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第22話 ハイスペック無双


「…………」


 俺が斉田に言い返すと、場は静まり返った。

 女子高生たちは息をのみ、斉田は額に血管を浮かべる。


「……おい、テメェ今なんつった?」

「ハゲ、デブ、ブサイク」

「ぷっ!」


 俺の言葉に、女子高生の数人が噴き出す。


「サラッと一言足してんじゃねーよ! ぶっ殺すぞクソ雑魚伏見がよぉぉー!」


 斉田は分かりやすく激高して俺に殴りかかってきた。

 俺はヒョイと斉田の拳を避ける。


「何だよ、元気じゃねーか。マッサージは必要ねーな」

「死ねおらぁ!」


 その後、何度も斉田は俺に殴りかかるので俺は避け続けた。

 全部大振りのテレフォンパンチだ、おまけに運動不足で動きがノロい。


「頑張れ頑張れ、痩せられるかもしれねぇぞ?」

「ふふっ、あははっ!」


 俺が煽る度に女子高生たちが我慢できずに笑い出す。

 やっぱり嫌われてんだな、このハゲ店長。

 伏見が見ている前でも女子高生バイトにセクハラ発言とかしてたしな。

 それと、伏見が女子高生たちに嫌われている理由の一つは恐らくそれだ。

 唯一の男性従業員なのに、伏見がヘタレで守ってくれないから。

 まぁ、自分の身は自分で守れよって話でもあるんだが。


「はぁ……はぁ……、くそっ! テメー避けんじゃねぇ!」

「あーはいはい、分かった。動かねぇでやるから」

「くたばりやがれっ!」


 ――カーン!


 言われた通り、俺は避けずに斉田の拳を受け止める。

 手元にあったステンレス製のおぼんで。


「ぎゃぁぁあ! 拳がぁぁ!」

「あーあー、うるせーな」


 俺は耳を塞ぎながら、床でうずくまっている斉田に言う。


「もう店を開ける時間過ぎてんぞ? 遊んでる場合じゃないだろ」

「くそっ、痛ぇぇ! 指の骨が折れたかもしれねーぞ!」

「知るか、テメーが言ったんだろ。『包丁で指を切ろうが、食洗器に手を挟んで骨折しようが死ぬほど働いてもらうからな!』って。自分の言葉には責任を持てよ」


 俺が呆れていると、金井が心配そうに俺に言う。


「――ちょ、ちょっと伏見。ヤバいよ、そいつ怒らせたら堂島が……」

「へっ、よく分かってんじゃねーか! 俺が言えば堂島はお前にヤキを入れにくるぜ? なぁ、分かってて俺に生意気な態度とってんだろーな!」


 斉田の態度は一転、気持ちの悪い笑みを浮かべる。

 完全に虎の威を借る狐……いや、こいつの場合ブタか。


「ブヒブヒうるせーな。ヤキだかヤギだか知らねーが別に怖くねーよ」


 俺は斉田を無視して、店の外に出ると看板を立てて店を開けた。

 そして、開店を待っていた壮年の男女2人組のお客さんに笑顔を向ける。

 礼儀にうるさかったオスカーを倣って丁寧に頭を下げた。


「大変お待たせして申し訳ございません。ご案内いたします」

「あぁ、良かった。今日は開かないのかと思ったよ」

「準備に手間取ってしまいまして、大変申し訳ございません」

「これはこれは、ご丁寧にどうも」


 扉を開き2人を店内へと入れた。

 客が入れば流石に斉田も大人しくなるだろ。

 こいつはただの雇われ店長だしな。


(それにしてもこの客……まぁいいか)


「ほら、金井。ご案内よろしく」

「えっ!? あっ、うん! こちらへどうぞ!」


 金井が客に対応すると、他の女子高生スタッフたちも「いらっしゃいませ!」と元気に声を上げる。

 斉田はキッチンに戻る俺に声を荒らげた。


「テメー、クビにしてやるからな! 使えねぇテメェの代わりなんかいっぱい居るんだからよ! このゴミ屑がっ!」

「あ~はいはい。今日の営業が終わってから話は聞いてやるよ」


 斉田の大きな鳴き声が今入店したお客さんにも聞こえていたようで、お客さんの2人は顔を歪めた。

 金井がそのことに気が付き、頭を下げて謝っている。

 本当に迷惑しかかけねーなこのブタ。

 あの客が『誰か』も分かってねーらしい。


(さて……今は10時20分。国際展示会の開会式が始まった頃だ。今は一組しか居ないが、あと1時間もすれば外国人のお客さんが沢山来るだろうな)


 俺はお客さんの案内を終えた金井にまたチョイチョイと手招きをする。

 金井は不安そうな表情で、トコトコと歩いてやってきた。


「よしよし、良い子だ。お手」


 呼ぶと来るし、ご飯をあげたら食べるし。

 だんだんと金井が可愛い犬みたいに見えてきたので俺はついそう言って手を差し出す。

 金井はジト目で俺を睨んだ。


「心配して損した」

「いつもはヘタレだって馬鹿にするくせに」

「……伏見。どうするつもりなの? このままじゃアンタ堂島に――」

「そんなの良いから、キッチンに入ってきてくれ。料理の作り方教えてやる」


 金井は確かキッチンをやった経験もあるはずだ。

 任せても大丈夫だろう。


「引継ぎのつもり?」

「違う、今からお前にやってもらうんだ。仕込みは全部済ませておいたから、後は少し手を加えるだけで提供できる」


 俺は腕まくりをして冷蔵庫を開いた。


「多分、俺が接客をやることになるだろうからな」

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