白い犬
ハーイ。僕の名前は、五菱 輝彦。
かの五菱財閥の御曹司さ。
どのくらいお金持ちかって言ったら、
こち亀でいったら『中川』、ちびまる子ちゃんで言ったら『花輪くん』を想像してくれたら良いと思うよ。
え、爺や?もちろん、いるいる。
僕が幼少の頃から、爺やの佐藤がいつもそばにいて世話を焼いてくれてるよー
え、家?もちろん、でかいでかい。
別荘も含めると国内に五ヶ所と海外にもあるよー
こんな感じで、僕は幼少の頃から「蝶よ花よ」と大切に育てられるのと同時に厳しい英才教育を施されて来た。
そして、とうとう来週の月曜日、
僕の15歳の誕生日に五菱財閥の後継者として世間に大々的にお披露目されることになったのさ!
だが、しかし!!
僕は今、生まれて初めて絶体絶命の危機に陥ってる。
どういう状況かと言うと、
今、僕は、犬になっている!
舗装されていない泥だらけの道に倒れている。
雨が降って来た。
体が濡れて冷える……動けない。
道に水溜りができてきた。
水かさが増している……
うえ〜口に泥水が入ってくるぞー
なんでこんなことに?
ことの始まりは昨日の夕方。
僕は爺やが運転する車に乗って学校から帰宅していた。
車が屋敷に入ってしばらく走った時、
爺やが車の急ブレーキをかけた。
「どうした佐藤!賊か?」
「あ、坊っちゃま……わたくしとした事が、
犬を、犬を撥ねてしまいました!」
無類の犬好きの爺やはショックのあまりハンドルを握りしめて号泣している。
「佐藤……なんて姿だ。ダンディが台無しだ。よし、僕が犬を確認してこよう。」
「ぼ、坊っちゃま……」
僕は後部座席から降りて車の周りを確認した。
犬はいない。
可哀想に、飛んでいってしまったのか?
庭の植え込みを探して見ると犬の白い足が見える。
「ん?立ってる。無事だったのか?」
白い犬が元気そうに尻尾を振ってこっちを見ている。
「おー犬、無事だったか?よかった!」
僕は犬を抱き上げて怪我がないか確認した。
その時犬が話した。
「輝彦、私にお前の夢を見せてくれ。」
ん??
なんでそんな事を犬がなんで人の言葉を話す??
犬なら普通「ワン!」だろう?
そう思った瞬間、犬から光が出て僕はどこかに吹き飛ばされた。そして、白い犬になった。
僕は……このまま犬として死んでいくのか……?
「助けて……」
僕は泥水に浸かりながら意識がなくなった。