いつも通りの日常(前編)
中世ヨーロッパ風の街の中、俺は考えていた。
上手く同じく異世界転移したクラスメイトたちから逃げられたがこれからどうするか、そもそもどうして、クラスメイトたちから逃げ出すはめになったか今朝までは一般人だったクラスメイトたちが異世界転移し謎の能力に目覚めただとか、一日で色々なことがありすぎて考えがまとまらない。
「とりあえず今日一日のことを振り返った後、これからどうするか考えるか……」
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その日は中学校卒業前最後の普通の学校生活を送るはずだった。
「ゆーちゃんもかずくんも孤児院での生活もあと少ししかないんだよ~少しぐらいお姉ちゃんの朝食作り手伝ってくれてもいいんじゃないかな~」
食事中清水杏は言った。
「杏食事担当を言い出したのは自分だろ。なら最後までやりとげるんだな。俺と誕生日一日違いで自分のことを姉と言うのは少しきついと思うぜ。なあ、有月お前もそう思うよな」
一真が俺に同意するように話しかける。
「杏も一真も今は食事中だ。静かにしろ」
「かずくんお姉ちゃんゆーちゃんに怒られちゃったよ~」
杏が一真に泣きつく
「泣きつくな怒られたのは俺も同じだ。こいつがこういう性格なのは長い付き合いのお前も知ってるだろ」
毎朝うるさく騒がしいこんな生活も後少しで終わるのかと思うと少し悲しい気持ちにならないこともない。
「ごちそうさま。杏、一真先に学校行ってるぞ」
「お粗末さまでした~行ってらしゃいゆーちゃん~」
「学校に行くのはお前もだ杏、早く食え遅刻するぞ。有月、面倒事俺に押し付けて先に行こうとするな。おい、まて有月」
喋り続けている一真を無視し俺は孤児院を出て学校に向かった。
学校についた俺はいつも通り自分の席で小説を読んでいた。
「健介今日も変わらずムカつく顔してんな。一発殴ってやろうか」
「やめておけ蒼生お前の手が汚れるだけだぜ。それより健介アレもってきたか?」
「……ごめんなさい。……持ってきてないです」
「持ってきてない? 春馬さん、こいつ調子乗ってますよ、ぼこっときましょうよ」
斎藤春馬の取り巻きたちの女たちがゲラゲラ下品に笑う。
このクラスのいつもの光景だ。今誰も虐められてるヤツを助けるヤツはいない。それも当然だ、春馬たちはクラスメイトの一人を自殺未遂にまで追い詰め不登校にしているからだ。
不登校児の代わりに目を付けられたのが前田健介という男だった。このクラスの闇を横目に俺は静かにページをめくった。
「健介よォ持ってきてねェてことは無いんじゃあねえかぁ、アレによォどんな意味が有るか分かってねえんじゃあないか? 蒼生可愛がってやれ」
健介が一方的に殴られる。血だらけの健介が口から血を出し喋り出す。
「ごめんなさい。出します。出しますから」
四つん這いの健介が鞄から必死になにかを出そうとする。鞄から出てきたのは万札だった。
「おお、なんだ有るんじゃねェか。じゃあさっさと出せよ」
健介の手から万札を取り春馬は健介の口に足を思いっきり突っ込んだ。歯が折れたのか健介の口から血がでる。
「おい健介なんでお友達料金を出し渋った? お前もしかして今日をしのげば、もう大丈夫だと思ってんじゃあねえか? 友達ってのはよォ──! たとえ卒業してもずっと続くもんだよなぁ! 来週からもずっと変わらず週一わかってんだろうな。てめぇら今日は卒業記念で焼肉俺のおごりだぁ!」
「春馬ちゃんかっくいー」
「太っ腹すね春馬さん。だってよ健介、春馬さんお前とずっと友達でいてくれるってよ。嬉しくて泣いてんのか顔洗ってこいよ、血もしっかり落としてから戻って来いよ」
春馬と取り巻きたちがゲラゲラと笑い出した。