…行くぞ!」
──バシッ!
「邪魔しないの!あんたねぇ~」
これも毎度お馴染みの双子の喧嘩が始まって、いい雰囲気台無し!だけどフッと息を吐いて、皆んなが来てくれて嬉しいからいっか!と笑いながら客間へと向かう。
だけどどうなる?この大人数のお茶会は…おまけにロブって、何しに来たのよ?まさか従兄弟の付き添い…じゃないわよね?
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