いつも通りの日常(後編)
健介が顔を洗いに行き少しした後、御手洗勇希たちが入ってきた。
「おはよう。みんな、騒がしいみたいだけど何かあった?」
「勇希どうせ春馬の馬鹿が何かしたに違えねえよ」
続けて木村戦鬼が話す。
「へへへ優等生様たちには関係ねえことよォ」
「また健介くんを虐めてたんだね……」
「アイツにそう聞いたかァ? 虐めとは違うなァ、一人寂しくしてるアイツに友達として仲良くしてただけだぜェ、なあ蒼生」
「はい春馬さん卒業前まで一人のあいつと友達として仲良くしてただけっすよ」
他のクラスメイトたちは口を閉ざして何も言わない。斎藤春馬と言う男に関わり合いたいと思わないからだ。俺もクラスメイトを見習い静かに小説のページをめくる。
「春馬くん今はそれで誤魔化せてもいつか酷い目にあうわよ」
「あと数日の付き合いのこの俺に麻子さんはお優しいことでェ」
春馬は麻子を馬鹿にしている口調で煽る。
実のところこのクラスは学級崩壊ぎりぎりで成り立ち無事卒業式前日まで来れたのには理由がある。
それは容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の完璧超人の御手洗勇希とその親友二人、武闘家の息子で格闘技全国大会優勝の木村戦鬼とクラスの女子大半と仲が良くクラスの女子の顔役の八木麻子の存在にある。
この三人がクラス内で春馬に虐められそうな子たちにを庇いクラスがなんとか崩壊しないように努力していたからだ。斎藤春馬がこのクラスの闇だとすれば、御手洗勇希たちは光と呼べるだろう。そんなクラスのいつも通りの風景を横目に俺はページをめくり続ける。
「よお、さっきぶりだな、有月」
その親友の声を聞き俺は小説を読む手を止める。
「一真、思ってたより早かったな。杏はどうした?」
「あいつは置いてきた俺まで遅刻しそうになったからな……それよりまたいつものか?」
「ああ今日のは特に酷かったな、まあどうでもいいことだが」
「お前な目の前で暴力沙汰があったのにほんといつも通りだよな、酷いといえばお前もだぞ、ああなった杏がめんどくさいのは知ってるだろ。今日の買い出しお前一人で行けよ!」
「ああ分かった」
俺は二つ返事で一真の言葉を適当に流す。
その後、始業チャイムギリギリに杏はやってきた。
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「お前たちと次に会うのは卒業式の日で最後だがくれぐれも気を抜かず、事故とかに気を付けろよ」
担任がそう言い卒業前最後のホームルームが終わり担任が教室から出て行った。
「有月、今朝の約束覚えてるよな?」
「買い出しのことだろ覚えてる。すぐ行ってくるよ」
「お前卒業前最後の放課後だぞ。話し相手とかいないのか? 友達とか好きな子に告白とかさ」
「いないな」
「即答かよ。じゃあ買い出し頼むわ。ほいこれ買い出しのメモと金な」
俺は一真からメモと金を受け取り教室から出ようとする。
「開かない?」
教室のドアがびくともしないここの教室のドアには鍵がついておらず普通の引き戸なのにだ。
「おいドアが開かないぞ、どうなってやがる」
どうやら反対側のドアも開かないようだ。
突然、教室全体が光だし光が教室全体を包んだ。
その光が消えた時に教室内はそこにいた人だけが消えていた。