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素直になれない。

(*‘ω‘ *)書きました。

応援よろしくお願いします。


頑張って甘々に持っていくぞ()









「アンタとなんて、一緒に帰りたくないから……!」

「……はぁ?」




 春になり、二年生へと進級したある日のこと。

 俺こと佐々木楓真ふうまに対して、藪から棒にそう言ってきた女子がいた。断っておくが、この会話の前後にはなんの脈絡もない。というか、声をかけられたかと思えば、いきなりの暴言だった。当然ながら俺は眉をひそめ、少しばかりの苛立ちを表明する。



「いや、いきなり何言ってるんだ?」

「う、ぐ……!」



 ツッコミを入れると、その女子こと近衛このえあかねは唇を噛んで黙り込んでしまった。

 アイドル顔負けの愛らしい顔立ちに、強気な性格を思わせる金色の眼差し。しかし今ばかりは、ほんの少しそれが揺らいでいるようにも見えた。紺色の学校指定のセーラー服を少しだけ着崩し、モデルのようにスラリとした身体つきをしているが、例によって現在は縮こまっている。


 百人に訊けば、通行人も併せて百二十人が認めるであろう美少女。

 そんな彼女の言葉の意図が汲み取れずに、俺はしばし黙ってその顔を眺めていた。


 そうしていると、いよいよどうにもならなくなったらしい。

 近衛は大きく息を吸い込むと、顔を真っ赤にしてこう叫ぶのだった。





「だからぁ!! アンタなんて、だ、大嫌いって言ってるのよ!!」――と。






 放課後の教室内――いや、学校全体に響き渡るような、大きな声で。



「いや、だから……」

「もう知らない! アタシ、帰るから!!」

「……えぇ?」





 そして、こちらが困惑しているのを尻目に。

 彼女は自身の鞄に教科書一式を詰め込み、教室を飛び出していった。残された俺は眉間に皺を寄せるしかなく、ただ台風が去っていった方向を見つめる。

 しばらくして、隣の席にいたクラスメイトに訊いてみた。




「あれ、なんだったんだ……?」

「……さあ?」




 ――だが、答えなど出るわけがなく。

 誰しもが首を傾げることしかできなかったのだった。











「ああああああああああああああ!! ――どうして、こうなるの!?」






 ――その後、商店街にて。

 近衛茜は、周囲の目などまったく気にする様子もなく声を荒らげていた。正確にいえば、気にするほどの心の余裕なく、自身の不甲斐なさに荒んでいたのだ。

 それというのも、先ほどの教室でのこと。

 茜は弱気な自分を押し殺して、一世一代の覚悟で彼に声をかけたのだ。





「一緒に帰ろう、って言いたかったのにぃ!!」





 だが緊張のあまり、思わず口から出たのは真逆の言葉であって。

 しかも会話の脈絡もあったものではなく、どう考えても頭のおかしい女子になってしまった。そのことに彼女は煩悶し、思い切り頭を抱えてしまう。

 そして、涙目になりながらうずくまった。




「どうしていつも、変なこと言っちゃうのよぉ……?」




 道の片隅で小さくなった茜は、そう呟く。

 それというのも、素直ではない自分に対する怒りだ。

 心のままに、一緒に帰りたい、と言い出すことができなかった。そんな近衛茜という少女は、とにかく口下手で、いつも思った通りに会話ができない。


 もっともその結果として、まったく真逆の発言をするメカニズムは不明だが。

 とにもかくにも、近衛茜という少女は素直ではなかった。

 




「…………帰ろ」




 ひとしきり叫び終えて、近衛茜はトボトボと帰路に就く。


 明日こそは、素直になりたい。

 もう何度目か分からない、そんな願いを胸に抱きながら……。



 


面白かった

続きが気になる

更新がんばれ!




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