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百 万 回 は 死 ん だ ザ コ  作者: yononaka
██:████

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45/200

045_継暦128年_秋~継暦141年_夏 +マトメ

「思ったよりは凄惨な現場ですね」


 傷口を押さえ、詠唱を何度も唱えているメリアティがそこにいた。


 さもその状況が当然だとでも言うように冷静にウィミニアは近づく。


 彼女にとっては『当然』の一つでしかなかったからこその態度ではある。

 幾つかの予測の中でこの状態は理想的とも言える状況であったし、そして理想的な状況を掴み取れる可能性は低くないとも考えていたからだ。


「割れた器、零れたる瓶の水、いずれもを我は求めず、我が手にただ糸と針の行く先のみを与えたまえ」


 魔術とは言葉の塊と鍵としてインクに意味を持たせることで発動する。

 発動に関わる『真なる意味を持つ言葉』を一組唱えるを小節と呼び、これそのものを詠唱と呼ぶことがもっぱらである。

 儀式ほどになれば小節(詠唱)では済まないため、言葉を紡ぐ行為を大詠唱などと呼ばれることもあるが。


 さておき、メリアティが必死になって唱えているのは長い小節(大詠唱ほどではない)。

 長いほどに効果は大きくなるが、制御も難しく、緊急時には使いにくいこともあって修得者が少ない。


 それでも魔術の中で大きな回復力を持つものは彼女がいま唱えている『縫合魔術』が代表的だ。

 治癒の力が請願だけに存在するわけではなく、魔術にも存在するのだという証明のためにかつて魔術ギルドによって広められたこともあって、

 使用者の数よりも遥かにこの魔術を認識しているものが多い。


「お待たせいたしました、メリアティ」


 ウィミニアは周りに人がいないか、ルカルシやヤルバッツィしかいないようであれば、

 彼女とは近い距離感を取る。

 メリアティにとっては彼女が『幾つかは』変わってしまったところもあるが、それでも彼女がウィミニアであるという証左であろうと考えている部分だ。


「ヴィルグラムは」

「意識がないのは好都合。

 このまま儀式に移りましょう」


 メリアティは彼は大丈夫なのかと聞きたかったが、返答はやや外れたものだった。


「《払拭》、《焼灼》、《鎮痛》、《治癒》、《増血》、《回春》、《循環》、《昏眠》」


 ウィミニアが、一息に請願を扱う。

 莫大なインクが放出され、死の手を振り払うに精一杯だったメリアティの縫合魔術をかき消す勢いで傷口は塞がる。

 請願ギルドを広く見たとしても、このように一息に、そしてひと繋ぎにして請願を扱えるものはいない。

 知ってはいても見事な腕前にメリアティはほっと息をつく。


 以前にメリアティはある請願使いに問うたことがあった。

 複数の請願を一息に使うというのは難しいことなのか、と。


 その人物は「二つ程度なら才能で、三つまでなら才能と経験でなんとかできる天才もいる」、

「だが、それ以上の数となるとその数の楽器を同時に、そして違う楽曲として奏でるようなもの。つまりは不可能なことだ」と言われた。


 それ以後、請願について誰かに問うことはしなくなった。

 ウィミニアがその使い手だと知れてしまったなら、きっと彼女の迷惑になるだろうからと。


 一方で、傷を治癒、というよりも死から強引に引き戻されたジグラムだが、飛ばされた腕が戻るわけではない。

 ウィミニアは死ぬよりはマシだろうし、彼自身が承知の上で腕を失っているだろうと判断していた。


「……その、本当に」

「ええ、今の器が最も都合がいいのです。

 そう何度も彼を殺し続けるのも気が引けるのもあるし、機会そのものを逸する可能性も大きい」


 気が引ける、というのは嘘だ。

 彼女にとって命を奪うことは既に何の呵責もない。


 ウィミニアが怪物──いや、妖物と一つになってからは痛烈にそれをメリアティは理解していた。


