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第67章 さらば「惑星ムソルグスキィ」Ⅳ ∑∑∑

コスモの絆☆☆☆ 第67章 さらば「惑星ムソルグスキィ」Ⅳ ∑∑∑

~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~



Scene.92


Q☆Q☆Q☆Q☆Q☆Q☆Q☆Q☆Q☆Q☆――――



此処「モモ地区」の雑踏の中、ナティスは少しの間呆然と立ち尽くしていた。

それはこの星の住民が幸せな表情を浮かべながら生活しているものの、その影で本当の自由は得られていないのではないかという疑義からだった。惑星「名もなき影」の地において――――


黙ってナティスの様子を見守る桜とミチヨ。怪訝な表情のミチヨは気を取り直したように口走る。



「ナティスさん、きっと長旅でお疲れなのですね。それではこれからリフレッシュしに行きましょうか。いい場所があるので・・・」



ミチヨはそう告げるとスタスタと人込みの中へと先導する。

二人も黙ったまま後を追う――――



暫くするとミチヨは、とある店舗の前で立ち止まった。看板には「JAZZ#SHADE」と書かれてある。「影」?まるでこの星そのもの。そしてこれも私が望んだものなのか?曇った表情のナティスは店内へと促されてゆく~~~



扉を開けるとコーヒーの香りが鼻をつく。客はまばらでそれぞれがスピーカーから流れるアナログな古き良き柔らかなサウンドに聞き入っている様子。曲と曲の間のプチプチ音がなんだか懐かしい。眼を閉じて足でリズムをとっている人も居て、なんだか皆楽しんでいる様子で微笑ましい。この世界観はかつての地球のジャズ喫茶そのものであった。

ログハウス調の木の床を歩いて奥のテーブル席に着く。



「マスター、ブレンド3つ。」



カウンターで皿を拭いている口髭を蓄え白髪を後ろへ撫で付けた蝶ネクタイの老紳士にミチヨは親しげに注文する。老紳士がニコリとうなずく。きっとミチヨは常連なのだろう。



「どうです?ステキでしょ?」



ミチヨはテーブルに頬杖をついてナティスを眺めながら言った。



「此処はね、私の特等席。週末は良くここに来るんですよ。なんだかホッとするんですもの。」



先ほどまで疑義を引きずっていたナティスの表情が和らいでゆく~~~桜もテーブルの下でふせをしている。先ほどまでの雑踏の喧騒も何処吹く風、とても居心地の良い異空間がそこにはあった。



-*-*-*-*-*-*-*-



1時間ほどマッタリとしたひと時を過ごしたところで一行は店を後にする―――

それまでの喧騒がウソのように人影は少なくなっていた。人々は家路へと急いでいる様子で行き交っている。そうか、今日はまだ週始めだったな、みんな明日の仕事があるのだろう・・・

時間軸とは無縁のナティスは我に帰ったような気にさせられたのだった。



「ミチヨさん、貴方は画材を買われましたが、絵がご趣味で?」



「え?ええ。もともと美大生だったのですが、今時画家なんて食べて行けはしませんから、趣味のようなものですね。それに気分転換にもなりますし・・・」



「へぇ、画家志望ですか。それはそれは。ところでどのような題材をモチーフに?」



「私は風景画でしたが、最近は夜景のある場所へ出向いて目に焼き付けて、部屋に帰ってから描くのです。イメージで如何様にも都合の良い構図でできますよね。」



何だか得意げに胸を張って説明するミチヨの今までと違う一面が微笑ましく映る。

リードをつけた桜もこの話が気に入ったのか小さな尻尾を振っている。

ナティスにはそんな健気なミチヨがホテルスタッフとして生計を立てながらささやかな夢を抱いている事に昔の自分を照らし合わせていた。


そう、あの頃・・・私は「マヤの古文書」の解読に没頭する事が唯一の生きがいであった。そしてマヤの文明が宇宙からの影響無くしては語れない事実を知ると、ひいては宇宙への熱い野心へとシフトしていったのだった。

そして・・・僕も頭の中で彼の地での新たな文明を築いてみたり、夢想していたのだった。そうか・・・ある意味その「理想卿」への熱い思いの到達点が今の境遇なのかもしれない・・・


あの幸恵が牛耳っていた星での出来事の影響力は途轍もなく大きかった・・・そのせいで私の欲望の形は軌道修正をされたのかもしれない――――


もし、もしもまっさらな星に到着し、ネイティブな文明が存在していなかった場合、私は「エゴ」に振り回された挙句に幸恵のような独裁国家を形成していても不思議は無かったのではないか・・・・そう考えるとゾッとする。



店から右へ左へと坂道を切り返しながら登っていくと、町が一望できる高台にたどり着いた。彼方まで星星の如く散りばめられた町の明かりが活気にあふれて輝いている。海沿いをなぞるハイウェイの赤いテールの群れが流星群のように線を描きながら流れ去ってゆく。

人々は明日の希望を胸に、この星での営みをただひたすらに奏でているのだろうか。バックグラウンドに先ほどのアップテンポなJAZZが風のように聞こえた気がして♪


すると、ちらほらと白い粒が風に流されてくるのにナティスは気づく。

どうやら平和に見えるこの星にも雪が降り出したようだ―――







-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

///// To Be Continued ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆















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