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第66章 さらば「惑星ムソルグスキィ」Ⅲ ∑∑∑

コスモの絆☆☆☆ 第66章 さらば「惑星ムソルグスキィ」Ⅲ ∑∑∑

~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~



Scene.91


Q☆Q☆Q☆Q☆Q☆Q☆Q☆Q☆Q☆Q☆――――



「ということは、失礼ですが君はアンドロイド?」



意を決したようにその娘に問いかけるナティス。

桜も興味深く娘の様子を見つめている。



「ええ、そうですよ。貴方は違うの?」


「え、それってどういう意味ですか?」


「だって私、この星でアンドロイド以外の生命体を見たことがないので・・・」


「あ、ああそうだよ。僕もイースター製なのさ。そしてこの桜も。」


「では同郷ですわね!」



話を合わせる様にナティスが咄嗟に答えると、桜がポカンと口を開ける。

そう言うことが安全策として有効だと、咄嗟にナティスは判断したのだった。



「私達は此処に旅行できていまして・・・・もし宜しければこの町を案内していただけないでしょうか?」



恐る恐る事の成り行きを見守る桜はナティスの脳波を解析し始める。



「そうですねぇ・・・今日は18:00に仕事が終わりますので、それ以降は特に予定もないので宜しいですよ。私、ミチヨと申します、よろしく。」



そして後ほどロビーで待ち合わせることにし、ひとまず別れる。



「ナティスさん、私もアンドロイドなのですか?」


「あ、あれね。そうしたほうが良いかと・・・」


「そうですね、しかし驚きましたね、この星「名もなき影」の住民の殆どがアンドロイドだったなんて。」


「そうだな・・・するとマチコや流石も?そして浮谷教授や幸恵も・・・」


「かもしれませんね。この星ではアンドロイドが当たり前で、皆んな製造されたという事でしょうか。そうなると一体誰が?」


「あくまで推測の域に過ぎないが、この星はある一部の星人によって統治されているのかも知れない。すると外からやってきた星人は異物として迫害されてもおかしくなかろう。そうなれば我々の身の安全は危うい。この状況下において我々はアンドロイドに成りすますしか方法は無いのではないか。」


「そうですね、そうしましょう。私も今日からアンドロイドです、ヨロシク!」



そう言うと桜がお座りをしてウインクするのだった。





-*-*-*-*-*-*-*-



予定の18:00が近づくと、桜にリードを付けてナティスは部屋を後にする。

ロビーでは宿泊者のチェックインで人込みができていた。

窓際のソファーの空いている場所に二人が陣取る。

間もなくしてミチヨが現れた。

ミチヨは既に自動運転車のタクシーをチャーターしていた。



「さ、行きましょうか。」



さばさばとした娘は自動ドアを抜け屋外に停車しているタクシーに近づくとハッチが開く。

一行はミチヨの指定した場所へと滑り出していった―――



今朝散歩した港を海沿いに走るタクシーは程なくしてハイウェイへと乗った。

物凄いスピードで、まるでリニアにでも乗ったように静かに加速してゆく車の群れ。

夕暮れの海沿いの夜景には明かりが灯り始める。

尚も車の群れは突き進んでゆく。

我々は一体何処へ導かれてゆくのであろう・・・



ナティスは回想する。

そういえばこの「名もなき影」を目差していた「炎の鳥」も金色の燐粉を撒き散らしながらコントロールを失いながらも加速度を増して、まるでこの星に導かれるようにして吸い込まれてきたのだった・・・そして植物星人犬であった桜が言った。「貴方の望む世界」、と。



「そうよ、これが貴方の望む世界なんでしょ?」



不意に脳波でアクセスする桜は足元でお座りをしてこっちを見上げる。

僕も脳波で返す。



「そうかなぁ、もう僕には解らないよ・・だって事は勝手に進んでいるじゃないか。まるで何かに導かれてでもいるような心境だ、今に至ってはね。」


「あら、本当にそうでしょうか?あなたのお考えは、貴方の理想の「マヤの古文書」にあった世界を創造し、そこに君臨する事ではなかったかしら?私が貴方の脳波を解読した結果そうなっておりましたが。」



意外な話をし始める桜の言葉に動揺の眼差しで向き直るナティス。


嗚呼、私としたことが・・・私の海馬の中にそういう「エゴ」の記憶が芽生えていたのだろうか・・・私にとってそれは驚きでしかない。私の理想とは、かつて「惑星・ムソルグスキィ」で引き起こっていた立花博士夫妻の「エゴ」の顛末と何ら変わりがないのだろうか?

あの世界観に軽蔑をしてきたにも拘らず、自分の中にも人類特有の強欲さが存在していた事が腹立たしく思うのだった。人類ってそういう生き物なのだろうか、ひいては破滅へと舵を切ってゆくように―――



「間もなく到着ですよ。」



ナティスと桜の会話を知る様子もなくミチヨがそう告げる。

ハイウェイのランプに差し掛かるととある市街へとタクシーは滑り込んでゆく。

昼間のように明るい繁華街に到着すると車は停まった。



「ここは「モモ地区」という名前の市街です。この辺りでは一番の繁華街となります。さ、どうぞこちらへ。」



なんとナティスはついに恐れていたその地区に期せずして足を踏み入れる事となったのだった。桜がその名前に動揺したせいか震え始める。彼の星の女帝・幸恵の居城であった宮殿の場所と同じ名前であったのだから・・・

歩行者天国のような雑踏には人々がひと時の癒しを求めて溢れかえっていた。人込みの流れに押されるように流れに乗る3人。そういえばこの人たちも全てアンドロイドなのだろう。しかしかつての植物星人たちの表情と違い、人々の表情には生き生きとしたものが感じとれた。そう、かつての地球でのそれと同じ印象で、なんだか懐かしくナティスに映る。



「ここでは全ての生活雑貨が揃います。チョット失礼!」



そう言うとミチヨがとある雑貨店へと駆け込んだ。二人も見失わないように慌てて後を追う。

ミチヨは画材を買いあさる。カラフルなガッシュと絵筆、パレットを持って袋に詰め込んだ。するとナティスたちに合図して店外へと出て行く。



「え、それじゃあ万引きですよ。会計は?」



「マンビキって何のことですか?」



「レジで清算しないと・・・お金払わないとダメですよ。」



ミチヨはナティスを何か不思議そうな眼差しで見つめている。

桜がナティスの脳波にアクセスする。



「大丈夫です、この星では全て欲しいものを取りに行くだけなのですよ。貨幣制度は存在していないようでして・・・」



ああ、そういえば彼の「惑星・ムソルグスキィ」でも植物星人たちにこのシステムが適用されていたような・・・そう、ブロイラーであることの対価として、と、いうことは彼女の立場も・・・・



「はい、そのようです。残念な事に・・・」

桜のその言葉にナティスはその場所に棒立ちになってしまったのだった。頭の中が漂白されていくのを感じながら――――









-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

///// To Be Continued ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆















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