 とどのつまり、今の彼女にとって他者と自分の境界線があるのではなく、自分を構成するべき重要なものと、それ以外という区別があるだけ。


 この老人は彼女にとって『重要なもの(ある冒険者)』ではなく、『それ以外』に属するものなのだろう。

 ジグラムがこの後に重要なものに振り分け直されるのかもしれないが、そうした心の振る舞いまではメリアティも予測はできない。


「ごめんなさい、ウィミニア。

 もう迷いません。この罪と向き合いましょう。

 そして、私と血統が作り出したその咎も」

「咎人は貴方ではありませんよ。

 それだけは約束します」


 本当の咎人とは自分自身なのだ、とウィミニアの態度が告げていた。


 親しいものへの態度ではない。

 管理局局長、或いは稀代の請願使い、ウィミニア(ダムドシング)としての彼女の言葉。

 効率と最良の権化からの言葉は慰みではないことを、メリアティは理解している。

 だからこそ、この態度が彼女は嫌いだった。


「……続けましょう、ウィミニア」


 妖物(ダムドシング)は頷くと、請願を唱える。


「『選択』、『開封』……さあ、ヴィルグラム様。

 目覚めの前に想起なさってください。

 あなたが何のために在るか、何のために歩んだのかを」


 ───────────────────────


 継暦128年


 私の出自はそれほど恵まれた環境ではなかったとは思う。

 比べる対象がなかったので当時はそれがおかしなことだとは思わなかった。


 勿論、下を見ればきりがないほどひどいご時世だというのは理解している。


 北方の、さらに辺境。

 彼らは『神が見下ろす地』と呼んでいてありがたがっていたが、

 今にして思えば教会の分派がその異端性から逃げ続けた果ての大地だったというだけ。

 適当な理由を付けてそう呼んでいたのだろう。


 この辺りは見るべきものもないし、得るべきものもない大地だった。

 神の奇跡と呼べるものがあったとしたなら、真冬の吹雪にあってもなぜか常春を維持する場所が幾つかあり、

 それに限って言うなら奇跡と呼ぶにはふさわしかったかもしれない。


 この大地には自分たちと同じように他派から追い出された異端派閥が逃げ込むことが多く、

 私の家族を含めた教派の人間は他教の手によって殺された。

 私を含めた幾人かは生き残り、『再教育』と銘打って隷属させられていた。


 限られた常春の楽土を奪い合って、そうして私は何度も再教育という名目で様々な教派を渡っていった。


 エリート教育を受けたわけでは無いが、混沌とした教えと請願の許可、そして簡単な僧兵としての手習いを与えられた私はその地から逃げ出した。


 生来目が良かったというか、目の付け所のようなものが良かった。

 逃げるときもその目が役に立った。ここから逃げられるだろうというのを見通せた気がした。


 そうして逃げても、誰も追っては来なかった。

 というより、人の出入りが多すぎて私のことを私だと覚えている人間が一人もいなかった。

 私の家族がいた教派のことを覚えている人間もまた、誰一人いなかった。


 逃げている最中、思わず笑ってしまった。

 この状況が、誰も私を知らないという事実が、おかしくて仕方がなかった。

 神がいるならば私に罰をくださなかった理由は、

 神がいないなら彼らが必死に崇めているものはなんだったのか、


 あの小さな楽土で殺し合いを続ける彼らは何をしたかったのか。


 答えを求めているわけではないが、笑ってしまうくらいに虚しい場所と日々であったことは確かなことだ。


 ───────────────────────


 継暦132年


 実力があるかと言われれば、ない。


 僧兵としての経験は多少あっても、生活の基盤になるほどでもない。

 そりゃあ、期待していたわけじゃなかったが、

 あんな僻地まで逃げた連中ができる戦闘技術なんてたかが知れていたのだろう。


 あれからなんとか『教会』の影響の少ない街を渡り歩いた。

(自分の出自は教会の異端ではあったから関係ないとは思うが、それでも当時は出自を超常的な手段で読み込まれて罰せられる恐怖に怯えていた。今となっては馬鹿馬鹿しいとは思うけれど)


