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ヴァルキリアの拠点に戻ってきた。
相も変わらず黒い町。夜空は明けることがなく、住民たちはレベリングをすることもなく、拠点付近にビクビクとしながら暮らしていた。
ビルの入り口に向かい、俺たちの目の前で都合よくエレベーターの扉が開いた。
「お、ラッキー」
「エレベーターが丁度いいタイミングで来たことについて言ってるなら、見当違いだ」
「まさか、エレベーターまで自動なの?」
「この町一体がダリアの製作物なんだよ。町に足を踏み入れた人のことはすぐにわかるし、エレベーターだって彼女の手足みたいなもんだ」
「マージかよ」
ダリア、銀色の髪をした美女はヴァルキリアの頭脳と聞いていたけど、想像力豊かすぎだろ。頭脳ってそういうことか。そういえばダリアの歩き方は、けして地面から足を離さないような奇妙なものだった。思い返して納得。そういうことだったのか。
……待てよ、作って置いておける。ハートの中のシリムは自動で回復する。そうか、この方法なら『町』レベルの建造物も『増築』することで実力以上の防衛力を発揮することもできるのか。奥深いな。
「おかえりなさい、クイッキー」
「たらいも」
「成果はどうでしたか」
「雑魚が30体、ちょい強が5体って感じだったな」
数えてたんだ。意外と豆。
「しばらく休んで、英気を養ってください。ここなら安全ですから」
「そーするわ。レオは?」
「第二区画の方で微かな破損が見られたので、そちらの様子見に向かいました」
「迷惑なやつらだなー。もう追い出しちまえよ。ロクにレベルも上げない雑魚どもなんて」
「クイッキー。弱きを守り、強きを挫くのが私たちの志なのよ。守れるものは、守らなきゃダメ」
「はいはい、ちぇー」
そう言ってブー垂れるクイッキー。レオに会えないのが不満なんだろうな。
レオは自警団の隊長みたいな感じなのだろうか。
「貴方たちも初めての狩りで疲れたでしょう。しばらく心を休ませなさい」
「んなことより、下層への扉はまだ見つかってねーのか」
「シルクが探してくれています。朗報を待ちましょう」
こっちは休んでる暇なんてねーんだが、古参組のシルクってやつが捜索に当たってんなら、それ以上、口を出すことはできない。『一年』戦い続けたと言っていたから、時間がないのは、彼も同じだろう。
心中穏やかでないまま、俺は適当にあてがわれた『306号室』への鍵を手に、向かった。