第7話 新しい人生
髪を切り終えた俺がスマートフォンで時間を確認するとすでに朝の7時だった。
昨日バイトから帰ってきたのが夜の9時頃だったから……ぐっすり10時間くらいは眠れているはずだ。
伏見甚太が身体中殴られてたせいで痛みはあるが、頭はスッキリしている。
もう気を失うことはなさそうだ。
俺はそのままシャワーを浴びる為に服を脱ぐ。
浴室の鏡には俺の新しい肉体が映っていた。
傭兵だった俺とは比べモノにならないくらいにヒョロヒョロとした青白い身体。
そして、全身は長年のイジメによってアザだらけだ。
(こりゃイジメられても仕方ねぇな。身長はあんのに周囲への恐怖心と自信のなさからいつも背中を丸めて歩いてたみてぇだし)
しょうがねぇ。
こいつの身体を使わせてもらうわけだし、せっかくなら鍛え上げといてやるか。
もし身体を返すことになったら、こいつもイジメられなくなるだろ。
もう一度自分のみすぼらしい身体を見ると笑みがこぼれる。
(こいつは鍛えがいがあるな……まずは食事から考えていかねぇと。前世のガムシャラだった俺とは違ってちゃんと理論に基づいて、効率的な肉体改造を……)
新しい若い身体で自分を鍛え直すことができることにワクワクしつつ、俺はシャワーを浴びた。
◇◇◇
シャワーを浴び終わり、タオルで身体を拭きながら考える。
こいつの妹の亜美はまだ寝てるだろうし、母親はまだ夜勤だ。
顔合わせはもう少し後だな。
(――さて、早速。こいつにはわりぃが俺は学校をサボるぞ)
部屋にある中で一番マシなズボンにシャツ、パーカーを羽織って俺は家を出た。
俺には何よりも最優先で確認したいことがあった。
目的の場所まで距離的には自転車が良さそうだったが、鍛錬も兼ねて走ることにした。
伏見甚太の自宅は今から行く俺の目的の場所とそう遠くなかった。
きっとこれは偶然じゃない。
俺の魂は遠い異国の地から『この場所』を目指してさまよっていたんだろう。
そして首吊り少年を見かけて助けようとでもしたんだろうか、そういや俺の息子も高校生だしな。
そんな事を考えながらたどり着いたのは
――俺、宮本龍二が日本に置いてきた家族が住んでいる家だった。