第74章 砂のSHADE Ⅴ・・・ -
コスモの絆☆☆☆ 第74章 砂のSHADE Ⅴ・・・ -
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Scene.100
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ナティスは流石と再会して間もなくではあったが「SHADE」によって辿りついたこの砂の大地での過酷な旅路に、既に辟易とし始めていたのだった。
「流石くん、この灼熱地獄はどうにかならないのかい?よりにもよってこんな場所にたどり着くなんて・・・・本当に此処は幸恵の住む「惑星・名もなき影」なのかい?これではあの砂の星と何ら変わらないじゃあないか・・・もしかしてさっきの「SHADE」は失敗していて、砂の星の飛び立った場所から少し離れた場所に到着しただけなのでは?」
「いいえ。そんな事は御座いません。私が「SHADE」で念じた場所は確かに「惑星・名もなき影」なのであります。しかし、到着する場所が例えば街中であったとすれば、幸恵達に即座に察知されてしまうでしょう。そこで私は、あえて監視網から外れたこの砂の大地にポイントを決めて無事到着できたのであります。そう、貴方をこの星から脱出させて砂の星まで導いた時も動揺の方法だったのですからね!」
「しかし・・・どうにもこの場所は危険すぎやしないかい、別の意味で。町まで辿りつく前に我々は日干しになって衝天してしまうのでは?」
「そうですね。その心配はありますね・・・実は私がこの星にいる僅かな時間の中で見方を作っていたのでありまして・・・そろそろ現れる頃だと思いますよ。あ、来た来たっ!」
すると彼方から物凄い勢いで音もなく真っ白な機体が現れる。するとそのドローンが砂の上に着地すると静かにハッチが開く。すらりとしたワンピースの一人の女性が降りてくる。
「ハーイ!お待たせっ。お帰りなさい、ようこそご無事で!」
それはマチコであった。あの学生時代のままの彼女がニコヤカに出迎えている。
ナティスの目には、それはまるでかげろうに揺らめくオアシスにも似ているようで、その彼女の存在がこの時ほど天使に見えた事はかつてなかったであろう。
「二人ともお待たせ!しかし不思議ね。二人に会うまでは半信半疑だったんですもの。暑いから、早く乗って。」
突然の救いの天使との再会にナティスはしばし安らぎを憶えるのであった――――
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機内はキンキンに冷房が効いている。
そういえば旅立った時の「マヤ地区」では雪が降っていたっけ。すると此処は遥かに離れた場所に違いないのであろう。そしてどのようにしてこの場所まで正確にマチコは私達を迎えに来れたのであろう・・・・
マチコによるとこの星には唯一の自由として特定の人物同士のプライバシーの共有が認められているという。それはIDにより共通情報のやり取りを可能としており、決して幸恵のシステムに監視される事のない通信手段でもあった。流石はマチコに説くと詳細まで説明し、約束していたのであった。宇宙空間についての研究員であった立場からマチコにとっては考えられる範疇であったのだろうか、これまでの知見をも遥かに飛躍した我々とのコンタクトの事象をも、凡人よりも早く納得してくれたのだった。そして学校の伝を利用してオートドローンを借り出して迎えに来てくれたのだった。
「始めは私だって流石クンの話を理解する事は困難だったわ。
だって、この研究部でずっと前から一緒に宇宙について学んでいたと信じていたのですからね。
それが本当のところ流石クンは数日前にこの星に到着していて、私の脳波に過去情報をインストールしてあたかも以前から見知っていたように記憶の改変を行ってしまったのですから無理もないわ。」
流石も思い出し笑いをしながらイジワルに話に付け加えるように言う。
「そして謎解きを開始し始めた時のマチコさんは同様でカタカタ震え出して、コーヒーはこぼすわ、ほんと大変だったんだぜ!」
マチコがムキになって反論する。
「だってぇ~使用が無いじゃないのよ!私は流石クンが本当は宇宙人なのでは?と恐怖心しかなかったんですから・・・
でもね、ナティスの立場が危険にさらされていると聞かされて、始めて信じる気になったのも事実。ナティスが宇宙飛行に行ってから暫く行方不明だったことも、この話を信じる根拠となったのは確かね。
まるで夢物語のような話ではあったんだけど、人間って生き物は現実に目視できないものはなかなか信じたがらないものなのよね。
私が宇宙に興味を持ったのもそのアンチテーゼなのかしら、宇宙空間には未だ見ぬ世界がきっと展開されている、と小さい頃から夢見て信じていたのだから・・・
そしてその現実がやっぱりあるのだという好奇心が強かった事が信じさせる原動力となったのは私にとっても自然なことだったから―――」
ナティスはマチコの言うそのセリフを重く噛み締めていた・・・
そう、私にも少年時代からの夢があった・・・そして今、もしかするとその夢の世界で息をしているのだと至福の思いであったのだった―――
「マヤの古文書」に興味をそそられて浮谷教授の主導の下、宇宙との関連性について熱い気持ちで紐解いていったのもそこから来ていたのだった。まさにマチコの言うように。
「マチコさん、ありがとう。私も不思議な気分の連続で、たった今しがたも此処に人類のみが持ち合わせるフォースの一つである「SHADE」によって瞬間的にこの地点まで飛来したのだったからね。マチコさんの言うように、まるで宇宙人といっても過言ではない筈さ!
最も、私が地球に居たころの旧友のマチコさんとそっくりな貴方が、地球にそっくりなこの「惑星・名もなき影」で、過去にそっくりな学生の頃のままで暮らしている事実。
そしてその貴方と過去の、最も素敵だった頃のあの瞬間と同じようにお話ができている事に、私にとって時空を超えてこのときを共有できているという事が何にも変えがたい喜びなのですから・・・
例えこの状況がAIによって書き換えられただけの世界であったとしても、はたまた次元のねじれの接点のホックの掛け違いによるものであったとしても、そんなことはもうどうでもいい・・・・・
私にとって大事なのは、この瞬間の中で生きている喜びであり、それが生きている証なのかも知れませんね。」
ナティスにとって一番大事な、もう戻っては来ない若き時間の中の忘れ物探しなのかも知れないが。
もしも可能であれば、この時を止めてしまいたいのであるが―――――
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///// To Be Continued ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