第94章 名もなき影の誘惑☆☆☆///
幸恵はペントハウスのオフィスの眼下に広がる「モモ地区」の景色を夫である立花との若き日々の想い出を振り返ったことで、只虚ろ気に眺めている。
「コン コンッ!」
部屋のドアがノックされると秘書が現れ、一人の男が中に通される。
「よう、お久しぶり!」
その年老いた老紳士は、かつての面影をわずかに引きずった、立花博士そのものであった。
幸恵はあまりのことに、コーヒーカップを持つ手をカタカタと震わせながら冷たい視線で立花を凝視する。
「あらあら、はるばる遠い星からよくご無事で!かつての敵の私にわざわざ会いに来るなんて、一体なんの御用かしらね?」
幸恵がそう云うのも無理もない。
何せ地球時間で1000年以上前に「惑星・ムソルグスキー」で戦ったのを最期に、その後星からの脱出を果たして以来での再開であったのだから、幸恵が疑問に思うのも無理はない〜〜〜
立花博士は幸恵の視線を避け、話をさえぎる。
「君がかつて探していた情報を持ってきましたよーーー
コレはね、私たちの研究チームが発見した新しい素材の試験結果さ。きっと君も気にいるだろう!」
幸恵は不思議なことを言う立花にしばらくポカンとくちを開いていたが、改めて我に返ると試験結果に興味津々の表情で、立花博士が差し出したフォルダを開いた。
幸恵が立花の唐突な申し出に違和感さえ覚えたままでいることには知らぬ顔の様子で、尚も立花博士は話を続ける。
「この素材はこちらの銀河系の中でも特に非常に素晴らしいものなんだ。
すぐにでも製品化に着手したいと思うのだが、どのように宇宙界隈に浸透させるかが問題だがね。」
そう云うと、立花博士はフォルダを閉じて、そそくさと立ち上がる。
「あらま、貴方はこの1000年感の間にこの宇宙空間を彷徨う行商人にでも成ったのかしらね?もしかして押し売りですか?
ま、宜しいでしょう。
この件については私たちが追々考えましょうかしらね。
あなたがたは、今後はただ素材の開発に集中していってくださいな。」
立花博士にそう言うや、幸恵はガードマンに彼を突きだすようにして送り出しすのだった。
正直、立花が去った後も動揺を抑えきれなかった。
そう、何か新たなる問題が勃発しそうな恐怖の予感がしていてーーーー
翌日、今度は幸恵が立花博士に呼び出された。
あるホテルの一室に入ると、そこには男がいた。
「あなたには大変な能力があると聞きました。それを利用して、私たちと一緒に仕事をしていただきたいと思います。」
立花の代理人だというその男は不意に幸恵に話しかけた。
幸恵は疑問を抱きながらも、その仕事内容を聞くことにする。
内容は、彼らが企んでいたのは、新しい素材を使った軍事技術の開発提案だった。
幸恵は、かつての戦いの記憶がよみがえり、しばしの間考えてみる。
それから数分後、彼らの提案を断ることを決意した。
しかし、彼女が席を立とうとした瞬間、現れた複数の男たちは彼女を拘束した。
「勘違いしないでくださいよ、あなたの存在は既に私たちの手中にあるのですから。
あなたの能力を利用することをもしも拒むのなら、あなた自身が被験者となることを覚悟してください。」
男は冷酷な声で告げた。
幸恵は必死に抵抗したが、男たちは彼女を容赦なく拷問しようとした。
彼女は、宇宙空間で巻起こったかつての数々の戦いで身につけたフォースを振り絞りながら、最後まで抵抗したのだった〜〜〜
次の瞬間、彼女はフォースから目覚めると、そこはかつてのオフィスに戻っているのに気づく。
幸恵は先程までの自分がどうなっているのかを理解できずにいた。
「よく戻ってきましたね、幸恵さん。」
そう言って、いつの間にか現れた植物星人犬・桜が幸恵の前に現れた。傍らにはナティスも立っている。
「私、一体どうなっているの?あの男たちは?で、その方は?」
幸恵は訳も分からずに質問を投げかけ続けた。
「あの男たちは、かつて宇宙空間で立ち寄った星に居た、あなたを拉致して実験をしようとした組織の一員なのです。
彼らは立花博士の開発した素材を手に入れるためストーキングしていたのです!
そこで私はあなたを救出するため、立花博士に協力を依頼しました。」
桜は幸恵に丁寧に説明した。
幸恵は、立花博士に救われたことに不安と安堵を混在しながらも、心の中では自分が再び立花の持ち込んだ試験結果を持ち合わせたことで、今後も何かしらの戦いに巻き込まれることを恐れた。
実際、その後も幸恵は戦いを避けることはできなかったのだが。
彼女は、新たな脅威に立ち向かうため、再び立花博士や桜たちとも協力して戦うことになろう。
彼女は、かつての戦いで身につけたフォースと立花のから伝授された「SHADE」能力を駆使しながら、新たな敵と戦うのだろうか。
幸恵は、再び平和な日々を過ごせることを願いながらも、しかし此処、惑星「名もなき影」を目指す宇宙人がこれからも訪れる続けるだろうことを危惧するのだった。
to be continued!!☆☆☆///