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第8話「気さくな男友達のような美少女」

「誰も話しかけてこなくなったね?」


 教室に向かう中、まるで道を開けるかのように生徒たちは両端に避けてくれるので、俺と美麗はスムーズに教室を目指せていた。

 おそらく先程の美麗を見て、触らぬ神に祟りなしといった感じで、遠巻きに見ているのだろう。

 (くだん)の男子には感謝だな。


 そんなことを考えていると――。


「やぁやぁ、翔君。まるで時の人だね?」


 昨日美麗と話をしていた、村雲が話しかけてきた。

 教室から出てきたところを見るに、騒ぎを聞いて顔を出したのだろう。


「あっ、村雲さんだ! おはよ!」

「おはよう、有栖川嬢。今日も元気でいいね」


 笑顔で手を挙げた美麗に対し、村雲も笑顔で応えた。

 村雲はなぜか、美麗を呼ぶ時『嬢』を付けている。

 本人曰く、そっちのほうがしっくりくるのだとか。


 まるでキザな男みたいな喋り方をしているが、見た目は美少女なので、意外と鼻にはつかない。

 ただ、やっぱり変わってはいるので、普通に喋っていたほうが男子からの人気は高かっただろう。

 それこそ、美麗に負けないくらいのレベルじゃないだろうか。


 まぁ逆に、この喋り方や態度が女子にウケているようだが……。


「おはよう、村雲。相手が相手だから、話題にもなるだろ?」

「ふふ、そうだね。まさか、あの学校のアイドルを翔君が落とすなんて――いったい、どんな弱味を握ったんだい?」

「人聞きが悪すぎる」

「はは、そっか。ごめんごめん」


 村雲は楽しそうに笑う。

 本気では言っていないのだろう。


 だけど、よく俺と一緒にいた彼女は、疑問にも思っているはずだ。

 接点が全然なかった俺と美麗が、どうして付き合っているのか――と。

 その探りを入れに、わざわざ教室から出てきたのかもしれない。


「村雲さんってやっぱり翔と仲いいよね?」

「ん? そうかもしれないね。少なくとも、この学校では一番気を許せると思っているよ?」


 美麗が笑顔で尋ねたからだろう。

 村雲は特に不快にした様子はなく、笑顔で答えてくれた。


 素なのだろうけど、仮にも彼女相手に言う言葉ではないような……?


「じゃあさ、林間学校同じ班にならない? 翔とも、昨日村雲さんを誘おうって話をしてたの」


 美麗は本当に、村雲を誘うことにしたようだ。

 確かに、周りが遠巻きに見ている今が、村雲を誘うチャンスではあるが……。


「へぇ、僕もいいの?」

「うんうん、翔のこと悪く言わないし、翔と仲良くしてくれてる女の子のほうがいいから」

「ふ~ん?」


 村雲は意味深な視線を俺に向けてきた。

 言わんとすることはわかる。

 普通の彼女なら、彼氏と特別仲良くしているような女子は、遠ざけたがるだろう。


 しかし美麗がしていることは、その逆だ。

 俺たちの関係を疑われても、不思議ではない。


「美麗は能天気で後先を考えないから、純粋に村雲を誘っているんだ」

「あれ!? なんかそれ、私のこと馬鹿って言ってない!?」


『心外!』とでも言いたそうに、美麗が俺を見てくる。


 ちょっと怒っているようだ。


「いや、裏表がないっていう意味で、褒めてるんだよ」

「そう? ならいいや」


 ……いいのか。

 自分でも苦しい言い訳だと思ったのだけど……まぁ美麗が納得したのならいい。


「なるほどね。正直、既に何人かの女の子から誘われてたんだけど……有栖川嬢と翔君が誘ってくれるなら、僕も君たちの班に入るよ。これもなんかの縁だろうしね」


 村雲は俺たちの関係を怪しみながらも、一緒の班になることを決めてくれたようだ。

 何を考えているかはわかりづらいけれど、いたずらに他人を傷つける奴でもないので、とりあえず喜ぶべきか。


 後は、女子も男子も一人ずつ――どうせなら、林間学校の班決めが始まる前に決めておきたいところだな。

 ちなみに、男子も残り一つになっている理由は、既に一人確保しているからだ。


「ほんと!? いいの!?」

「むしろ、僕なんかでいいのかなって感じだけどね」

「あはは、村雲さんは大人気なんだから、そんな気にしなくてもいいと思うよ」


 村雲は単に謙遜しただけだろうけど、人気者の村雲が自分を卑下するのがおかしかったのか、美麗は悪気のない笑顔を向ける。


「うん、なんだろう。有栖川嬢に言われると、ちょっと思うところがあるね」


 自分より人気な子に大人気と言われたら、そりゃあ思うところも出てくる。

 意外と村雲も、その辺の感性はまともだったか。


「悪気はなくて純粋に言っているだけだから、許してやってくれ」

「あぁ、別に嫌な気持ちを持ったとか、そういうわけじゃないからいいよ」


 フォローを入れると、仕方がなさそうに笑いながら、村雲は美麗を見る。


「とりあえず、それじゃあ林間学校ではよろしくね」

「こちらこそ、よろしく!」


 村雲を早急に確保できたのが嬉しかったのだろう。

 美麗は満面の笑みを浮かべていた。


 そんな中、村雲は俺に近づいてきて、ポンッと肩に手を置いてくる。

 そして背伸びをして、俺の耳元に口を寄せてきた。


「貸し一、かな?」

「なんのことだ?」

「ふふ、とぼけても無駄だよ? 他の人たちの目は誤魔化せても、さすがにあれじゃあ僕の目は誤魔化せないかな?」


 どうやら、完全に偽恋人のことは、村雲にバレたらしい。

 いい奴なのかもしれないが、やっぱり厄介な奴だと思う。


「望みは?」

「ん~、今はいいかな。僕が困った時に、何かお願いするかも?」


 面倒な奴に、借りを作ったかもしれないな……。


「ねぇねぇ、二人で何を話してるの?」


 村雲と内緒話をしていると、美麗が不思議そうに見てきた。

 一人除け者にされれば、当然の反応か。


「男子はどうするのかなって聞いてただけだよ」

「え~、それなら私も混ぜてよ」

「ふふ、ごめんごめん。まぁもうすぐチャイム鳴るし、後は休憩時間にでも話そうか?」


 村雲はそう言うと、ウィンクをして教室に戻っていった。

 本当に、何を考えているかわからない奴だ。


「よかったね、村雲さんも同じ班になってくれて」

「はは……そうだな」


 これでよかったのか……?

 なんだか、面倒なことになっただけのような気がする。


読んで頂き、ありがとうございます!


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