第2章
深夜
カンカン!
カンカン!
カンカン!
う、うーん。
鳴っている音で起こされる私。
ベッドの上で目を開ける。
あー、やっぱ昨夜は夢じゃなかったんだ...
天井から音が鳴っている。
そしてその音で昨夜の事を思い出した。
でも今日はなんか音が小っちゃい...
このまま眠れそう....
音が小さかったせいかすぐに目を閉じてしまった。
ジリリリリ
うーん、朝か...
目覚ましを止める。
なんか....体がダルイ....
あれー...昨日確かに音してたけど...
音小さかったから眠れてた気がするんだけど...
とりあえず起きよう。
体を起こし洗面所に向かう。
ハブラシに歯磨き粉をつけて歯を磨く...
それと同時に鏡を見た。
あれ?
クマ大きくなってない?
昨日は目のふくらみの下にある小さかったクマだっだがそれが大きくなり、表情も疲れているとわかるぐらいのクマ。
うむむむむ、今日は本当に倒れそう...
休みたいなあ...
でもなー。今日は早番だから鍵開けも私だから絶対行かないと...
と、とりあえず行こう...
またまた私は急いだ用意をしてアパートを後にした。
アパートを出ると目の前の公園が見えてきた。
そういえば、昨日の公園なんだか怖かったな...
公園を横手に歩く。
サーーーーー
うん?なんか冷たい風
公園側から冷たい風が私を通り過ぎた。
そして、その風で立ち止まる私。
ちょうど公園の入り口付近に立ち止まった。
......
なんかこの公園気になるな...
私は公園に入ってみた。
まだ越してきてから3日目だからこの公園には初めて入る。
そういえば昨日気になった場所は...奥の方だったな...
ちょっと行ってみよ。
公園の奥は茂みになっていて少し薄暗い。
夜だったらまったく見えないと思う。
サーーーーー
また冷たい風が私を吹き抜ける。
この時期には珍しい体をツーンと冷やす冷たい風...
そして....
『た、助けて』
声?
あれ?声がした気がする。
私は辺りを見回した。
公園には誰もいない。
というか通行人すらいない。
「確かに日曜なのはわかるけど..」
時計を見た。
8:08
これぐらいの時間なら散歩してる人が居てもおかしくないのに....
なんか不安になってきた。
それに...ここに居ちゃいけない気がする...
直感でそう思った。
私の直感はけっこう当たるらしい。
私の母方の母、祖母は霊媒師をやっていて、母は霊感ないのだけれど、
その分私は霊感があるらしい。
その霊感がある決定的な出来事が子供の頃にあった。
7歳の夏、祖母が住んでいる静岡に遊びにいった時
記憶が曖昧なのだけれど
お昼ぐらい?夕方前ぐらいかな?
場所は修善寺という観光名所で
両親と祖母で橋を渡りきった時、私はなぜだか急に走り出したらしい。
走り出した先は近くにある林だったみたい
「ダ、ダメよ!」
それを見た祖母は慌てて私を止めに入った。
「呼んでるの。」
そう私は呟いた。
私は祖母に抱えられながら林をずっと指で指していたらしい。
祖母は悟った
「そうね、呼んでるわね。でも唯ちゃんはまだ若いからダメよ。大きくなったらね」
そう言って祖母は私をあやしながら少しづづ林から遠ざけていった。
そして祖母は私の手を取り
「せっかくだから、おばあちゃんと一緒に歩こうね」
それから家に帰るまで祖母はずっと私の手を離さなかった。
その日の夜
私は家の中で遊んでいた。
部屋は2階だった。
階段からおもちゃを落として、1階に降りた。
ちょうどリビングのドア前に落とした関係で両親と祖母の話し声が聞こえた。
「お母さん、なんで昼間唯を止めたの?確かに林は危ないけど、あそこまで止める程かしら。
もしかして...」
祖母は頷きながら
「ええ、そうよ。あの子は霊感があるわ。あそこは大昔に霊媒師がお払いを行った場所なの。
その時の霊媒師は特に強いお払いをしていて、人が近づき辛い印象を起こしてるんだけど
あの子は一目散に走っていったわ。
弘子は子供の頃一度もあそこに向かって走った事はなかった...
つまり唯は弘子より霊感がかなりあるわ...
都内はそこまで悪い土地はないから安心だけど、この修善寺に連れてくる時は注意が必要ね...」
母は深刻そうに話を聞き、祖母に確認した。
「わかったわ母さん...唯には伝えたほうがいいかしら」
祖母は少し無言になった
そして
「....伝えてはダメよ。」
母は少し驚いた様子で
「理由を聞いてもいいかしら?母さん。」
祖母は窓を見ながら
「弘子が子供の頃、この辺を楽しそうに遊んでたわね。」
「ええ、そうね」
「私は弘子が遊んでるとき必ず目を離さなかったの覚えてる?」
母も窓を見て、思い出しながら
「ええ、覚えているわ、でも...
私が15歳かしら、その頃くらいから少しづづ自由に遊ばしてくれてたよね」
祖母は笑顔で
「ええ、そうよ。ウチの家系は15歳までに霊感を感じる行動を1つでもしたら、
その子供に霊感のある話をする仕来たりになっているの。
弘子は1つも霊感を感じる行動していなかったから少しづづ目を離していったのよ。」
「そうだったのね」
祖母は諭すように
「唯もね...弘子のように伸び伸びと育って欲しいのよ。どうしたって霊感があるなしで人生は左右される
せめて15歳。それまでは伝えず、自由に育ってほしいのよ。」
仕来たりを破る。いや15歳に伝えるなら仕来たりを破っていないわ。
母はそう言い聞かせ、祖母の話に同意していた。
ガタッ
私は物音を立ててしまった。
端から見たら盗み聞き!なのかもしれない。
母は慌てている。どうしよう!そんな顔をしている。
祖母はそんな母を落ち着かせ、優しく私の側にきた。
「あらー、唯ちゃん。聞こえちゃった?」
「うん、おばあちゃん達私の話をしてたの?」
祖母は私を抱きかかえイスに座った。
そしてゆっくり話し始めた。
「唯ちゃんはね、人より少し凄い事ができるよの」
「凄いこと?なーに?」
祖母は少しいじわるそうに
「唯ちゃんがもう少し大きくなったら話してあげるわ。」
それを聞いた私は祖母の手をはがし祖母の前に立った
そして声を大きくして
「えー!?いいじゃん!今教えてよー」
祖母は笑顔で
「そうね...唯ちゃんがまたおばあちゃんに会いに来てくれたら話してあげるわ!」
私は飛び跳ねながらこう答えた。
「ほんと!私、絶対また来る!約束だよ!」
「ええいいわよ!」
この出来事を機に私は祖母の家によく遊びに行くようになった。
最終的に祖母から霊感の話をされたのは15歳の誕生日の日だった。
とにかくこの場所を離れなきゃ。
私は重い体に鞭を打つように早歩きで公園を出てバイト先に向かった。
しかし私はこの時に気づくべきだったのかもしれない。
まさかこの公園が天井の音と関係していたなんて...