 今の主な飯の種は識字商いだったが、正直、私程度の学識でやれる範囲はたかが知れている。

 目の良さだけは相変わらずで、目から得た情報で少しずつ語彙やら計算術やらを学んでいった。

 専門家が必要じゃない程度の仕事はそうしてこなせるようになっていった。


 そんな折に一つの話を聞いた。

 ビウモード伯爵領で冒険者になるためのハードルが下がり、サポートも手厚くなっているのだと。


 行商の話だったのもあり、現在地はビウモードから随分離れた場所で聞いたことだった。

 今まで得ることのなかった目標を得た私は少しだけ気分が高揚した。


 識字商いでは食べていけなくなったときには請願を使い、小銭を稼いだりもした。

 治癒や解毒、解熱あたりの請願は実に潤いを与えてくれたものの、そうした便利な請願を使えるとなるとまたろくでもない連中に目を付けられかねない。

 ほどほどに仕事をしながら、ビウモードを目指す。


 ───────────────────────


 継暦133年


 長い道のりだったけれど、ビウモードに到着した。

 冒険者ギルドで手続きは緊張で胃が痛いほどだったが、驚くほどあっさりと登録できた。


 つまりは、身分を手に入れたのだ。

 今まではどこの誰でもなかった、名前すら毎度適当に名乗っていた始末。


 タグにはウィミニアと刻まれている。

 本名ではない。

 もはや、この世界の誰も知らない家族が唯一絶対の教義と信じていた異端教義を適当に組み替えただけのもの。

 意味なんかない。

 けれど、それでいいと思っている。

 最低限、自分が自分であると認識できることが重要だろうから。


 ───────────────────────


 同年、登録のすぐ後。


 あまりこの辺りは思い出したくない。


 無力さを知った。


 正直、私はいつ死んだって構わないとすら思っていた。

 惜しむものを持たない身であり、惜しむ思い出もない人生だったから。


 賊程度があんなに強いとも思わなかったし、そうした認識の甘さで殺されるのであれば諦めもついた。

 目が良いなどと言っていたけれど、その程度の長所で殺し合いに挑むのは馬鹿なことだった。


 相手が目がいいなら、見通せぬような技で攻められれば目の良さが命取りになったりもする。

 次に何が来るか読めなくなれば、身が竦む。

 私は自分の力を持て余し、追い詰められていった。ここまでか。せめて死ぬならこの命、少しでも高く売ろう。そう考えたときだった。


 私よりも先に犠牲になることを選んだ人がいた。


 困惑した。

 私程度に何故命を投げ捨てるのだろうか、と。


 私には価値はない。

 それは散々に北方の常春の楽土(最悪の場所)で言われ続けたことだった。

 実際、そうだとも思っていた。私にできることなんて、他の誰にでもできることだったから。

 いや、もっと上手くやれる人ばかりだったから。


 けれど、彼は──グラムという男性は私たちのために命を捨てた。

 彼という価値は失われた。価値のない私に使ってしまったから。


 ……今はわかってる。

 そんな風に思ったって仕方ないことを。

 であれば、彼の死に報いることができるほどの価値ある人間になるのが一番の恩返しだということくらいは私でもわかる。


 ───────────────────────


 継暦133年


 色々あって、と言うと投げ遣りだけれど、でもそう纏めるのが一番早い。


 色々あって私たちはビウモード伯爵家に飼われることになった。


 言い方が悪い?

