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22・ルート確定?

 私は今、この学園に来てから最大のピンチを迎えている。大勢からの厳しい視線に晒され、流石の私も身も凍る思いだ…自分の撒いた種とはいえ、間違ったことを言った訳でもないのに、どうしてこれほど責められなければならないんだろう?そしてこの窮地から、逃れる術はないんだろうか…



 ──その半刻ほど前…


 この前から、ちょっとだけフワフワしている。それが何故かというのは…やっぱりフィリップと会ったからだろうな。だけど好き?と聞かれたら、まだよく分からない。どちらかというと、懐かしさが勝っているのかな?だって彼は、ずっと私の心の支えだったから…


 今でこそ私は、好きなことをしたり、大好きな親友達と過ごしたりして『今』を満喫出来ている。そんな幸せは…前世を含めてもほんの少しの人生だった。そんな私は、今そう出来ていることに胸が一杯で、これ以上考える余裕がないと思うのだ…そしてそれは一旦心に蓋をして、ゆっくり育んでいけばいいんじゃないかな?今は…


 

 「あらっ?私、お財布を持ってくるの忘れちゃった!教室に取りに戻るから、皆んなは先に行ってて~」


 今はお待ちかねのランチタイム!そんなことを考えて黄昏ていた私は、うっかり財布を忘れてしまう。それで教室まで取りに戻ろうとしている。


 「分かったわ。情報によると今日のサービスランチはハンバーグよ!だから無くなる前に注文しなきゃね。良い席取っておくから早くね~」


 「全く…相変わらずそそっかしいな?早く取ってこいよ!だけど僕が貸してやろうか?」


 そんな声に「すぐ取ってくるから大丈夫~」と返したけど…また出た!アンドリューだ。

 なんだかんだ言いながら、最近アンドリューとも一緒にお昼をとっている。一時兄妹喧嘩勃発中だったが、それから仲直りしたらしくて最近は一緒にいることが増えてるようだ。それはいいことなんだけど…気になるのは、ルーシーのことはもういいのかしら?ってこと。あれだけルーシーに御執心だったアンドリューが、最近何故か一緒にいないよう。喧嘩でもした?


 あのスティーブ殿下をはじめとするグループに、何か変化があったのかも知れないと、クリスティーヌが推理していたけど…変化ってどんな?

 多少気になる感じだけど、まあ、邪魔になる訳じゃないからいっか!それにしてもアンドリュー…Bクラスに友達いないのかしら?なんだか不憫…

 

 それで私は「直ぐに行くからね~」と手を振って、急いで教室へと戻る。早くランチ食べたいのに、かなり時間のロスになってしまうかも?と慌てて校舎に入って階段を昇る。そして二階の一番端にある、Aクラスの教室に入った。


 すると…いつもは何組かいる筈のクラスメイト達がいない。今日は誰も教室を利用していないよう…珍しいわね?人っ子一人いない静まり返った教室を初めて経験した私は、なんだか違う世界に迷いこんだような気がして…


 そのまま暫くぼうっとしてしまったが「あっ!早くしないと」と気付いて、教室の後ろのロッカーから財布を取り出した。それから戻ろうと振り向くと、聞き覚えのある甲高い声が耳に響いて… 

 一体どこから?そう思ってキョロキョロすると、どうも開け放たれている窓の下から聞こえるようだった。それで好奇心でそっと覗くと…やっぱりそうだ!


 教室の真下にある木のところで、スティーブ殿下とルーシーが何やらキャッキャやっている。普段はそんなところにはおらず、専用のサロンで仲間と供に昼食を取っていると聞いていた。なのに何故?サロンには行かないのだろうか…


 それに何を?と目を凝らして見ると、どうもルーシーがお弁当を用意して来たようで、それを見ながら楽しげにお喋りしている。いつも専用サロンで食べるんじゃないの?そう思って中庭を見渡すと、大勢の生徒達がベンチでお弁当を食べたり、敷物を敷いて寛いだりしている。そうか…今日は天気が良いから!それで教室に誰もいなかったんだと、思い当たる。それなら、殿下達も中庭で食べようと?だけど…


 二人きりというのが気にかかり、私はその付近を見渡した。すると、殿下とルーシーとは少し離れたところにロブとニクソンが立っている。何故そんなに離れて?そう不思議に思っていると…ロブとニクソンは、苦虫を噛み潰したような表情をしている。


 「あれっ?もしかして、喧嘩?あの二人も、スティーブ殿下と喧嘩することなんてあるのかしら?珍しい…」


 いつも殿下とルーシーを中心とした、ロブとニクソン、そしてかつてはアンドリューも含めたグループが出来上がっていた。そんなあの人達が、ランチタイムだというのに一緒にいない。正確には近くに立っているのだが、それを肝心の殿下とルーシーは全く気にしているような様子もないのだ。普通ならば、一緒に食べようと誘うんじゃあ…そう思った時、クリスティーヌが言ったことを思い出す。あのグループに変化があったのかも知れないと。うん?何だか、嫌な予感がする…

 

 木の下のベンチには、ルーシーと殿下が二人きり。そして少し離れたところにいるのは、ロブとそしてルーシーの幼馴染だというニクソンだ。アンドリューは最近私達と一緒だし、ランバート先生に至っては、攻略がスタートしているとさえ思えない!それにアンドリューは、ワザと二人と離れているように思える。し、失恋なの…?


 ──考えるのも嫌だけど、スティーブ殿下とルーシーが正式に二人で付き合いだしたんじゃないよね?


 そう思ってしまって愕然とする。だけどそれには物申したい!それなら先に、キャロラインとの婚約を解消すべきだよね?今まで腹を立てながらもあいつらを許せたのは、ヒロインとそれに惹かれた男達という構図だったから!

 明らかに皆んなルーシーのことを好きなのは分かっているが、それでもグループで行動していた。そしてまたそれは、『二人で付き合ってる訳じゃない』という逃げ道だったはずなのに…ルーシーは完全に、殿下ルートに狙いを定めた?


 「な、なんてこと!まだ、高等部が始まったばかりのこのタイミングで?それならあの二人の行動は既に、完全に不貞行為なんじゃないの!」


 そして私は再び、ロブとニクソンに目を向けた。二人は相変わらず、愛しいルーシーと殿下の楽しそうな様子を見ながら苦しそうな顔をしている。

 

 「ハハハ…ロブ、情けないわね?せっかく私との婚約を解消したのに、あなたそんなところで見ているだけで良い訳?」


 思わずそう呟いてしまう。ロブという人は、誠実さに欠けるが、根っから卑怯者という訳でもない。だから何だか物悲しい気持ちになってしまった…。『守りたい!』と言った相手は違うルートに行ってしまったのね?だけどそうなると、殿下の廃嫡は免れなくなる…それでいいんだろうか?



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