去年のクリスマスイブの出来事。
ちまちま書きます(*‘ω‘ *)
――近衛との出会いは確か、去年のクリスマスイブ。
「あー、今年もずいぶん華やかだなぁ……」
俺はクラスの友達と一緒にカラオケに行った帰り、イルミネーションに照らされる街を歩いていた。聖夜と呼ばれる今日は、恋人たちが身を寄せ合うにはピッタリだ。
ただし、恋人などいない自分にとっては友人とバカ騒ぎするイベントに過ぎない。
そんなこんなで、俺は程よい疲れに欠伸をしながら帰路に就いていた。
「……ん? なんの騒ぎだろう」
そんな折だった。
数名の若い男性が、一人の女子学生を取り囲んでいたのが見えたのは。
さらに、絡まれている女の子は自分と同じ学校の制服を着ているようだった。最初はただのナンパかと思っていたが、近付くにつれて男たちの語気が強くなっていく。
そして次第に、使っている言葉が穏やかではなくなっていった。
「てめぇ、綺麗な顔してるからって調子に乗るなよ!?」
「馬鹿にすんのも大概にしろや! 殺すぞ!?」
これは、かなりヤバい。
男たちは完全に頭に血が上っているし、周囲の人は面倒ごとを避けてかかわろうとしない。しかしながら、同じ学校の生徒として無視はできない。
そう思って俺は、警察に一報を入れた後に声をかけることにした。
だが、その直前に女子生徒は――。
「馬鹿に馬鹿って言って、何が悪いのよ。アンタたちなんて、アタシは怖くもなんともないんだからね!!」
なんと、火に油を注ぎに行ったのである。
その言葉で男たちは、完全に堪忍袋の緒が切れた様子だった。
相手が少女だということも忘れたのだろう。一人が握った拳を振り上げ、彼女へ向けて力任せに落とそうとした。――その流れを見て、俺の身体はとっさに彼らの間に割って入る。
その結果、どうなったかというと……。
「ぐあ……!?」
「……あぁ?」
男性の拳は、俺の顔面にクリーンヒット。
一瞬だけ意識が飛びかけたが、倒れ込みながらもなんとか堪えた。
我ながら馬鹿なことをしたと思うが、乱入者が現れたことで男性たちも呆気に取られたようだ。しばしの沈黙が生まれる。そして、それを破ったのは――。
「こらぁ! そこで何をしている!!」
「やべぇ、サツだ!!」
先ほど連絡を入れておいた警察が到着。
クリスマスイブということもあり、近辺に配備されていたのだろう。とにもかくにも、男性たちは大慌てでその場を去っていった。
俺と女子生徒は、ひとまず警察から事情聴取されることになったのである。
◆
……で、簡単な聴取を終えて。
「いってて……」
俺はちょうど近くにあった薬局で、安物の湿布を購入して頬に貼っていた。
助けた女子とは別行動だったのでどうなったか知らないが、とにもかくにもケガ人が出なくて良かったと思う。俺はふっと白い息をついてから、家へ帰ろうと踵を返した。
そんな時、こう声をかけられたのだ。
「…………感謝してないから」
「ん……?」
声のした方を見ると、そこには例の女子生徒。
彼女は怒っているのか、よく分からない表情でこちらを見ていた。詳しい事情は知らないので何とも言えず、俺は首を傾げつつもこう答える。
「別に良いよ。俺が勝手に割って入ったんだから」
「あ、その……そうじゃなく、て……」
「……はい?」
すると、彼女はなにやら口ごもって。
なにを言おうか真剣に考えている様子だった。
「そ、その……!」
そして、しばしの間を置いてから。
大きく張り上げた声で、こう叫ぶのだった。
「だ、大っっっっ嫌い!!」――と。
その年のクリスマスイブ、俺はなぜかフラれたのだった。
そもそも、告白も何もしていないのに……。
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