第76章 シクラメンの花が咲いているⅡ ***
コスモの絆☆☆☆ 第76章 シクラメンの花が咲いているⅡ ***
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Scene.102
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砂の星に残された人類の末裔達は相馬船長の説明に従い、それぞれ「宇宙船・トルストイ」に乗船してゆく。新たなる「惑星・名もなき影」への期待と不安を引きずりながら・・・・
客室には総勢40余名が集っていた。
すると客室のディスプレイが表示され立花博士が映し出される―――
「皆さん、この砂の星での滞在時間は1週間と短い期間ではありましたが、少しばかりの地上でのひとときをお寛ぎいただけたでしょうか。我らが「宇宙船・トルストイ」はこれから新たなる「惑星・名もなき影」への航海へと繰り出します。皆さんもうわさではご存知かと思いますが、その星はかつての「惑星・ムソルグスキィ」同様に幸恵の覇権により牛耳られようとしております。その星に滞在していた我らが英雄・ナティス君の情報によりますと、その星はもともとAIが神のような存在として統治する進化した文明であり、景色はかつての地球にそっくりの星であります。その星はどうやら宇宙空間において絶大な影響を与えかねない中枢として機能もしています。
しかし我々を裏切った3人、幸恵、その部下となったかつての我が親友・浮谷教授、そしてワタシの側近だった植物星人・桜によって徐々にその星の神的存在であるAIに働きかけ、かつてのような幸恵の「エゴ」により侵略しようと画策されているのです。
それはいわゆる独裁国家として君臨し、ひいては宇宙空間の制覇に繋がることが予測されます。
そこでです、我々に化せられたMissionは、幸恵からの占領の阻止とその星の住民の援護をすることにあると痛感させられたのです。みなさん、我々のかつての地球を思い出してください。緑豊かな大地。青い海、白い砂浜・・・かつての地球においても経済社会による利権やエゴ、環境汚染、その後の火山活動による崩壊が起こりましたが、我々が経験した難関をクリアする事ができれば、きっと未だかつてないほどの理想郷として存在する事ができると信じています。
みなさん、我々人類の寿命も残り僅かとなりましょう。その終焉にささやかながらも良いことをしませんか?私達の望む明るい未来を構築しようではありませんか!ひいては宇宙空間全体にそのテーゼは波及していく事でしょう。私はそう信じて止みません!
一足前に我らが英雄・ナティス君と流石助手は「SHADE」のフォースにより旅立って行きました。今頃「惑星・名もなき影」に到着し、幸恵の牙城に迫ろうとしています。
しかし彼らだけの微力ではこのMissionは成功しないでしょう。そこでです、我々英知を極めた各界にて成功を収めた見識のある人類の末裔が共に戦う事で、正義は守られると考えております。皆さんの協力が必要です。共に戦おうではありませんか!
立花博士からの熱弁により皆が心を打たれるのであった――――
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広めのテーブル席に陣取ったWHO長官メルトとインド医療財団長官グスタフが何やらひそひそと話している。
「メルト君、「惑星・名もなき影」にわれわれは無事に到着できるのであろうか。ほら、以前も宇宙空間を漂流する中で「宇宙病」により多くの犠牲者が出てしまったではないかね?」
「はい、その件に突きましては既に対策が講じられております。実際AI解析で確認したところその原因がどうやら植物由来だと特定されたのです。発見が遅かった事は誠に残念であります・・・・」
「なるほど、では安心だな。それよりも新たなる旅立ちの美酒による呑みすぎのほうが心配だね、ハハッ!」
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シリア事務次官、哲学、宗教学博士は奥の別室で議論を交わしている。
「例の星に既に高度文明が存在しているとすれば、侵入者について警戒している筈だろう。いきなり攻撃される危険性はなかろうか?やはり腹の虫の居所が悪ければプチッと一瞬で消されてもおかしくはないぞ。」
「そうですが、これまでも窮地に立たされた際は「炎の鳥」に誘引される形で何度も救われているではありませんか。それよりも地球と同様の精神世界なら安全に受け入れてくれているとも考えられないでしょうか。」
