0.あれから
一部に未成年の喫煙、運転などの描写がありますが当作品はフィクションです
かつて人や車が行き交っていた場所を今はバイク1台だけが走っている。
そのバイクには若い男女が2人乗っている。
どちらも見た目は十代の若い男女だ。
人が整備しなくなった道をバイクを運転している男はまるで勝手知ったる場所のように苦もなくバイクを走らせる。
「、、、、、」
「、、、、、」
男女はとくに会話をする様子もなくただ流れる景色を見ている。
失った何かを思い出すように懐かしいあの日を思い出すようにあの日突如として始まったどうしようもない避けようもないあの日々を思い出すように。
「なぁ?」
「、、、、、、、何?」
長い沈黙の中で男の方が口を開き後にいる女に話しかけた。
聞こえないふりもできたがあえて女は返事をした。
「、、、"あれ"からどれくらい経った?」
「、、、、、知らない、途中から数えるの面倒になったし」
「だよな〜、俺も途中からやめたし」
男は女がため息混じりに答えるのを分かっていたようで男も女と同じ事を前を見つめながら呟いた。
そこからまたお互いにとくに会話もなくただ景色が流れていくのを見つめている。
「、、、あのさ」
「ん〜?」
今度は女の方が口を開いた。
「、、、、後悔してる?」
「、、、、、、してないと言えば嘘になるな」
「、、、、、だよね」
「あぁ」
嘘になると言った男はバイクの速度を先ほどより上げた。
突然、バイクの速度が上がった事に驚いた女は元から男の腰の辺りに回していた腕を先程より力をこめて男に掴まった。
「ちょっと、、、、」
「悪い、悪い」
「転んだらどうするのよ」
「大丈夫、大丈夫、、、、それに俺達はそう簡単に"死なない"もしくは"死んでも死ねない"だろ?」
「、、、、確かにそうだけど、、」
「ま、"確かな殺意"なら俺達は死ぬけどな」
「、、、、"確かな殺意"ね、、、、」
ため息混じりに女は呟くと目線を町の景色から上に向けた。
見上げた空はただ流れる雲と青い色が広がっている。
そんな空を睨みつけるように見上げていた女は視線をもとの見ていた景色に戻す。
その気配を後に感じながらゆっくりと口を開いた。
「俺達の今の状態は本当はお前だけになるはずだった」
「、、、、、、、、」
「けど、俺は納得しなかった」
「、、、、、まさか、あの場所に無理やり乗り込んでくるとは思わなかった」
「嫌な予感はしてたからな」
「、、、、、、」
「敵同士だったのにな」
「、、、本当にね」
「ま!俺がお前に惚れちまったんだから仕方ない!」
「、、アンタ、、そう言う恥ずかしいセリフを、、」
「ん?」
「、、はぁ、なんでもない」
女はため息をついてまた空を睨みつけながら見上げて呟いた。
「いつか必ずアイツの息の根を止めてやる」
「左に同じ」
それは突然だった。
なんの予兆もなかった世界が突然、真っ白になるとか揺れるとかそんなのは一切なかった。
ただ、瞬きした瞬間もしくは携帯から本から目線を上げた瞬間。
人が消えたこの世界の17歳以上の人達が突然、消えた。
世界に16歳以下の子供だけを残して。
読んでいただき、ありがとうございます。