第36話 仕返しをする
デラックスパフェ並みに盛られたシャルとの関係に、俺は聞いていて思わず胸やけしそうになる。
「おい、シャル。いい加減にしとけ」
そう言って、俺は絡みついたシャルの指を自分の手から引き剥がす。
そのまま得意げな表情を作っているシャルの額をチョップした。
「アイュ!(痛いっ!)」
思わずフランス語で悲鳴を上げるシャル。
ナンパされるのを徹底的に防ぎたい目的は分かる。
だが、もしこれからシャルが本当に誰かと恋に落ちたらどうする?
この嘘がシャルの首を絞めることになるだろ。
そんな捏造をしなくても『付き合っている』というフリだけで十分だ。
「シャルは日本に来て間もないって言ったろ? 俺たちは数日前に付き合い始めたばかりだ、手を握ったのも今のが初めてだよ。変な見栄張んな」
「なによ~、別に良いじゃない!」
シャルはワザとらしく額をこすりながらジト目で俺を睨む。
俺の話を聞いて明らかに安心した様子の男子生徒たちは深く息を吐いた。
「な、なんだ……付き合ったばっかりか」
「驚かせやがって~」
「シャルちゃんってもしかして結構面白い子?」
「そんなに短いならまだ『お試し期間』って感じだよな」
そう言われてムッとした様子のシャルは声を張り上げる。
「短い付き合いじゃないわ! 私と甚太はずっと……前世から一緒なんだから!」
そう言うと、周囲の生徒たちはドッと笑う。
これに関しては真実なんだが、当然誰も信じるはずがない。
「てゆーか、根暗でもブスでもねぇじゃん。何だったんだよ、神崎たちの話は」
「妬みだろ。こんなに可愛い子を前にしたら女子のやっかみも多くなるって」
「しかも、神崎たちって伏見が喧嘩強いと分かった途端に手のひら返して媚び売り始めたし」
「なんて言うか、醜いよな~」
男子たちがそう言うと、神崎たちのギャル3人は悔しそうにシャルを睨んだ。
こいつらはマウントを取ることを生きがいにしているような奴らだ。
さぞ悔しい思いをしているだろう。