 ……グラムさんを焼いて、その人だけを弔える権利を奪った彼らに対して、私は態度を軟化させることはできなかった。


 けれど、その態度をグラムさんが喜ぶかは別だった。

 だから、一枚壁を作って対応する。

 少しくらい、人生の渡り方を覚えた気がした。


 ───────────────────────


 メリアティ様には同情した。

 伯爵家は嫌いだが、だからといって同情した相手まで嫌う理由にもならない。


 呪いについては多少の知識があったから個人的に調べてみたけれど、簡単なものじゃなかった。

 これは呪いというよりも、もはや個人の特性とか臓器の一部のようなレベルで繋がったものだ。

 当時は確証がないから考えを横に置いていたけれど、この呪いは親や先祖の顔に子が似るように、遺伝していくものではないのかと直感はしていた。


 それを言ったところで解決にもならないし、絶望させるだけだから言わなかったけれど。

 ただ、その後に生命牧場を探すという話になったのは、

 考えうる中で一番正解に近い気がした。

 解決策を引き当てるくじ引きの中では、という枠組みの中の話ではあるけれど。


 冒険者として復帰したあとは、ルカやヤルバと組む以外の相手とも共に戦った。

 やはり二人に比べれば大体の冒険者は質に劣る。

 私たちが強くなったから、と多少増長してもいいだろう。


 ルカは強くなり、見識を広めていく。

 ヤルバはメリアティ様との恋仲を進展させていく。

 二人ともに進むべき道を歩くために力を付けているように見えた。


 では、私はどうなのだろうか。

 強くはなった、あの日よりは少なくとも。


 知識も得た。学識もメリアティ様が教えてくれるお陰で幅広く得たと思う。

 今なら戦いから身を引いて識字商いでも、礼儀なんかを教える教師になんかでもなれそうだ。


 北方のあの場所で一度見た剣と鈍器の合体した妙な武器を旅先の蚤の市で見つけ、

 購入してからは武器の扱いもうまくなった気がする。

 この武器だ、と思えたものに出会えたのが大きかったんだろう。


 それで?

