第8話 堂島に復讐する
俺の家族が住む家……。
そこにはまだ『宮本』の表札がかかっていた。
(ったく、再婚して良いって言っておいたんだけどな……。まぁ、俺なんかが言える立場じゃねぇけど)
傭兵として今回の任務に関わることを俺の妻――宮本詩織は引き留めていた。
でも、日本が……家族が危険に晒されると知って俺はマフィアたちの計画を止めに行ってしまった。
(ひでぇ父親だな。家族が本当に必要としているのは何よりも、俺という父親の存在なのに)
ドアから人が出てくる気配を感じ、俺はすぐそばの物陰に身を潜めた。
扉から出てきたのは、大きく成長した娘の優香だ。
「それじゃあ、お母さん! 学校行ってきまーす!」
「はいはい、行ってらっしゃい」
そして、後に続くように息子の雅也もカバンを手に出てきた。
「やべぇ、今日朝練だった! 遅刻確定だなこりゃ」
「1度は起こしたのよ? 全く! それに貴方部長でしょ!」
少し叱りつけながら、エプロンを着けた詩織が2人を送り出すために顔を出した。
昔と変わらず美しく……俺が惚れた彼女に変わりなかった。
傭兵として感情を抑える訓練もこなした俺だったが、元気そうな3人を見て流石に少し涙ぐんでしまう。
もともと、俺はこの訓練が苦手だったしな。
そんな時、スマホにメッセージが来たので確認した。
そして、ゲンナリとする。
メッセージはRINEを通じて堂島から送られてきていた。
『おい休んでんじゃねぇ休むなら連絡しろっていったろ』
……面倒くせぇ。
こいつ、句読点も使えねぇのかよ。
俺は適当に返事を書く。
『そんなに心配すんな。週明けには行ってやるから』
『お前ぶっ殺してやるけらたのしみにしてろを』
怒り過ぎてちゃんと打ててねぇじゃねぇか。
まぁ、こんな雑魚はどうでも良い。
こいつからは復讐ついでに金を返してもらわないとな。
伏見が貯めていた100万円。
給料からこいつが抜いていたもう半分の100万円。
1年間こいつにイジメられた伏見甚太の分100万円。
切られたLANケーブルの分604円。
こいつの罪は全て償わせてボコボコにしてきっちりと請求するつもりだ。
そんなことは一瞬で頭の隅に追いやって俺は物陰から2人の子供たちを見送る詩織を見ていた。
――すると、1人の金髪の少女が家の前に現れた。
人形のように美しく、可憐な花のような彼女に俺は見覚えがあった。
傭兵として俺が所属していた国際連合特殊部隊『SWORD』。
その中の1人。
フランス人の女子高生天才ハッカー。
シャルロット・スタンリーだ。
シャルは俺の妻、宮本詩織にペコリと深くお辞儀をする。
それを見て、詩織もお辞儀を返した。
「貴方の夫、宮本龍二さんについてお伝えすることがあります」
……どうやらシャルは俺の戦死を妻に伝えに来たらしい。
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