「過去の地球であっても宇宙戦争が勃発しそうに放っていたぞ。その文明が我々の創造よりも遥かに高度であった場合、恐ろしく思想の形態も異なっている事が考えられましょう、我が文明人と似ても似付かないほどの進化で脳波で送受信なども考えられましょう。ほら、かつてのあの星でも植物星人が使っていたのと同じく。」
「そうでしょうか、逆も考えられませんか?時を超越していても進化の方向性は一筋縄ではいかないものですよ。例えば進化が退化の道筋を辿るとか。恐竜が闊歩していた地球の初期のように、野生的な形態が主流の思考形態ならば、我々は敵とみなされ攻撃は避けられないでしょうから・・・」
「もしや・・・またまた「炎の鳥」の行動が読めなかった際の議論に戻ろうとしていない?ほら、俺達が鳥のえさと考えられていて・・・なんてね!」
「ヒ、ヒィッ!、それじゃぁ俺ら、食われるのかよ?」
「ははは、そうかも知れないですよ!」
一同はウイスキー片手についつい饒舌になり微笑む。
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別の席ではCIA長官、法務官が静かに行く先について話し込む。
「かつての記憶がフィードバックして頭から離れないのだが・・・もしもこの星の住民が我々を敵と判断した場合、どのような攻撃を企てる?」
「先ず、地球環境と同様であれば地球人と遜色ない行動をとるのでは。相手の出方を見て何かしらのコンタクトから入るでしょう。勿論我々は宇宙人として見なされるでしょうから、領地や物品、労働力を略奪することを心配するのでは?」
「ううむ。しかしこの宇宙船には武器等積んでおらんだろう。攻撃の準備は皆無だな。」
「そこは大丈夫です、多分。きっと立花博士には考えがありましょう、フォースを使ってとか・・・そういえば以前も伝えましたが宇宙戦争に対する秘密裏の備えはそのままなのでは?電磁パルス砲、核ミサイルが搭載されていると、キューバ軍部長官が言っていましたっけ。」
「しかし、当時の地球レベルでの最先端技術で対抗できるのかい?」
「そうですね、いよいよ私達の運命はおしまいかも知れませんね。しかし違うのは、宇宙空間において我々も独自の進化をしてきている筈。勇気の力、人類の末裔のみが享受しているフォースによって対抗できるのでは?それより今までの数々の難関にクリアしてきたのだから恐れるに足らんでしょうが!何を今更。」
「そうだな!やぁ、その時はアスタマニャーニャ!明日は明日の風が吹く!ってね。」
晴れやかな表情の二人はワインをゴクリと飲み干すと、新たな旅路に祝杯を上げる。
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自然気象学及び宇宙物理学、科学、化学、地理、物理、生物学博士の面々。いつもの面子は早速熱い討論を交わし始める。
「AIからの解析情報はどうかな?」
「組成分析データからするとおおよそ地球そのもの。こんなことってあるのか・・・」
「気候も同様、これって地球じゃないのか?」
「ここまで地球に近い環境であるのは宇宙空間広しといえ、凄まじいものを感じる。」
「大気もなにもかも・・・もしかして何かの拍子に過去に戻っているんじゃない?」
「近未来文明があるとしたら、もしかして他にも人類の末裔が居たりして。」
「ということは、野生生物の存在も?」
「おそらく。地球でも深海生物も存在しているだろうな。」
「水と陸地の割合も、ケミカル濃度も同様って・・・」
「わくわくするな、なんだか地球に戻るような気がしてきた。」
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カウンター席で早くも祝い酒を交わしているいつものタイ国王と占星学博士雨宮女史。
「国王、この間の話、あれって本当ですか?」
「ん?何のことでしょうか・・・」
「ほら、ワタシとロマンティックな門出をするって言いましたよね。」
「そうでしたっけ、それってなんかの占星学的な知見で?」
「あらやだ、プロポーズなさったでしょ。貴方から・・・私達の心理に占星学など必要ありません!」
「プロポーズとは、またまた・・・ハハッ!」
「はぁ?違うのですか?」
「無論、何かの間違いですよ。アッ、あれはね、つい「SHADE」の特訓で頭になにか脳波のようなものが飛んできたのでしょうね。ネットワークの混線とか・・・」
「またまたご冗談が下手なのね。国王のウ・ソ・ツ・キ。」
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///// To Be Continued ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