 私はどこへ行きたいのだろうか。

 ただ漫然と、積み重ねているだけだ。


 ───────────────────────


 生命牧場へと到達した。

 人手が足りないということで、それぞれが単独で行動することとなる。


 危険な行いかもしれないが、安全第一で進んで数日で終わる……そんな狭い施設ではないのも理由の一つだった。


 私たちの一党には斥候(スカウト)の職能を持つものがいない。

 そうしたメンツを含めるべきであるのはわかるが、ルカとヤルバも、なにより私もその枠を誰かで埋めることができなかったし、話題にすることすら避けていた。


 お陰で、というべきかは怪しいが、

 三人ともスカウトの真似事くらいはできるようになっていた。


 勿論、それぞれスカウト技術のなかでも得意不得意はあったものの、

 三人で力を合わせれば多少の難易度のものであれば踏破することができた。


 逆を言えば三人揃わなければ突破できない罠があるかもしれないとしても、

 それでも別れたのだ。


 理由は広い施設だから、というだけではない。


 生命牧場は研究所であるはずだが、むしろここは何かを封印するために作り、研究施設というガワを被せただけのものではないか。


 僧兵としての経験から来る感覚でしかなく、明確な何かがあるわけでもない。

 以前メリアティの生来の呪いで思ったことと同じ、理由もない直感から来るものだ。

 だからこそ誰かに伝えたわけではない。


 暫しの探索のあと、『それ』は見つかった。

 私の抱えていた直感だよりの予測が正しいものだったと示す証拠。

 この時点で仲間を呼んでいれば、今のようなことにはならなかったのだろうか。


 ───────────────────────


 一言に纏めたら、好奇心に負けた。

 それに尽きた。


 隠し扉を見つけ、その先を進む度に溢れるインクは故郷とも言える北方の、

 常春のあの場所にも似た感覚があった。


『ほう……。

 この場所に進もうと思うものがいるとは。

 忌避と恐怖、嫌悪と阻隔、そうした感覚を与えるインクが溢れていたはずだが』


 ぐわんぐわんと頭の中に響くインク。

 会話から意味だけを抽出し、強引に私の中で希釈されるような奇妙なもの。


「故郷のインクに似ていたから、どうやらそれで勘違いしたのかもしれませんね。

 それほどまでに人を遠ざけたいとは思いませんでした。

 なにせこのインクに惹かれて殺し合いが起きるような蛮地の出身なものでして」


 嘘はない。

 卑屈とも取れる言葉は、まあ、その通り。卑屈なのだ。


 人間は、いや、魔術や請願を扱える生物であれば大なり小なりインクというものを纏い、漏出すると私は考えている。

 強大な力を扱えば、それだけ漏出というか、残り香のようにそれが漂うこともある。

 だが、この場においては濃密と言えるだけのインクが漂っていた。


 つまり、この場所そのものに膨大なインクを消費する何かがあり、

 声の主こそがそのインクの持ち主であり、

 今もその力が(その効果や内実はわからずとも)発揮されて続けているということになる。


 このようなインクの持ち主は見たことがない。

 仮にこの相手が無用な闖入者に少しでも怒りというか、機嫌の一つでも損ねたなら一息で殺されるだろうことは予想ができる。


 故に、卑屈にもなるし、へりくだるような言い方にもなる。

 この場をどう切り抜けようかとも考えていると、


『ぷふっ、あはははは!

 そう怖がらないでくれると嬉しいね!

 あはは、こっちは死人だ。

 ん?ああ、いや、そうか。死人が喋れば恐れられても仕方ないか。

 いや、でも君の今の恐怖はそこではなく、ここで殺されることなんだろう?』


 突然、笑い声が弾けた。


「何を」

『いやあ、すまない。

 死にたいと思っている割には、死ぬのを恐れるのが滑稽でね』


 心を読んだのか、それとも顔にでも出ていたのか。

 どうあれ隠すことではないし、少なくともルカやヤルバには察せられている。


 私は怖い。

 死ぬのが怖い。

 グラムさんに何も返せず死ぬことが怖い。


 何も返せないことがわかっていて、それに直視するのが二番目に怖い。

 だけど、一番怖いのは、


「……私は、死にたいと思っているわけじゃない。

 ただ、あのときに死ぬべきだったのに、こうして──」


 ああ、失礼しました。

 公爵が構築した忌道の扱いは不親切で、扱いが難しいのです。

 思い出させるつもりが、私の過去を流し込んでしまったのですね。

 失礼いたしました、ヴィルグラム様。……ああ、重ねて失礼を、ジグラム様。


 それでは、今度こそ。







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 ちょっとしたマトメを作成いたしました。

 こういうマトメがあったら嬉しいな!というものがありましたらお知らせください。



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 ◆主人公くんの簡易マトメ


 ▼死ぬと違う肉体に入る。

 突然湧いているのか、乗り移っているのか、そういった情報は不明。


 ▼死んでしまったら

 記憶は引き継ぐが、10回死ぬとリセットと当人は認識している。

 0回目の状態に戻る。

 この『10回死んだら記憶リセット』の周期を本文では『周回』と呼んで扱う。

 また、死んで次の肉体になることに関しては『復活(リスポーン)』と呼んで扱う。


 ▼判明している周回特典っぽいもの

  ●資産金属を持っている

  但し、ギルドには位置バレするようだ。

  登録名は「ヴィルグラム」。

  ●知識がアップデートされることがある。

  前にはなさそうだった知識が復活した肉体に由来した結果だったり、

  周回時の恩恵としてなのかは不明だが、持っていることがある。

  ●技巧の強化

  投擲の技巧が強化されているようだ。

  使う機会が多いから成長したのか、その辺りの理由は不明。


 ▼現周回の動き

  ●グラム:青年の肉体

  レティレトを助けて死ぬ。

  ●ヴィルグラム:少年の肉体

  ルカを助けて死ぬ。

  ヴィルグラムの死はウィミニアによってしくまれていた。

  ●ジグラム:老人の肉体

  ブルコとの戦いで腕がもげたものの、ひとまずはまだ生きている。



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 ◆登場人物の狙い簡易マトメ

  狙いが出ているものだけ記述。


 ▼ルカ(ルカルシ)

 ボーデュランとの契約(内容不明)を果たす。


 ▼ウィミニア

 ライネンタートとの契約(内容不明)を果たす。


 ▼ドップイネス

 ライネンタートを殺す。


 ▼ヤルバ(ヤルバッツィ)

