素直になれない。
(*‘ω‘ *)書きました。
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「アンタとなんて、一緒に帰りたくないから……!」
「……はぁ?」
春になり、二年生へと進級したある日のこと。
俺こと佐々木楓真に対して、藪から棒にそう言ってきた女子がいた。断っておくが、この会話の前後にはなんの脈絡もない。というか、声をかけられたかと思えば、いきなりの暴言だった。当然ながら俺は眉をひそめ、少しばかりの苛立ちを表明する。
「いや、いきなり何言ってるんだ?」
「う、ぐ……!」
ツッコミを入れると、その女子こと近衛茜は唇を噛んで黙り込んでしまった。
アイドル顔負けの愛らしい顔立ちに、強気な性格を思わせる金色の眼差し。しかし今ばかりは、ほんの少しそれが揺らいでいるようにも見えた。紺色の学校指定のセーラー服を少しだけ着崩し、モデルのようにスラリとした身体つきをしているが、例によって現在は縮こまっている。
百人に訊けば、通行人も併せて百二十人が認めるであろう美少女。
そんな彼女の言葉の意図が汲み取れずに、俺はしばし黙ってその顔を眺めていた。
そうしていると、いよいよどうにもならなくなったらしい。
近衛は大きく息を吸い込むと、顔を真っ赤にしてこう叫ぶのだった。
「だからぁ!! アンタなんて、だ、大嫌いって言ってるのよ!!」――と。
放課後の教室内――いや、学校全体に響き渡るような、大きな声で。
「いや、だから……」
「もう知らない! アタシ、帰るから!!」
「……えぇ?」
そして、こちらが困惑しているのを尻目に。
彼女は自身の鞄に教科書一式を詰め込み、教室を飛び出していった。残された俺は眉間に皺を寄せるしかなく、ただ台風が去っていった方向を見つめる。
しばらくして、隣の席にいたクラスメイトに訊いてみた。
「あれ、なんだったんだ……?」
「……さあ?」
――だが、答えなど出るわけがなく。
誰しもが首を傾げることしかできなかったのだった。
◆
「ああああああああああああああ!! ――どうして、こうなるの!?」
――その後、商店街にて。
近衛茜は、周囲の目などまったく気にする様子もなく声を荒らげていた。正確にいえば、気にするほどの心の余裕なく、自身の不甲斐なさに荒んでいたのだ。
それというのも、先ほどの教室でのこと。
茜は弱気な自分を押し殺して、一世一代の覚悟で彼に声をかけたのだ。
「一緒に帰ろう、って言いたかったのにぃ!!」
だが緊張のあまり、思わず口から出たのは真逆の言葉であって。
しかも会話の脈絡もあったものではなく、どう考えても頭のおかしい女子になってしまった。そのことに彼女は煩悶し、思い切り頭を抱えてしまう。
そして、涙目になりながらうずくまった。
「どうしていつも、変なこと言っちゃうのよぉ……?」
道の片隅で小さくなった茜は、そう呟く。
それというのも、素直ではない自分に対する怒りだ。
心のままに、一緒に帰りたい、と言い出すことができなかった。そんな近衛茜という少女は、とにかく口下手で、いつも思った通りに会話ができない。
もっともその結果として、まったく真逆の発言をするメカニズムは不明だが。
とにもかくにも、近衛茜という少女は素直ではなかった。
「…………帰ろ」
ひとしきり叫び終えて、近衛茜はトボトボと帰路に就く。
明日こそは、素直になりたい。
もう何度目か分からない、そんな願いを胸に抱きながら……。
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