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epilogue 竜と姫と英雄と
エルザリータと水竜イェルクの交流はこうして始まった。
水竜は彼女との約束を律儀に守り、街に現れる際は必ずヒトの形をとった。時には王子も交えお茶を楽しむ光景が散見された。少年の正体については伏せられ真実はごく限られた者だけに明かされた。
あの日交わした王子との約束がとんでもない勘違いだったとエルザリータが知るのはさらに数ヶ月後のことである。
彼女は血相を変えて非礼を詫び、分不相応を理由に辞退を申し出た。王子は「家柄は不問。無知はこれから知ればいいだけのこと」と一蹴し、全く動じることはなかったという。
ふたりはそれから少しずつ距離を縮め、夫婦となると終生仲睦まじく暮らしたと言われている。
災いの竜を追い払った英雄と、彼に救い出された麗しの姫。ふたりの物語はその後長く語り継がれることとなる。
だが追い払われたはずの竜が実は姫に懐き、友情を育んだことはあまり知られていない。
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