 トライカに急いでいる。


 ▼ビウモード伯爵

 何かの手のひらの上で踊っているのを止めたい。


 ▼ルルシエット伯爵

 犠牲になろうとしているビウモードを止めたい。



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 ◆登場人物と動きの簡易マトメ


 ▼ルカ(ルカルシ)

 魔術ギルドの好戦主義を止めたかったができなかったので、彼らの流儀で止めた。

 ソクナとの戦いには勝利したものの、ヴィルグラムを失う。彼の願いもあって生き延びる。

 現在はトライカにいるらしい。

 六年前、生命牧場でボーデュラン侯爵と契約し、少年王に関する何かの成就を条件に力や知識を得たらしい。


 ▼ウィミニア

 ヴィルグラムを殺すようにドワイトにお願いして、ジグラムには妙に手厚い対応をする。

 目を失ってから変わったというような証言あり。

 六年前、生命牧場でライネンタートと契約したようだがその辺りの詳しい状況はまだわかっていない。


 ▼ヤルバ(ヤルバッツィ)

 ビウモード伯爵の妹であるメリアティと結婚している。

 現在は単身、大急ぎでルルシエットからトライカに向かって移動中。


 ▼メリアティ

 ビウモード伯爵の妹。

 生まれながらにして呪いを持っていたらしい。

 生命牧場で何か発見できればその呪いをどうにかできるかも?という話だったが。

 現在も生きているということは呪いの解除ができたのか、延命手段が見つかったのかもしれないが現状では出てきていない。

 トライカの市長でもあり、その才腕は街の具合から確かな模様。

 兄である伯爵とは折り合いが悪いのか、関係性的にはイマイチという話も。

 彼女もウィミニアと同じくジグラムに対してヴィルグラムと呼んだが、メリアティ自身が現在までの話で彼をそう呼んだシーンは存在しない。


 ▼ビウモード伯爵

 愛称がビュー。

 太子(跡継ぎ)になると自動的に幼名がこれになる。

 ルルシエットを攻めたり、何かの動きを見せているが、その全ては引き継いできた何かしらの『負の遺産』めいたものを解消するためらしい。

 自領も他領も被害が出る形を取っているくらいには必死な事情があるようだ。

 また、その解決のためなら死んでも構わないとまで考えている。


 ▼ルルシエット伯爵

 愛称がルル。

 太子(跡継ぎ)になると自動的に幼名がこれになる。

 但し、『ビュー』と違って彼女はこれを偽名だったり普通の愛称だったりで使っている。

 ビウモード伯爵が行おうとしている『負の遺産』のようなものの解決には同意するものの、ビューや多くの人間が犠牲になるようなやり方は望んでいない。


 ▼ソクナ

 ビウモードの行動騎士。『破獄』の二つ名を持つ。

 その名の通りに捕まっても勝手に脱獄するヤバい魔術士。

 ルカの過去を知るために行動騎士になったと言っている。

 魔術士ギルドで敗北したが命に関わるようなことはない。


 ▼ドップイネス

 ツイクノクの御用商人で、血筋は王国の貴人に遡ることができて、

 更に教会の偉い人の血も継いでいて、宗教を道具としか思っていない、

 ライネンタートを何とかしようと思っている。

 色々と抱えているが、現状でそれらの情報が火を吹くようなことにはなっていない。

 ブルコを使い、ジグラムを殺すように命じている。


 ▼ブルコ

 ドップイネスの護衛(という名目の雇われ殺手(殺し屋))。

 このマトメにおいては特に背景はない。


 ▼ドワイト

 ビウモードの行動騎士。先代からビウモードに仕えている。

 無形剣を使える。

 ウィミニアとはまだ付き合いがある。


 ▼オットー、ナテック、ダフ

 ルルシエットの行動騎士。先代からルルシエットに仕えている。

 政務の手伝いがメインではあるが行動騎士として戦場にも駆り出される程度には実力があるようだ。


 ▼レティレト

 キースによってウィミニアに献上はされてはいるようだ。

 その後の動きは不明。


 ▼キース

