第69章 さらば「惑星ムソルグスキィ」Ⅵ ∑∑∑
コスモの絆☆☆☆ 第69章 さらば「惑星ムソルグスキィ」Ⅵ ∑∑∑
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Scene.94
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先ほど脳波にアクセスしてきた不思議な主からの言葉について回想してみる。
過去に何か該当する痕跡がないかと藁をも縋るような思いで模索し始める―――
過去?言わば空虚な心境である今の存在及びその信憑性とは?一体誰がその答えを持ち合わせているというのか?どの過去がそれに相当するというのだ?基準線すら引けないでいる自分がもどかしい――――
とある主が言うお迎えとやらが来てしまったのだろうか?ということはこれでGAME OVERなのかも知れないな・・・いっそ楽になってしまえるのかな。そう考えれば既に僕の望むこれまでの目的でさえ虚ろな気がしてきた。宇宙への儚き望み、彼の地に僕の望む星がありそこで本当の目的を達成する・・・そう言えば桜も言っていたな、此処「惑星・名もなき影」が僕の望んだ世界だと・・・そうなのかも知れないな。何れ誰がそのピラミッドの頂点に君臨しようとも、その星の皆が幸せを感じながら暮らしていればそれで良いのではないか?それが僕だろうが違う星人であろうが一向に構わないではないか・・・
僕はこうして夢とも現実とも解らないままに焦がされた砂の大地の上でこうして焼かれようとしている・・・目の前が霞んでゆく・・・・そしてお迎えが来るのだろう、きっと・・・・
すると先ほどまでの焦燥感は自然と消えてゆくのを感じた。それは諦めではなく、只単にその成り行きに身を委ねよう、自然の成り行きを受け入れようとする自分が存在している事に気づく。ジリジリと只ナティスは陽に焦がされていった――――
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「ナティスさん、大丈夫ですか?」
その声だけが閉じられた目の前に微かに聞こえてくる。
確か聞き覚えのある声だ。
「ナティスさん、しっかりして下さいっ!」
二言めのその声の主にナティスはハッとさせられる・・・まさか!
ということは、彼がお迎えに来たということなのだろうか。
そうかも知れないね、きっと彼は暫く宇宙空間を漂ったところで宇宙の藻屑となってしまったに違いないだろうから・・・無線さえ届かない領域に到達してしまって、やがて死を迎えたに違いなかろう・・・
「ナティスさん、お久しぶりです。わかりますか?僕ですよ、流石ですよ。」
やはり流石か、いよいよ私は天に召されてしまったのだな・・・
そうか、それはそれで受け止めよう。しかしあの世というものは何とも現実と相違ないものだなぁ・・・・私はてっきりあの世とは未だ見たことのないものを想定していたのだが。例えば宇宙空間のような無重力の環境で思い通りに何処へでも行ける世界、はたまた今まで見たことの無い景色が何処までも続いている世界など、地球上の環境とは異質なものだと思っていたのだが。
「ナティスさん、じゃ、運びますね。私の船まで。」
船?それは宇宙船のことなのか?まさかこんな死後の世界まで来て宇宙船で旅でもしようということなのか?流石はどこまで、この死後においても私を宇宙空間に漂わせようというのだろうか?
そしてナティスは宇宙船まで運ばれていった。何を抵抗する事もできない体を担がれながら船を目差す。未だ日差しは必要にナティスの体を焼き焦がそうと乾かし続けている。霞んだ目の前に宇宙船は現れた。それは宇宙空間で旅立っていったそれそのものであった。
あれ?これは一体・・・そうか、私の微かな記憶の成せる業なのであろうか。それとも流石はその後も無事であって私を救おうとしてこの地に飛来してきたというのだろうか、現実のものとして・・・いや、もとい。そんな筈は在るまい。きっと全て夢物語の筈だ。
確かな部分は私と桜は此処「惑星・名もなき影」の雪景色からホテルの一室に戻ってベットに横たわってから眠りに就いただけにすぎないのだから。そして眠りの中でこの世界が展開している状況なのだ。ただの夢さ。
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ナティスは船内に運び込まれると流石の助けによりベットに載せられた。
流石は水をナティスに飲ませると話し始める。
「ナティスさん、無事でよかった。探しましたよ。私はその後、そう、貴方がたと分かれて宇宙空間で漂い続けた挙句に磁気嵐の影響ですっかり行く先を見失ってしまったのです。数ヶ月間漂いながらも進行方向をすっかり見失った私は考え直して貴方方の乗る「宇宙ステーション船・トルストイ」の軌跡の後を追い続けようと試みたのです。しかし再び磁気嵐と巨星からの誘引によってすっかり彼方まで飛ばされてしまったようなのです。すっかり未知の星星の狭間で漂い我をも失いかけたそのときに、またもや「炎の鳥」が現れたのでした・・・更に私は鳥に誘引される形でこの星にたどり着いたのでした。すると着地した地点に貴方のキャラバンがあったのです。まるで鳥が全てを知っていたかの如く、貴方との再会を叶えてくれたのです。そして・・・」
すると、部屋の扉の影から一人の人物が現れた。
「やぁ、お久しぶり!」
なんとも不思議な死後の世界だなぁと頭の整理のつかないナティスだった。
だって、目の前にそれはもうすっかり緑色に焦がされた風貌は消えていたものの、間違いなく立花博士の姿がそこに存在していたのだから。やはり彼もその後こちらの世界に旅立ってしまったのだろうか。
「驚いたねぇ、こうして不思議な巡り会わせが立て続けに起こるとは何かの暗示なのだろうか!まぁ、ここは運命共同体として運に身を預ける事にしよう。実はね、私も彼の「惑星・ムソルグスキィ」からの脱出組なのだよ。君たちが旅立ったその後のあの星は幸恵の牙城から奪い取った新派閥の植物星人たちが牛耳っていったのだ。そして彼らは、我々人類のみが持ち合わしているという「フォース」の力を利用しようと画策し始めたのだ。そんなのにつき合わされるのはゴメンだと、我々人類の末裔達は宇宙船で逃げ出したのだった。あれから地球時間2000年くらいは経過しているのだろうかな、そして流石クンの船が「炎の鳥」に誘引されているのを発見し、追いかけたのだ。そして此処に到着したのだよ。」
しかし都合の良い夢物語だなと、黙って再会した二人の話に耳を傾けるだけのナティスであった―――
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///// To Be Continued ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