さらわれる?
隣のお爺さんは言った。
「かわいい犬だねー」
「そうかね?昨日、そこの畑のあぜ道で拾ったんじゃよ。」
おじいちゃんは隣のお爺さんに話しながら足で壺に泥を被せている。
いや、もう見られたし……無理、無理無理無理無理。
隣の爺さん、ガン見してるし!!
「その犬貸してくれない?」と隣のお爺さんが言った。
いやーやめて!おじいちゃん、意地悪じーさんに僕を貸さないで!
僕、撲殺されるー ボコボコにされるー
イヤイヤイヤイヤ!
「バカ言うんじゃないよ。ペットを貸す馬鹿はおらんじゃろ。」
おじいちゃんの声は冷たかった。
センキューおじいちゃん。涙目になるよ……
「そりゃ、そうだな。僕、今、一人暮らしだからさ、ちょっと寂しくて……」
「そうだったな。カミさんは気の毒だったな……」
「婆さん……良い女だったよ。あの、忌々しいタヌキのせいじゃ。タヌキめ……」
え、隣のお爺さんって、あの強欲、愛犬虐待のお爺さんじゃないの?
それに、今、タヌキって、『狸』て言ったよね?
それって、畑荒らして、お婆さん騙して、撲○した、あの極悪タヌキ????
おじいちゃんが隣のお爺さんを見て憐れむように言った。
「あのさ……見た?壺の中身、見えちゃったよね?
小判……少しなら分けてやらんこともないよ。
口止め料ね……人に言うなよ。
警察とか税務署にも。あと、うちのカミさんには絶対ダメ!!!」
「お、おう。」
二人のお爺さんは固い握手を交わした後、畑の木陰で大判小判を数え始めた。
「紳士協定じゃ。」
なんだよこれ??ここはどこ?今日はいつ??昔じゃないの?
そして……なんで僕は人間なのに犬に変身してるんだ?
「わわワン、ワオーン!(助けて、佐藤ー!)」