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シリルとチェルシー

「少し疲れたね、休もうか?」


 ダンスを終えてシリル様がそう言いました。


「そうですね。あっ、シリル様、衣服に乱れが」


 ネクタイがズレていたので近くに寄って直した。



「よし、これで良いですわ」



 満足して笑顔でシリル様を見ると顔が赤くなっていましたわ。



「どうかしました?」



「いや。ありがとう、少し暑いね」



 手でパタパタと顔を扇ぐシリル様を見て、暑かったからお顔が赤くなったのだ。と理解しました。




「お庭の散策に行きますか? 夜風に当たるもの悪くないですね。ライティングされているのでキレイですもの」



 お庭は開放されていてランプが灯され幻想的な雰囲気が漂っていました。



「うん。そうしよう」



 私の手を繋いでシリル様が歩き出しました。なんとなく悪い気はしなかったので繋いだ手はそのままにして、お庭の散策です。



「わぁ! 素敵なブルーローズ」



「良い香りだね、ランプに照らされて昼間に見るのとはまた雰囲気が違って良いね」



「こちらの白薔薇もとても手入れが行き届いていますね。白い薔薇が浮き上がっているように見えませんか?」



 美しいお庭を見て、興奮気味に話しかけると、くすくすと笑い声が隣から聞こえてきます。



「なんですか?」



「チェリーはどうして僕の前で口調を崩さないの? 前のように普段通りに話して欲しいんだけど……壁を作られているみたいで嫌なんだ」



 まるでワンコのように可愛らしい目つきでこちらを見てくるものですから、つい頭を撫でしまいました。

 ふわふわの柔らかい少しだけウェーブかかった金髪は触り心地抜群です。身長が伸びたので背伸びをしないと届きませんね……



「子供扱いしてる? 僕の年齢知ってる?」



 少しむくれたような口調でした。



「ごめんなさい。つい昔を思い出してしまって」




 シリル様と初めて会ったときは、年齢がひとつしか違わないけれど、とても小さくて華奢で可愛らしい顔をしていました。

 髪の毛もくるくるとしていてふわふわで、同じ歳のヒューバードと遊んでいても歳下に思えるくらい……。




 可愛らしくてつい構いたくなるような子だったので、うっかりしていました。



 今では私よりも身長が高くて、筋肉もついて貴公子と言った方がしっくりきます。



 ユリシーズ様と婚約が決まってからは、こういう風に話をする機会もなかったので、懐かしくも嬉しく思いました。



「昔は良く頭を撫でてくれてたっけ」



「ふわふわで気持ちが良いものだから、それに可愛らしくて…」



「今もまだチェリーにとって僕は可愛い子止まり?」



 首を傾げてわざと可愛らしい姿を見せるシリル様。



「いいえ、もう可愛い子なんかではないですよ。身長も伸びてこんなに筋肉もついて、男性になったのですね」




「僕は騎士団に所属することが決まっている。絶対に後悔させないから、婚約して欲しい。ずっとチェリーが好きだ。この先もずっと」



 跪かれて告白をされたものですから、驚いて声に出すことができませんでした。シリル様の真剣な目つきは先程のワンコのような目とは違って……



「はい」と答えました。



「ほんとっ!?」



「私でよければ、シリル様のお兄様には選ばれなかったですけど、よろしくお願いします」




「やった! 兄上がバカなおかげでチェリーと婚約できる。早速両親に報告する! それでフルーリー伯爵にも挨拶へ行くだろ? 早い方が良いよね! 祖父母にも報告しなきゃ! あとは?」



 ねぇ! ねぇ! とはしゃぐシリル様はやっぱり可愛いくてつい笑みが溢れました。喜んでくれるんだ……。大切にしたいなぁ。



「私も侯爵家へ行っても良い?」



「もちろん、嬉しいよ」






 その後、シリル様に屋敷まで送ってもらい、両親への報告をしました。



 シリル様はお父様に、覚悟はあるのか? と聞かれて、はい。お任せください。と真剣な顔つきで答えていたのが印象的でした。


 明後日、婚約の報告へ侯爵家へと行って来ます。




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