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【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに恋も叶えちゃいます!  作者: MEIKO
第二章・学園生活が幕を開ける

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10・怪しい言い訳

 目の前の皇太子殿下は、またこの令嬢か!?と言わんばかりに顔を(しか)めている。それから斜め方向に身体を向け、ハァ…と溜息を吐いた。それから、仕方ないな…と言わんばかりに嫌な顔をしたまま私の方へと向き直す。


 「また君だね?確かランドン令嬢。私だってよく分からないが、こちらのルーシーがキャロラインから嫌がらせをされて泣き出したのだ。それを諫めようとしている」


 見れば、ピンク頭が真っ赤な顔をして泣いている。だけどキャロラインはといえば、何も言わずその隣で呆然とされているだけ…。

 またそんな状況だけで…決めつけてらっしゃる?


 「よく分からないのですよね?」


 「な、何?」


 「だからよく分からないのに、そう決めつけているのかと聞いているのです。そして皇太子殿下は、キャロラインがこちらの令嬢に何かをした場面など見ていない…そうですよね?」


 「そ、そうなるな…」


 皇太子殿下と私、こんなやり取りが繰り広げられる。案の定といえばそうなんだけど、この人はそもそも何故、こうなったのかを聞かないの?呆れ返った私は、今度はそのルーシーと呼ばれる令嬢をじっと見る。


 「ピンク髪のご令嬢、そうなのですか?あなたはキャロライン様から、嫌がらせをされたとおっしゃるのですか?」


 「ピ、ピンク?」


 ピンク頭はもうとっくに涙は引っ込み、私からそう言われたことにキョトンとしている。そして思い出したようにウルウルと瞳を潤ませながら私を見る。何よ…ピンクって言ったのが不満なの?


 「申し訳ありませんが、お名前を存じておりません。クラスも違いますしね?ですからそうお呼びしました。気に障ったのなら大変申し訳ありません。それでどうなのです?」


 今度は私がキョトンとピンク頭を見る番だ。再度問われた途端に、その令嬢は挙動不審になる。


 「こちらはバーモント子爵家の、ルーシー嬢だ。同じ一年生の名前など、君なら直ぐ覚えられる筈だろ?全く…」


 横から皇太子殿下が、少し苛つきながらそう紹介してくれる。別に聞いてませんけど?そうは思うが、ルーシー・バーモントね、はいはい!と心の中で呟いた。それから「ご丁寧にどうも…」と殿下に対して頭を下げる。それからバーモント嬢に向き直すと、私としっかりと目が合う。うん…反論か!?


 「私がキャロライン様の隣を通った瞬間、突然強い痛みが走ったのです。それであまりの衝撃に転んでしまって…。確かにその場面は見てはいませんが、そこに居たのはキャロライン様ただお一人なのです。それは間違いありません!」


 それに私は、なるほどね…と頷いた。なるほどそういう訳があって、そうなったのか…と。そして一方だけの言い分を聞くのは不公平だと、今度はキャロラインに聞くことにする。


 「それではキャロライン様、それに何か身に覚えはありまして?バーモント令嬢は、そうおっしゃってますが」


 それにはキャロラインの顔は青ざめ、否定の意味だろう勢いよく頭を振った。そして…


 「わたくしは無実です!ルーシー様が何を根拠にそうおっしゃっているのか、皆目見当もつきません。何もしていないのに、何故そのようなことが?」


 そう切実に訴えてくる。その強い視線は、私に信じて欲しい!と言っているようで…

 それに私は『分かってます』と伝えるように、ゆっくりと一度瞬きをする。

 

 この場にいる全てのクラスメイト達は、どうなるのかと固唾を呑んで見守っている。本来場を仕切るべきのランバート先生は、オドオドして遠巻きに見ているだけだ。その姿を見て呆れるが、全く役に立ちそうにもないので放っておく。そして…


 「まずはバーモント令嬢、それは驚かれたことでしょう。一応この授業の後、保健室で手当てをされることをお勧め致しますわ」


 私が急にトーンダウンしたことに安心したのか、先ほどまでの挑むような視線を緩めて微笑むバーモント嬢。そして隣の取り巻き連中にも笑顔を振り撒いて、嬉しそうにしている。それを見ていたキャロラインは、絶望したように顔を伏せ、微かに身体を震わせる。それは見ていても痛々しいものだった。そんな対照的な二人を見比べて私は思う…だけどね、バーモント嬢…安心するのは早いんじゃないかしら?


 「ところでバーモント嬢、あなたこの実験何をやっているのかご存知?わざわざこの実験室に集まってるのだけど…聞いてらっしゃったのかしら?」


 安心したのも束の間、まさかそんなことを言われるとは思ってみなかった様子のバーモント嬢。そして思った通り知らないのか、目を激しく泳がせている。そして取り巻きの一人に目で訴えかけるも、その人も分からないようで…


 「な、何の実験?そ、それは…」


 案の定、全然お話にならない。だからCクラスなのね?と納得がいく。そんな様子だが畳み掛けるように、もう一つ肝心なことを聞く。


 「それに不思議なのは、実験中だというのにどうして動き回ってらっしゃるの?あなたのいるべき場所は、あの端のテーブルではなくて?」


 そして私はこの実験室の一番後ろで端、出入り口間近のテーブルを指差す。それにはクラスメイト達も、同じくそのテーブルにと目をやった。

 

 この実験室に生徒達は、Aクラスから成績順に前から詰めて座っていた。9つあるテーブルが3つ横並びにあり、それが三列になっている。一番前の3つのテーブルはAクラスの生徒が。そして真ん中はB、そして一番後ろのテーブルはCだ。おまけに実験に使用される教室だけあって、安全の為に大きく間を空けて配置されている。

 そして今バーモント嬢がいるのは一番前、それも窓側の端ということは、自分とは一番かけ離れているテーブルにいることになる。


 「これって…何故なのかしらね?」


 そう言って私は、悠然と微笑む。

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