転移されたことによる得た能力
テーブルが燃える中一人だけ席を立っている俺は周囲の注目の的になっていた。
「そこの、名前……何だったけな?思い出せねぇ……まあ名前何てどうでもいいか、地味野郎その炎テメーが出したのか? そいつがお前の能力か?」
地味野郎とはどうやら俺のことのようだ。
俺は自分の能力の説明がめんどくさかったので即答した。
「そうだ。目の前に炎を出すのが俺の能力だ」
俺は適当にそう言った。
「ほう、貴様の能力は火を操る異能力か……発動条件は見ることか?
いや、まだ断定は出来んな、だが、見るだけで発動するなら強力な異能力だ!
まあ我が異能力の敵ではなさそうだがな! いや、この異世界の地で得た、
身体能力の強化や、実戦での戦闘センスなどを含めるとまだ解らないか……
特に異世界の地に来たことによる身体能力の強化についてはまだ解らないことが
多い……検証のため実際に戦ってみた方が早いか? いや、まだ我が異能力を使うには早すぎるか……検証か、温存か、実に悩む」
周りが黒い学生服を着ている中、一人白衣を着ている異物が
現在も燃えているテーブル越しに話しかけてきた。
クラスメイトの一人御子神冥界だ。この異物は授業中、いや俺が知る限りは常に
細身で白衣を着続ける異常者だ。もちろん教師達はこの異常者の恰好を注意し続けたが、意に返さず、少なくとも学校生活の三年間は常に白衣を着続けた。
当然この異常者は春馬たちの虐めのターゲットにされたが、まったく気にせず
暴力を振るってきた春馬達を体格差が有りながら一方的に叩きのめす実力を持つ。
そんなクラスの異常者が、俺に興味と何かの期待が込められた視線を浴びせながら
こちらに、一方的に、話続ける。
その話を無視していると、隣に座っている一真が話しかけてくる。
「……有月、お前の能力で火消したほうがいいんじゃないか?」
俺は今も燃えているテーブルを見る。火の勢いは増すばかりだ。
「火ヤバくない?」
「おい、このまま消さなきゃ火事になるぞ」
一向に消えず、逆に燃え続けるテーブルにクラスメイト達が慌てだす。
「……私の能力で消してみる」
そう言いクラスメイトの白石百合が椅子から立ち上がった。
百合の周りにどこからか風が集まり出した。
集まった風が火の回りを囲う、すると、風に包まれた火がどんどん小さくなっている。風の勢いが増すごとに、火はさらに小さくなる。
「ふぅ……」
「……百合凄い」
「咲夢ちゃん、えへへ~全然そんなことないよ」
無事火を消した百合は咲夢と呼ばれた少女に褒められて照れだした。
「火の周囲にあった酸素を風により外に出しながら、更に風を増すことで
鎮火したか。ここは室内で無風だったがそこに火を消すだけの風を集めるとはな……いや、集めたのではなく無理やりこの場に風の流れを創ったのか、そしてその風は彼女の自由自在に動かせるのか……火の異能力も強力だったが、あの風の異能力も相当な物だな、しかし、火の異能力者はどうして火を消さなかった? 火を着けることが可能でも火を消すことは無理なのか? いや、それとも……」
異常者がまたブツブツと呟き出した。
「これが能力か、なるほどな。おい健介お前を俺の能力の実験台にしてやるよォ、
嬉しく思えよォ」
春馬が指を鳴らしながら、健介に近づいて行く。それに反して健介は後ろに逃げていく。
「逃げんなァ──!! 健介ェ! 蒼生、健介押さえろ」
「了解っす。春馬さん、オラァ! 健介じたばたするんじゃあねえぜ」
春馬の指示に従い蒼生は健介の手を抑える。
「健介ェ俺の能力は怪力みたいでよォ~、顔殴っちまったら一生モンの傷になるからよォ~腹で勘弁してやるよォ! 俺は優しいからなァ! 死なねぇように加減はしてやるぜェ~」
春馬が笑いながら健介に近づく。健介は悲鳴をあげ拘束を解こうとしている。
「暴れんな、暴れんなよ。健介。早く春馬さんやっちまって下さい」
「ほら、いくぜェ! 健介ェ歯ァ食いしばっとけ!」
春馬の腕が思いっきり振りかぶられた。その拳を健介は腹で受け止めた。
健介は悲鳴を上げ血を出した。それと同じく春馬も悲鳴を上げ血を出す。
「痛ェ!! 健介テメェーこの屑が、俺に何しやがったァ!!!」
春馬は怒りのまま健介の腹を蹴り飛ばす。健介は腹を押さえて痛がる。
それと同時に春馬も腹を押さえた。
「なんだァ? こいつを蹴ると俺まで痛てェ?」
「……これは、僕の能力だ……今までお前に虐められてきたのを耐えてきた。
僕に、神が与えてくれた。力なんだ! 僕が受ける痛みをお前も受ける。
それが僕の能力ッ!」
健介はまだ痛む腹を押さえ笑いなれてないのか不格好に笑う。
「健介ェ! この屑がァ! 調子に乗ってるんじゃあねえぞ!!」
春馬は健介の腹を再び蹴ろうとしたがすんでの所で止め舌打ちをした。