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 拠点であるヴァルキリアを離れ、アモク狩りは始まった。


「狩りっていうと、なんていうかこう、狩りゲーみたいな想像するな」

「そんな生易しい世界じゃねぇよ。ゲーム感覚で挑むな。時に絶対に逆らえない流れがある。集中力を切らすな」

「へいほー」

「今のあたしは、登山舐めてる軽装のやつと一緒にエベレストの中腹を歩いている気持ちだよ」

「クイッキー、登山なんてするの」

「しねーよ、タコ」


 なんか罵倒されたけど、俺は絶対悪くない流れだな、これ。

 しかしそんなクイッキーの理不尽な物言いが気にならないほど、夢の世界は広大で、目まぐるしかった。

 空に、シャボン玉のように、第二の地球みたいなものが浮かんでいた。


「クイッキー! 空! 空に地球みたいなのが浮かんでる」

「お、『バブル』だな。早速見つけたか。探索してみよう」

「バブル?」

「この世界は多くの人の意識の集合体みたいなものなんだ。不安定で、いくつも大地がある。ここみたいな都市イメージのバブルもあれば、ドラキュラ城みたいな街もあれば、海の見える町もある。それらがぷかぷか浮かんでんだよ。あんな風に」

「じゃあ、俺たちの立ってるこの地面も?」

「当然、外から見たら一個のバブルだ。中にアモクがいればシリム稼ぎになるし、中にはハートつきのレア武器なんかもあったりする」

「わかりやすく言えば、ダンジョンってことか」

「それで分かるならそれでもいい」


 クイッキーはもうそれで何か言うのを諦めて、嘆息混じりに俺の発言を受け入れた。

 俺たちは各々のイメージで飛び上がり、バブルの方に向かう。

 地面に足をつけよう、とイメージすると、不思議なことにぐるりと視界が反転するような感覚があり、足場を移すことができた。

 新天地。凄いな。本当はやっぱり異世界転生ファンタジーなんじゃないか。


 俺たち新参者は五人、散り散りになってアモクを探し、見つけたら袋叩きにすることにした。とはいえ敵も四層で育った強敵だ。三層までしかレベリングしていない俺たちにとっては一体一体が脅威であることに相違ない。

 しかも死んだら当然そこで終わり。現実と同じ、サバイバル。かつてない緊張感をもって、俺は目の前のアモクに集中した。

 アモクの姿は千差万別だった。岩石の体で出来たゴーレムみたいなやつは、首の後ろにハートがあった。吸血鬼みたいなやつは心臓がハート。溶けた巨人みたいなやつは、脳天が弱点だった。

 ハートの位置は自由自在。俺たちも、心臓か脳か、はたまた手にだって移動させることができるらしい。「人は心だ!」って言いながら指差した場所にハートがあると思っていい。なので、多分、俺のハートは心臓にあるし、動かせそうにない。

 胸だけは、ちゃんと防御しとかないとな。


 それから数日間、俺たちはレベリングに勤しんだ。

 経験値は基本的に奪い合い。明確にレベリングに積極的な人間と、そうじゃないやつらが浮き彫りになる。積極的なのは、俺と青い髪の少女だった。

 彼女は青く長いストレートヘアーをなびかせて、しゅっとした顔立ちに、黒ぶちな大きな眼鏡をかけていて、服装はスタイルのよく見える黒いロングティーシャツに白いカーゴパンツと、ボーイッシュながらもくびれだけで女性らしさを表現しているような、清楚な感じの女の子だった。

 彼女は人間も押し潰せそうなほど巨大なハエ叩きで戦っていた。


「やるなぁ」

「そ、そうでしょうか」

「あんた、名前は」

「な、名乗るほどの者じゃないですよぅ」


 性格は控えめ。

 常に苦笑しながら話すような子。

 俺は彼女に負けじと、シリムを稼ぎ続けた。


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