第8章 彷徨える子羊たちよ・・・
コスモの絆☆☆☆ 第8章 彷徨える子羊たちよ・・・
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Scene.18 大気圏突入へ.2
宇宙船「トルストイ」に乗船した客室には、あらゆる政治的なしがらみ、及び企業などの営利機関と接触のない立場を取っている非営利な人物たち。
シンクタンク及びAI機関から最先端の技術供与、先鋭的教育機関や宇宙関連頭脳集団との協力の下に選抜された200名ではあったが、「宇宙病」の猛威は凄まじく、現在は残念ながら既に40余名にまで減っていた。
一同はモニター越しに映し出される「炎の鳥」を複雑な心境で見守っている。
時折船長から説明される情報を共有しながら、来る「惑星ムソルグスキィ」にそれぞれの
期待と不安はいやおうなく高まっていった。
広めのテーブル席に陣取ったWHO長官メルトとインド医療財団長官グスタフが何やらひそひそと話している。
「メルト君、この「炎の鳥」から発せられる閃光は如何な物だろう。まさか放射性物質の可能性は?何だか蝶の鱗粉のように漂ってはいないかい?先般の「宇宙病」同様に新たな私達への脅威にはならないだろうね?」
「仰るとおり、既に化学博士が解析済みです。どうやら金属粉、それもどうしたことか金粉との結果でして・・・何とも勿体無いことで・・・・」
「金粉?ほほぅ、これはたまげた!ちゃんと採取しとかなければね、ハハッ!」
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シリア事務次官、哲学、宗教学博士は奥の別室で議論を交わしている。
「この星に高度文明が存在しているとすれば、私達の最先端技術を凝縮した宇宙船ごとき虫けらに過ぎないだろう。腹の虫の居所が悪ければプチッと一瞬で消されてもおかしくはないぞ。」
「そうですが、「炎の鳥」に誘引されている様子からすると、どうやら安全に受け入れてくれているのではないでしょうか。」
「国が違えば宗教観も違いますし、ましてや超越した過去の地球にあった文明と推測した場合、恐ろしく時が経っていますので、我が文明人と似ても似付かないほどの思考形態であるのは確かでしょう。言語を使っているとも限らず、脳波で送受信など考えられませんか?」
「或いは、時が経ったとは言え、私達の「時」の観念ほど進化しているとは限らない。未だ動物的な感性で本能的に生活しているだけかもしれない。とすればこの「炎の鳥」の誘引行動も興味本位なのかもしれません。」
「もしや・・・鳥の場合、親鳥はエサを獲ってきて子に与えるが・・・」
「ヒィツ!く、それじゃあ俺ら、食われちまうのか?」
「ははは、ものの例えですよ!」
不安を携えながらも一同がウイスキー片手に屈託無く笑いあう。
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別席ではCIA長官、法務官が神妙な表情を浮かべている。
「もしこの星の住民が敵であった場合、私達に対する目的行動は何が考えられるかね?」
「先ず、地球上での過去に起こった侵略の歴史から察すると、相手の領地や物品、労働力を略奪することが考えられますが。」
「ううむ。しかしこの宇宙船はそもそも宇宙ステーションであったから、武器等積んでおらんだろう。応戦は皆無だな。」
「それがですねぇ・・・此処だけの話、どうやら私達には伏せられていますが、過去の宇宙戦争に使用した電磁パルス砲、核ミサイルが搭載されているとの事です。こっそりキューバ軍部長官から聞き出しました。ですからご安心を。」
「しかし、もしもだが。略奪されるとしたら、この最先端技術の詰まった宇宙ステーションが筆頭に上がる。そして挙句の果てにワシらは家畜のように扱われ・・・奴隷としてこの星で終身労働を課せられるやもしれないな・・・」
「その時は私達の運命はおしまいでしょう。しかし、私達にも勇気はある!何たってこの無限の宇宙に地球を捨てて飛び立ってきたのだからね。金銭的な社会文明をかなぐり捨てて此処までやってきたじゃぁないですか。何を今更。」
「そうだな!やぁ、その時はそのときさ!アスタマニャーニャ!明日は明日の風が吹く!ってね。」
何か晴れやかな表情に変わった二人はワインボトルを開け、未来に乾杯する。
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自然気象学及び宇宙物理学、科学、化学、地理、物理、生物学博士の面々は、長時間熱い討論を交わしている。
「AIからの解析データを見ると中々興味深いね!」
「地表の成分構成からするとおおよそ最低限防護服だけでも何とか生活できそうだ。」
「気象の変化についてもこの時期においては穏やかな様子、地球の中でも快適に過ごせる大陸同様な大地が広がっているようだ。」
「ああ、ここまで地球に近い環境である事は誠に驚きだ!」
「ですが・・・大気が分厚く辺り一面を覆っているので、光合成は無理なのでは?」
「近未来文明ならばLEDを使用するが、星全体を照射すると考えると無理だな。」
「ということは、野生生物の存在は不可能かもな。」
「ほら、地球でも遥か深海に生息している生物が存在しているぞ。」
「水は潤沢にあるから可能性は高いな。ケミカル濃度にもよるが。」
「何しろ季節変化まではこの短期間でのデータのみでは解明しがたい。たまたま今の公転の時期によって雲が晴れないだけかもしれない。長いスパンでの光合成能力を獲得するなど、特有の進化も考えられるな。」
「うん、わくわくするなぁ!はやく降り立ちたい!」
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カウンター席で到着もしていないのにまたも祝い酒を交わしているのは、いつものタイ国王と占星学博士雨宮女史。
「あら、タイ国王様、又お会いしましたね。」
「これはこれは雨宮さん」
「あの「炎の鳥」の発光をみていると、何だかロマンティックですわね。」
「そうですね、ところで今日のこの星は占星学的に如何で?」
「先日もお話しましたように、私達の心理に何かしらの影響を引き起こす要因がどうやら「炎の鳥」にあるようです。既に私達の目的と関係なく誘引しているところを見ると、主導権は相手側にあると思われます。今のところ主だった波乱は見られませんが、友好的であるかどうかはまた別の問題でしょう。」
「抽象的で判りづらいのですが・・・ならば私がこの新天地で手腕をふるい、明るい未来の平和な星にしようではありませんか。ハハッ!」
「はぁ。ですがこの星の先住民さん達と仲良くしないとダメですよ。」
「無論、大丈夫。皆が協力してくれればねっ!」
「それは大丈夫。此処に人選された恵まれた方々も「宇宙病」以来多くの死者を排出したせいで地位肩書きやエゴがすっかり洗い流されたようなので!」
「それならば心配はいらんね!」
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////// To Be Continued ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