第71章 砂のSHADE Ⅱ・・・ -
コスモの絆☆☆☆ 第71章 砂のSHADE Ⅱ・・・ -
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Scene.96
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その頃「惑星・名もなき影」において、失踪したナティスの足取りを掴むべく捜索が始まろうとしていた。浮谷教授が植物星人犬・桜を脳波で問い詰めていた。
「一体君が居たのにも拘らず何故彼は居なくなってしまったのだい?もしかして君は彼に恩でも売られて全てを話してしまったのか?」
「いいえ、決してそんな事は・・・・私が彼が寝入ったのを見届けてトイレに入っている間に居なくなってしまったのです。」
「それでは忽然と消えたというのかね・・・ううむ。」
桜の話の内容に、一つ気づいた浮谷であったが、一先ずそれを胸の中に携える事にした。
そして幸恵への報告のためにホテルを後にする。
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自動運転タクシーは間もなく高層ビルの林立するオフィス街へと滑り込んだ。ミラーガラスが反射するひときわ高い高層ビルのエントランスにたどり着くと浮谷が降り立った。
エントランスからエレベーターにて最上階に到着する。そこに幸恵の部屋はあった。ソファー席には待ちかねたように指を苛立たせながら佇む、すっかり緑の肌は取れて地球人然とした幸恵が座っているのだった。
「一体どうなっているのよ?明日面会する予定になっているでしょうに、ホテルの周辺は探したの?コンビニとか。」
「いいえ、そうであればAIの監視に引っかかる筈でして。」
「なら、何故桜を置いたまま消えてしまったの?もしかしてこの計画が彼にばれてしまったのではないでしょうね。」
「ええ、その心配は無いかと思われますが・・・もしも脱出を手助けした人物からの口添えが無ければの話ですが。」
「そうね、桜をそのまま置いていったところを見ると、桜の立場を何かしら把握している人物に違いないようね。すると何れ彼も桜がスパイ犬だったことを知る筈ね。とすれば・・・こうしては居られないわね、浮谷、解っていますね、例の処方にてお願い。」
浮谷は僅かにひるんだ。幸恵の言う処方とはすなわち非情な手口による処分を意味しているのであったから―――
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ナティスは疲れも手伝って、その晩は船内にて深く熟睡してしまった。
「惑星・名もなき影」で騒ぎになっていることさへも露知らずに―――
「ナティスさん、お目覚めですね。もう皆さん首を長くしてお待ちですよ。」
流石助手の言葉に促されながら船室から通路を食堂へと向かった。そこにはかつて離れ離れとなった旧友の面々がにこやかな笑みと拍手でナティスを迎えるのであった。
「嗚呼、皆さんようこそご無事で・・・ご無沙汰いたしております。」
立花博士とかつての植物星人に占拠された「惑星・ムソルグスキィ」から逃れて辿りついた人類の面々との再会はナティスにとって思いがけない喜びを与えてくれるに十分だった。
彼らは勝手に旅立って言ったナティスの事さへも恨むわけでもなく、英雄として奉ってくれているような眼差しにあふれていたのだった。思わずナティスは涙ぐむ。
「皆さんよくご無事でここまで長旅お疲れ様でした・・・・」
ナティスはそう言い放つと用意された席に着く。
向かいには懐かしい面々が並ぶ。相馬船長、雨宮女史、タイ国王が握手をせがむ。
「ナティス君、果てしない旅路、ご苦労さんだったね。まぁ、君達と別れてから我々も一時はどうなる事かと中々スリリングな日々を過ごしたもんさ。きっと君もそれ以上の経験を積んだに違いないだろうね。積もる話は後ほど詳しく聞くとしようか!」
相変わらずの歳をも感じさせない相馬船長が微笑んでいる。
雨宮女史も相変わらずラブラブの様子で目の前のタイ国王と談笑している。
懐かしい空気が食堂一杯に充満している状況に、かつての宇宙空間をともに旅していたことを回想させ安堵を憶えるのであった―――
朝食を終えると一先ず各自自由行動となった。船外へ出る者、船内でくつろぐものそれぞれに久々の地上でのひと時を楽しんでいるようでもあった。
立花博士がナティスの居る席に着いた。
「どうだい、ゆっくり休めたかね?昨日は到着するやいきなりくどい話をしてしまって申し訳なかったね。しかし、一刻も早く現実を把握して欲しかったのだよ、君にはね。」
「はい、承知しております。しかし・・・幸恵さんは一体どのようにしてあの星に到着したのでしょうか?」
「うん、それについては私にもいくつか思い当たる節があるのだが、一つは「生まれ直し」理論であの星に記憶を持ったまま潜入したのではないかと考えているのだ。」
「えっ?それって・・・確か彼の「惑星・名もなき影」でも誰かがそんな事を言っていたような・・・そう、浮谷教授が言っていましたよ!」
「やはりそうだったのか・・・ということは同じく「炎の鳥」で脱出した幸恵も同様だろう・・・そして新たなる星を牛耳って、かつての星と同様に幸恵の「エゴ」の世界を展開しようと企んでいるに違いなかろう。ということはだ、このことを知ってしまった君の立場は非情に危ういものとなってしまったに違いないな。いずれ彼女は宇宙人である筈だから君を何かしらの方法で見つけ出しこの星に刺客を向かわせるのも時間の問題かな。」
「ええ、そうかも知れませんが。ですが、あの星で一つ気がかりな事に気づいたのです。確かにAIによってコントロールされている世界だとは思いますが、根本的に異なっていたのは、そこに暮らす住人であるアンドロイドたちは、かつての植物星人達の暮らしている環境のような悲壮感が感じられなかった事です。ミチヨというそのアンドロイドはその星で作られたのですが、絵を描いたり、なにかしらかつての星のブロイラーとしての生活とは異質な楽しみを得られているようでして・・・」
「うん、それはきっと君の錯覚だね。あの幸恵はどう言う訳か宇宙人に成ってしまってからというもの、地球にいる頃のような思いやりのかけらも捨ててしまった別人になっていたのだからね。君の望む素敵な星とは違う筈さ。」
「そういえば、植物星人犬・桜はあの星は私の考えた理想の星だと申していました。それについては謎なのですが・・・」
「あの犬はスパイ犬だよ。きっと君にそのような思考を植え付けるための記憶のすり替えを起こそうとした一つの策略なのだろうね。君はまじめで騙されやすいところがあるようだからね。」
立花博士のその言葉の真意は見抜けなかったが、ナティスにはこれまでの幸恵とは異質な、なにかしら「生まれ変わり」の作用によって改変された思考形態が芽生えたのではなかろうか、と信じたい気がしてならなかったのだった――――
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///// To Be Continued ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