 オッホエに感動してジグラムに弟子入りした。



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 ◆勢力についての簡易マトメ

  所属者に関しては本筋に絡んでいない人は省いています。

  例えばナスダとトマスはルルシエットの人間ですが、最近のお話に出てきていないため記載されていません。


 ▼勢力:ビウモード

 伯爵の命令によってルルシエットを襲った。

 現在はルルシエットを支配している。

 伯爵は何かの目的があってルルシエットとことを構えざるを得なかったようだ。

 所属している都市で本筋に登場しているものはトライカが存在する。

  ▼所属者

   ビウモード伯爵

   『行動騎士』ドワイト

   『行動騎士』ソクナ

   『行動騎士』ヤルバッツィ(至当騎士団の総長も兼任)

   『トライカ市長』メリアティ


 ▼勢力:ルルシエット

 首都であるルルシエットを抑えられ、衛星都市ペンシクで再起を図っている。

 ビウモードが襲ってきた理由は、伯爵同士にはわかっているらしいが、表沙汰にはなっていない。

 所属している都市で本筋に登場しているものは(前述しているが)ペンシクが存在する。

  ▼所属者

   ルルシエット伯爵

   『行動騎士』イセリナ

   『行動騎士』ガドバル

   『行動騎士』ローム

   『行動騎士』オットー

   『行動騎士』ナテック

   『行動騎士』ダフ


 ▼勢力:ツイクノク

 御用商人ドップイネスを派遣し、この状況にいっちょかみしようとしている。

 ビウモードとは協力関係を結んでいる。

 現状はそんなにお話には絡んでいない。

  ▼所属者

   『御用商人』ドップイネス

   『護衛』ジャド

   『暗殺魔術』オーフス

   『飽食』ブルコ

   『色小姓』スアフ


 ▼勢力:魔術ギルド(ビウモード伯爵領内)

 テッドというルカの弟子がギルドマスターをやっていたが死亡済み。

 空席を預かる形でソクナが代理ギルドマスターをしていた。

 ルカとヴィルグラムのカチコミで好戦派は一掃されたものの、ルカも首都ビウモードから離れ、トライカへと向かっている。

  ▼所属者

   『不言』ルカルシ


 ▼勢力:管理局

 古い時代に存在していた組織。

 民間の仕事は冒険者ギルドが、国や自治体などの依頼は管理局が差配するようなルールだった。

 カルザハリ王国が消えた後は管理局も消えた。

 現在はその名前を借りていると考えられる組織がビウモードで行動している。

  ▼所属者

   『妖物(ダムドシング)』ウィミニア

   『ジグラムの弟子』キース


 ▼勢力:なし

 それはもう組織じゃないだろうという話だが、

 表記上どこにも属していない対象のための項目が必要だったために記述。

  ▼所属者

   『自称、百万回は死んだザコ』主人公(グラム、ヴィルグラム、ジグラム)

   『不朽』レティレト


 ▼勢力:カルザハリ王国

 もう既に存在しない国。

 先王亡き後に国を何とかしようとした少年王と宰相は公爵の暗躍で殺された。

 その公爵も後に侯爵に殺されているらしい。

 侯爵は伯爵によって討たれたともされており、その辺りの時期から次の覇者を争う相続戦争が明確化したとされる。

 明確な所属はさておき、歴史的な過去の人物はここに記述する。

  ▼所属者

   ボーデュラン侯爵

   『妖物(ダムドシング)』ライネンタート


 ▼勢力:イミュズ

 学術系のギルドの互助組織、その本部がある。

 魔術ギルドがビウモードの好戦主義(に見える状態)に相乗りしたことに対して誰も責任を取りたがらない姿勢をとった。

  ▼所属者

   本筋に関わっている登場人物なし




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 ◆小ネタ関連


 ▼伯爵って爵位?彼らは誰かの下に付いているの?

 王様が公爵に殺され、公爵が侯爵に殺された。

 公爵とか侯爵を名乗ったやつもいたけど殺された。

 出る杭は他の勢力に打たれる可能性があるので名乗っていない。

 つまり、このお話において、現状では伯爵=王様と考えてよい。

 伯爵領=国土とか国の領地。


 ▼相続戦争はまだ続いているの?

 最近は大人しかったけど、伯爵の中でも大きな戦力を持つビウモードが同じくらい戦力を持つルルシエットに喧嘩を売った挙げ句に首都を奪っている(市民目線)ので、

「ああ、まだ相続戦争って続いているんだな」という認識になっている。

 もっと国土を増やしたいツイクノクのような伯爵家が動き出したりして、

 相続戦争が再び活性化する可能性もある。


 ▼ヤルバ、ルカ、ウィミニアの関係性

 グラム死後から一緒に行動している。

 生命牧場でルカやウィミニアが何かを受け入れて以後の関係性は不明。

 ルカは街中で暴れているのでヤルバからすると困っていそう。

 ウィミニアは表向きはドワイトに依頼できる程度には関係性は保っていてそう。


 ▼伯爵同士の関係性

 ビウモード伯爵、ルルシエット伯爵は幼馴染同然。

 年齢は4歳差くらい。

 ビュー>ルル>メリアティの順で年齢に階段ができている。



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 ◆これまでの簡易マトメ(ビウモード関係重点版)

 賊として生きていた『主人公()』は色々あって三人組の新米冒険者、

 戦士ヤルバッツィ、僧兵ウィミニア、魔術士ルカルシと依頼をこなす。


 しかし、ヤルバッツィとウィミニアの危機を察知して命を消費して隙を作った。

 依頼は達成したものの、三人に暗い影を落とす。


 その後、依頼はビウモード伯爵によって握りつぶされ、

 ヤルバッツィたちは真相を知るために伯爵の手伝いをすることに。


 八年後。


 主人公は再び冒険者となり、ルルシエットという都市で仕事を始めた。

 ある仕事を完了して帰ってきた主人公が見たのはルルシエットがビウモード伯爵の軍に攻められているところであった。


 そこにかつて共に戦ったヤルバッツィと再会し、何とか戦いを止めてもらおうと行動を起こすヴィルグラム。

 彼は自分の存在、つまりは復活(リスポーン)に関して

「他人に伝えると、不幸にさせている気がする」というおぼろげな記憶からそれを話すことを禁忌としていたものの、

 打てる手がないためそれを話す。


 ヤルバッツィは驚き、どういうことかを聞こうとしたが、ヴィルグラムはヤルバッツィの部下に殺されてしまった。


 その後。

 10回の死により記憶を失い、新たな『彼』として復活(リスポーン)していた。

 グラムとして生き、そしていつものように軽い命だとして死を選ぶ。


 次には少年ヴィルグラムとして行動する。

 ルルこと、ルルシエットとの出会いを経てビウモード伯爵領へと到着し、

 新たな出会いとしてルカという魔術士と出会った。


 ルカは八年前に共に戦ったルカルシであったが、お互いにそれには気が付かないままに彼ことヴィルグラムは殺されてしまう。

 彼を殺した動きの背景にはルカルシと同じくかつて共に行動をしたウィミニアの名が出た。


 老人の肉体として復活した彼はジグラムと名乗り、そこでかつて自分を殺したキースを助け、

 その出会いから再びビウモード伯爵領へ。


 資産金属を使い、食事をしているとジグラムは誰にも言っていないはずの前回の名前、

 ヴィルグラムと呼ばれる。

 それを呼んだウィミニアから出された依頼を受け、トライカへと向かったジグラム。


 道中の襲撃をくぐり抜けた先でウィミニアから受けた新たな依頼、

 トライカ市長メリアティを守るというものを遂行するために市長邸に向かう。


 市長は彼を見てヴィルグラムと呼び、しかし真相が明かされる前に襲撃者との戦いとなってしまう。

 彼は辛くも勝利を掴んだものの、意識を手放してしまい──。


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